社会や政治に関する世論調査

大人になりたくない中高生の親子関係

~「中学生・高校生の生活と意識」調査から~

仕事もせず、教育も受けず、職業訓練を受けずにいる「ニート」と呼ばれる若者をクローズアップする研究報告が出されている。1982年から 2002年まで4回にわたって実施されている「中学生・高校生の生活と意識」調査では「子どもでいるほうが楽だから」「大人になって、仕事や家のことをやれる自信がないから」大人になりたくないという中高生が20年間で増加した。密着した親子関係が子どもの自立を妨げるという指摘があるが、「大人になりたくない」という意識と親子関係との関連を調べた。

  1. 近くなった親子関係 悩みごとの相談相手を聞いたところ、中高生ともに「相談相手は友だち」(友だち派)が減少し、「母親」(母親派)という回答が増加した。
  2. 母親と親密なほうが、仕事に意欲的 母親と親密な中高生の傾向を調べるため、母親派と友だち派を分類し、価値観を詳しく見た。大人になりたい理由では、友だち派にくらべ母親派のほうが「やりたい仕事に早くつきたいから」「お父さんやお母さんに楽をさせたいから」と答える傾向が強く、友だち派に多いのは「好きな遊びがやれるから」だった。
  3. 親が子どもとどう接しているか 「早く大人になりたいか」で中高生を分類したところ、親の接し方に関連性が見られた。「大人になりたい」ほうが(1)父親は子どもの教育内容を把握し、子どもから見て「父親はよくわかってくれる」、(2)父親、母親ともに子どもの友人関係について「好ましくないときは注意する」傾向にあった。

以上の調査結果から、密着した親子関係は自立を妨げるとされているが、むしろ良好な親子関係にある子どもが「大人になりたい」と思う傾向にあることが明らかになった。

世論調査 諸藤絵美