放送現場の疑問・視聴者の疑問

「デッドロックに乗り上げる」という言い方は?

労使交渉などが行き詰まったときに、「デッドロックに乗り上げました」という言い方を耳にすることがあります。この語の使い方は誤っているのではないでしょうか。

そのとおりです。「行き詰まり」を意味する英語の「deadlock」の「lock(錠)」と「rock(岩)」の混同による誤用です。

解説

「deadlock―デッドロック」は「(交渉などの)行き詰まり、こう着状態、停頓」の意味ですが、ご指摘のように日本語では「デッドロックに乗り上げる」という使い方・言い方を見たり聞いたりします。これについて英和辞典の中には「deadlock」の上記の語意・語釈を記述したあと「日本語では『デッドロック』の『ロック』をrock(岩)と誤って解し、『デッドロックに乗り上げる』などと言うが、『デッドロック』に当たる英語はdeadlockである」(『研究社新英和大辞典 第6版』)「日本語の『デッドロックに乗り上げる』はlockとrockを混同したもの」(『小学館ランダムハウス英和大辞典 第2版』)と付記しているものもあります。

国内の新聞社や通信社、放送局の『用字用語ハンドブック』や『用語集』でも、同じ外来語・カタカナ語の中で誤用として指摘されることが多い「ジンクス」(「縁起のよいもの・よいこと」の意味での使用は不的確)と並んで、この「デッドロックに乗り上げる」も「誤りやすい慣用語句」の例としてあげられています。

「(交渉などが)行き詰まった」状態を表すのに「デッドロック」を使うとすれば「デッドロックに陥る」「デッドロックに直面する」などの言い方もあるでしょうが、外来語・カタカナ語を使うよりは、日本語で「行き詰まる」「暗礁に乗り上げる」「こう着状態」などとしたほうがよいでしょう。

(メディア研究部・放送用語 豊島 秀雄)