調査手法の研究

デジタル時代のメディア接触をどう測るか

~ESOMAR国際視聴者調査会議2007から~

今年の6月3日~6日,国際視聴者調査会議がダブリンで開催され,視聴者調査に関する最新の調査研究報告と討論が行われた。PC,モバイルなど,デジタル化により多様化する人々のメディア接触をどのように測定するかは視聴者調査の大きな課題となっており,今回の会議でもデジタル機器による新たな機械式視聴率調査システムの開発・試行結果とその活用例が報告された。

現在のピープルメーター(PM)と呼ばれる機械式視聴率調査システムは,(1)自宅外視聴(2)テレビ以外の多メディア接触(3)タイムシフト視聴などのデジタル時代の多様なメディア接触には対応していない。

自宅外視聴の測定については,ポータブルピープルメーター(PPM)と呼ばれる個人に可搬型のメーターを携帯させるシステムが開発の主流である。テレビ・ラジオ番組の音声に付加された人間の耳には聞こえないコードをPPMが検知して番組を特定する「エンコード方式」と番組の音声をPPMで録音・デジタル信号化し,全放送番組のデータベースとマッチングして番組を特定する「音声マッチング方式」の2方式が開発・実験され,ポストPMの座を目指して争っている。今回の会議では,エンコード方式からは、アルビトロン社のPPMによりメディア接触と商品購買との相関を調査し,広告効果を測定する “Project Apollo”の経過報告。音声マッチング方式からは,テレコントロール社のメディアウオッチのキプロス島での試行や,イタリアのGfk/ Eurisko社のPPMにバーコードスキャナーやボイスレコーダーを付加して,テレビ・ラジオ以外の新聞,インターネット,映画への接触を記録する実験結果などが報告された。

この3年間,デジタル時代の多様なメディア接触に適応した新方式の開発には大きな動きがあった。しかし,今回の報告を聞く限り,各方式とも多メディア接触とタイムシフトへの対応にはまだまだ問題が多く,(1)調査相手に負担をかけずにサンプルの代表性を確保し(2)タイムシフトも含めた多メディアへの接触を正確に測定し(3)デイリーの集計とアウトプットが可能なデジタル時代の新たなシステムの実現にはまだまだ時間がかかるように思われる。

担当部長 小島 博