最近気になる放送用語

「地熱」はチネツ? ジネツ?

「地熱」ということばは、どのように読んだらよいのでしょうか。

放送での取り決めとしては、基本的には「チネツ」、場合により「ジネツ」と読むことも可、というようになっています。

解説

日本語の漢字一文字一文字には、音読みの場合でも複数の読み方が備わっていることがよくあります。「地」にも複数の音読みがあり、「チ」と読むのは漢音読み、「ジ」と読むのは呉音読みと呼ばれています。おおざっぱに言うと、遣唐使などが中国大陸で学んできて日本に導入した読み方が漢音で、それよりも以前に日本に伝えられていた読み方が呉音です。

この字は、「地質・地形・地理」などでは漢音で「チ」になりますが、「地盤・地震・地雷」などでは呉音で「ジ」と読みます。単語によって読み方が異なるのです。ご質問の「地熱」については、「地(ち)球内部の熱」であれば「チネツ」でしょうが、「地(じ)面から出ている熱」と考えるならば「ジネツ」もありえます。

専門家の間でも、分野によって読み方が異なります。文部科学省の定めた学術用語集によると、地学・土木工学・地震学・原子力工学などでは「チネツ(発電、探査、…)」ですが、地理学では「ジネツ発電」となっています。

ウェブ上でおこなったアンケートでは、「ジネツ」も間違いではないという意見はどちらかというと高齢層に多く見られました。今後は、「ジネツ」は間違っていると感じる人が多くなるかもしれません。では、なぜこのような変化が起こりつつあるのかを知りたくなってくるのですが、あまり考え込むとチネツ、じゃなかったチエネツが出そうになるので、このへんでやめておきます。

「地熱」の読み方(NHK放送文化研究所ウェブアンケート、2009年12月~2010年1月、520人回答)

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)