最近気になる放送用語

「教えてくださり」? 「教えていただき」?

「教えてくださりありがとうございます」と、「教えていただきありがとうございます」とは、どちらが正しいのでしょうか。

現状としては、どちらかといえば「教えていただき~」のほうがよく使われており、「教えてくださり~」という言い方は自分ではしないという意見が、やや多くなっています。ですが、両方とも正しい言い方です。

解説

「教えてくださり~」のほうは、「あなたが私に教えてくださりありがとうございます」という形で、「相手」の行為に直接感謝を述べています。それに対して「教えていただき~」は、「私があなたに教えていただき、(この状況は)ありがたいものです」という形で、「私」が受けた恩恵に対する感謝の念を間接的に相手に伝えていることになります。

ただし、「教えていただき~」のほうはおかしな表現だと考える人もいます。それはどういうことでしょうか。

「くださる」は「くれる」を敬語の形にしたものなので、たとえば友達に対しては次のように言うことができます。

  「教えてくださりありがとうございます。」⇒○「教えてくれてありがとう。」

一方「いただく」に対応する「もらう」では、同じように言いかえることはできません。

  「教えていただきありがとうございます。」⇒×「教えてもらってありがとう。」

このように、もともと「教えてもらって~」とはふつうは言わないのだから「教えていただき~」も変なのだ、というのがその根拠になっています。

確かに理屈の上ではそうかもしれないのですが、国が示した『敬語の指針』(文化審議会答申、平成19年)でも、「~いただき」のほうを不適切だと感じる人はいるものの「~くださり」「~いただき」の両方とも適切な表現であると示されているのです。

NHK放送文化研究所でアンケートをおこなったところ、〔「~いただき」を使う(「~くださり」は使わない)〕という回答が、やや多くなっていることがわかりました。また60代以上では、両方使うけれども「~いただき」のほうが感謝の度合いが高いという回答が多く現れました。全体的な流れとしては、「~いただき」のほうが優勢になりつつあるようです。

ふぅ、今回はややこしかったですね。ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

お教え『くださり/いただき』ありがとうございます(NHK放送文化研究所ウェブアンケート、2010年12月~11年1月実施、1252人回答)

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)