最近気になる放送用語

「3階」はサンガイ? サンカイ?

「4階」は[ヨンカイ]なのに、なぜ「3階」は[サンガイ]と濁るのでしょうか。

これには歴史的な理由があります。現代でも「3階」を[サンカイ]と発音すると違和感を覚える人が多いので、放送では特に注意が必要でしょう。NHKでは[サンガイ]しか認めていません。

解説

古い日本語では、「1階、2階、3階、4階」は[イッカイ、ニカイ、サンガイ、シカイ]と言っていました(17世紀はじめの資料に記録されています)。「3階[サンガイ]」および「何階[ナンガイ]」が濁るのは、「『ん』のうしろは濁ることが多い」という日本語の傾向によるものです(ただし「~回」の場合は「3回[サンカイ]」「何回[ナンカイ]」なので、すべての場合に「ん」のうしろが必ず濁るというわけではなく、この傾向が規則的にある語と、もともとない語とがあります)。

ところが、「シ」は「死」に通じる、という発想(忌みことば)から、「シカイ」の「シ」を「ヨン」に取り替えて[ヨンカイ]と言うようになりました。「シ」を「ヨン」にそのまま替えただけですから、[ヨンガイ]にはならなかったのです。

「~階」の読み方には「『ん』のうしろでは濁る」という規則があったのですが、[ヨンカイ]という新しい言い方が生まれたことによって、「規則違反・例外」が出てきてしまいました。ここで、規則を捨ててこの際「3階」「何階」も[サンカイ][ナンカイ]にすればすべて「~カイ」で統一するのですっきりするのではないか、という考えが生まれたのだと想像できます。

ただし、「3階」を[サンカイ]と読む人は全体としてみればまだ少数派で、違和感を引き起こすことがあるのを知っておいたほうがよいでしょう。文研の調査では、九州地方では[サンカイ]と読む人が多いものの、それ以外の地域ではすべて[サンガイ]と読む人が多くなっており、日本全体では[サンガイ]派が4分の3以上を占めることが明らかになっています(詳しくは『放送研究と調査』2000年2月号参照)。くれぐれもご注意ください。

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)