調査手法の研究

郵送調査の実施方法の検討(1)

~実験調査の概要と郵送調査における有効の定義~

郵送調査には、比較的有効率が高く、コストを抑えられるというメリットがあるため、NHKでも今後取り入れられていく可能性が高い。そこで、郵送調査の実施方式の標準化を行うことにした。2008年と2010年に実施した2つの郵送による実験調査に基づいて検討を行い、3回程度に分けて報告する。今号では、まず、2008年と2010年に実施した郵送法による実験調査の概要について説明する。そして、2010年の調査をもとに、調査相手自記式の郵送調査で発生しやすい「代理回答」や「代理記入」「相談」などの分析を行い、「有効」回答の定義を確認する。

郵送調査で返送されてくる調査用紙の中には、調査員が介在しないため、調査相手本人以外が自分の意見を記入してしまったものや、調査相手の意見を家族が記入するなど、正しいとはいえない方式で記入されたものが紛れこんでいる。このような郵送調査では、「有効」をどのように定義し、「有効」であることをどのようにして確認すればよいのだろうか。

2010年調査では、調査相手本人以外が自分の意見を記入した「代理回答」が1,800人中50人(2.8%)、調査相手の意見を家族が記入した「代理記入」が48人(2.7%)、また、調査相手が家族などに相談して記入する「相談」が78人(4.3%)であった。

「代理回答」については、本人以外の意見であるから「不能」であるが、「代理記入」については、視力の問題などで記入のできない人など特定の人たちを母集団全体から除くことになるため、本人の回答を他者が記入する「代理記入」は、「有効」と認めるべきである。

返送された調査用紙を「代理回答」であるかどうか確認するのはかなり困難である。一般的なのは、調査相手一覧表と調査用紙の性・生年の回答が一致しなかったものを、調査の担当者が「本人が正しい性・年齢を答えたか」どうか判断する方法であるため、その基準の決め方が重要である。

なお、「代理回答」「代理記入」「相談」のいずれも、なるべく少なくなるように、調査用紙や同封するあいさつ文などを工夫することも重要である。

世論調査部(調査システム) 小野寺典子