最近気になる放送用語

油をヒク? シク?

フライパンに油を「ヒク」でしょうか、「シク」でしょうか。

油を「引く(ヒク)」です。この場合のヒクには「引き延ばすようにして一面に塗る」という意味があるのですが、「布団を敷く(シク)」のような動作と意味の上で近い部分があり、また音も似ているので、混同されやすいのです。

解説

まずシクについて考えてみると、この動詞には「あるものを平べったくなるように置く」という意味があります(布団をシク)。また、「敷設する」という意味もあります(鉄道をシク)。

いっぽうヒクには、「ひっぱる」を中心としていろいろな意味があり、そのなかに「引き延ばすようにして一面に塗る」(油をヒク)や、「あるものを引き込むように導き入れる」(電気・水道をヒク)というものもあります。

「てぐすね引いて待ってます」という言い方があります。これは、弓を持つ「手」に「薬練(くすね)(弓の弦に塗る補強剤で、松やにと油を練ったもの)」を「引いて=引き延ばすようにして一面に塗って」待っている、ということで、準備万端いつでもOK、という意味です。この「引く」は、「フライパンに油を~」と同じ使い方です。

このシとヒとを取り違える傾向は特に東京のことば(中でも下町)によく見られ、タクシーに乗ってヒビヤ(日比谷)と言ったつもりが着いてみたらシブヤ(渋谷)だった、という話も聞いたことがあります。

さて、ここで問題です。正しいのはどちらでしょう?

  • このドラマにはいくつもの伏線がシカレテイル/ヒカレテイル
  • 背水の陣をシク/ヒク
  • 自宅に光ケーブルをシイタ/ヒイタ
  • 戒厳令をシク/ヒク

正解は「コチラ・・・」

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)