ことばウラ・オモテ

雪は降るのか落ちるのか

この冬の放送で「雪が落ちてきました」ということばがありました。

てっきり、屋根に積もった雪が落ちて下を歩いていた人にでも当たったのかと思いました。ところが、「雪が降り始めた」ということだったのです。

Snowfallという英語があります。直訳すると「雪が落ちてきた」になります。

雨や雪は「降る」のであって「落ちる」のではないというのが日本語の普通の考え方です。

気象は私たちの暮らしに密接なものです。それだけに、さまざまな表現や慣用があります。

雷は「鳴る、落ちる」、雹(ひょう)や霰(あられ)は「降る」、霜は「降りる」「霜を置く」、雨に至っては降るさまにより「霧雨、糠(ぬか)雨、小糠雨、涙雨、氷雨、長雨、地雨、大雨、豪雨、暴風雨、雷雨、しの突く雨、霖(りん)雨、慈雨、恵みの雨、春雨、秋雨、驟(しゅう)雨、にわか雨、夕立、村雨、日照り雨、天気雨、きつねの嫁入り、時雨、やらずの雨…」とさまざまです。

降りかたも、「そぼ降る(弱い雨が静かに)、ぱらつく(少し大粒で雨脚は激しくなく)、しょぼつく(静かに)、ちらつく(雪が少し降る)、小降り、本降り、大降り、どしゃ降りなどがあります。

形容では、「しとしと、しょぼしょぼ、ぽつぽつ、ぱらぱら、ばらばら、ざあざあ」が雨、「ちらちら、ちらほら、しんしんと」が雪に使われます。

このような慣用は、風土が生んだものですから、外れた使い方をすると抵抗が強く、破格の使い方は文学的、意図的なものに限られそうです。

(メディア研究部・放送用語 柴田 実)