最近気になる放送用語

「行きません」?「行かないです」?

「行きません」と「行かないです」とは、どう違うのでしょうか。

「行かないです」は比較的新しい表現です。放送では、「行きません」を使いましょう。

解説

伝統的な日本語では、原則的に「デスは名詞専用、マスは動詞・形容詞専用」という使い分けが守られていました。

  • 山デス。(山=名詞)
  • 行きマス。(行く=動詞)
  • 美しゅうございマス。(美しい=形容詞)

ただしこのうち形容詞については、「美しゅうございマス」とはなんとも大げさではないか、ということで、「美しいデス」という言い方も戦後の国語審議会で認められるようになりました。

その後、「名詞だろうが動詞・形容詞だろうがぜんぶデスで済ましてしまおう」という動きがでてきました。そのあらわれの1つが、ご質問の「行かないデス」です。

  • 行くデス。

肯定形の「行くデス」は、一部の地域以外ではほとんど使いません。しかし否定形の「行かないデス」は、くだけた言い方としては頻繁に耳にするものになっています。

否定形のほうがよく使われているのは、「行かない」という形が、「美しい・うるさい」などの形容詞と同じく「~い」で終わっていることが原因だと思います。つまり、「美しいデス・うるさいデス」が認められるのなら、形のよく似た「行かないデス」だってOKじゃないか、という発想が無意識に働いたものと考えられます。

なお「行くノデス」「行かないノデス」などの「ノデス」は、「デス」と違って動詞のあとに付けても問題ありません。

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)