「追い抜く」? 「追い抜かす」?
2014.04.01
「追い抜く」と「追い抜かす」は、どのように違うのでしょうか。
「追い抜かす」は、比較的新しい言い方です。「追い抜く」とほとんど同じ意味ですが、微妙な使い分けを指摘することもできます。
解説
現代日本語の辞書として一番大きい『日本国語大辞典(第二版)』の「追い抜く」の項には、15世紀の用例が載っています。それに対して「追い抜かす」は、そもそも項目として立っていません。おそらく、伝統的な語ではないという判断によるものだと思います。
「追い抜く」と「追い抜かす」についてウェブ上でアンケートをしてみたところ、「『追い抜かす』と(も)言う」という回答は、若い人になるほど多くなっていることがわかりました。
この2つの使い分けをあえて指摘すると、「追い抜かす」は「ふつうであれば『追い抜く』はずのない状況」で使われることが多いということが言えます。
- 「真っ白な息を 風に変えたら
流れ星さえも 追い抜かしてくんだ」
(「夢色バス」作詞・歌:広沢タダシ) - 「朝から何も手につかず はやる気持ちが 時間追い抜かす」
(「聖なる夜に」作詞・歌:ケツメイシ)
それに対して「追い抜く」には、そのような限定はないようです。
- 「出逢うのが 少しだけ 遅すぎただけなのに
もうこのまま あの女性を 追いぬけないのね」
(「Still Love You」作詞:井上望 歌:森口博子) - 「なみをチャプチャプチャプチャプかきわけて チャプチャプチャプ
くもをスイスイスイスイおいぬいて」
(「ひょっこりひょうたん島」作詞:井上ひさし・山元護久)
つまり「追い抜かす」には、そんなことはふつうは起こらないという「意外性・びっくり感」のようなニュアンスもあるようなのです。
なお運転免許を持っている人は勉強したことがあると思いますが、道路交通法の定義では、前の車に追いついたあとに車線変更をするのが「追い越し」、車線変更をしないのが「追い抜き」です。運転時には、いきなり「追い抜かし」をしてほかの車をびっくりさせたりしないようにしましょう。
