個人視聴率調査

テレビ視聴の東西差

~「全国個人視聴率調査」15年の分析から~

世論調査部では、関東と近畿のテレビの見られ方の違いについて、これまで何度か分析を試みています。『テレビ視聴の30年』(1983年)では(1)近畿では、関東ほど朝ニュースを見ない(2)関東ではNHK総合をよく見る(3)近畿は夜の娯楽番組を好むという3つの違いがあると指摘しましたが、「近づいた関東と近畿のテレビ視聴」(2000年)では、近畿でも民放の朝のニュース・情報番組が見られるようになったこと、関東で民放の夜の娯楽番組が見られるようになった一方で、NHKをよく見る傾向が薄まったことにより、テレビの見られ方の東西差が薄まったことを報告しました。

今回2000年からのデータを加えて、あらためて1990年以降の6月全国個人視聴率調査の結果を分析しました。視聴時間については、増加の時期は若干異なるものの、民放テレビの午前(午前5時~正午)の視聴時間が関東、近畿とも増加しました。2004年現在、視聴時間には、午前、午後、夜間でいずれも東西差はありません。また1時間ごとの局別視聴率の動きを比べると、朝は関東・近畿ともフジテレビ系が伸びていること、夜は、関東では巨人戦の放送により各局の視聴率増減の動きが激しいのに対し、近畿では各局の動きが少ないことがわかりました。

高位10番組を関東と近畿で比べると、関東でNHK総合の番組数が1980年代並の5本と再び増えたものの、両地域とも夜の娯楽番組が多く入っており、1980年代前半のような東西差はみられません。また、この娯楽番組について詳細にみると、1983年当時近畿の特徴と考えられていた「娯楽を娯楽として理屈ぬきに楽しもうとする傾向」をもつ視聴者層が関東でも広がりつつあるようです。一方で、近畿ではテレビ視聴のなかに独特の文化的風土が根強く反映され続けており、娯楽番組の顔ぶれに少なからぬ東西差を生んでいるということが、今回も確認できました。

世論調査 白石信子・増田智子