社会や政治に関する世論調査

乳児期から幼児期へ 変わり始めるテレビの見方

~3歳になったフォローアップ調査の対象児たち~

テレビを中心にビデオ,テレビゲームなど,子ども達の日常生活に深く入り込んでいる映像メディアは,彼らの心身の発達にどのような影響を与えているのか。

NHK放送文化研究所では,大学研究者と共同して,メディアへの接触と子どもの発達の関係を探り,子どもを取り巻く情報環境について考える“子どもに良い放送”プロジェクトを2001年11月に発足させた。2002年に川崎市で生まれた子ども約1200名を,彼らが0歳時点より毎年1回フォローアップ調査し、これまでに4回分(0~3歳)の調査結果が出ている。経年比較すると、0~2歳までのいわゆる「乳児期」と、3歳になって幼稚園などに就園する子どもが増える「幼児期」とでは、生活環境が大きく変わり、それに伴い、テレビをはじめとする映像メディアへの接し方にも変化が見られる。

1日平均のテレビ視聴時間(=専念視聴+ながら視聴)は、0歳から1歳にかけて増えるが、2歳になるとやや減って1時間31分、3歳でもほとんど変わらず 1時間36分と落ち着いてきた。テレビが「ついているだけ」の時間も含めたテレビ接触時間(=専念視聴+ながら視聴+ついているだけ)は、1歳以降、年齢が上がるにつれて減る。特に「ついているだけ」の時間が子どもの運動能力の発達とともに減少し、接触時間全体を減らしている。

また、大人と一緒にテレビに接する時間は1歳以降、徐々に減少し、テレビを見ながら母親が子どもと会話する機会は3歳から減り始める。発達心理学では、子どもは3歳前後から自律性・自主性が芽生え「自分でやってみよう」という積極的な思いに根ざす動きが出てくると言われる。こうした発達に沿って「ついているだけ」「大人と一緒」という受動的なテレビへの接し方が減り,自分が見たいと思う番組を視聴する傾向が出てきたと考えられる。実際に、3歳になると2歳の時より、自分1人やきょうだいと一緒に、子どもだけでアニメ・マンガなどを良く見る子どもがぐっと増えている。

テレビ以外の映像メディアでは、ビデオとテレビゲーム(携帯用ゲーム含む)の使用について1週間の視聴日誌記入を保護者に依頼した。0~3歳までの経年変化をみると、ビデオ利用のピークは2歳時点であるが、テレビゲームは3歳になって実際に遊ぶ幼児が増えてきた。今後の成長とともに子どもの生活におけるテレビゲームの存在はますます大きくなるだろう。4歳以降の調査で引き続き注目していきたい。

研究員 西村規子