放送現場の疑問・視聴者の疑問

「~たり~たり」

「(休みの日には)本を読んだり音楽を聴いて過ごしています」などという言い方を、放送でも耳にすることがあります。この言い方は間違っているのではないでしょうか。

「(休みの日には)本を読んだり音楽を聴いたりして過ごしています」と、「たり」を繰り返す形にするのが本来の言い方・用法です。

解説

この場合の「たり」について国語辞書は、「同類の動作・状態が繰り返し起こる意を表す。『行ったり来たりしている』『泣いたり笑ったりする』『高かったり安かったりで安定しない』『晴れたり曇ったりの空模様』 語法『たり』を繰り返す形が規範的」(『明鏡国語辞典』大修館書店)と記述しています。

ほかの辞書も「たり」の語例として「飛んだりはねたり」「寝たり起きたり」「飲んだり食ったり」「見たり聞いたり」「暑かったり寒かったり」など、「たり」を繰り返す形の書き方(言い方)をあげています。

また、この「たり」の語法(ことばの使い方)について国内の主な新聞社や通信社でも『用字用語集』や『用語ハンドブック』で、誤りやすい語句の一つにあげている社が幾つかあります。例えば、時事通信社の『最新用字用語ブック[第4版]』は◆「~たり~たり」の用法について次のように記しています。「『歌ったり踊って楽しんだ』といった表現が増えているが、『歌ったり踊ったりして楽しんだ』と正しい用法を使いたい。『踏んだりけった』とは決して言わない。(以下略)」

最近は放送のニュースや番組でも、後ろの「たり」が落ちる傾向がありますが、意味をはっきりさせ文体を整えるためにも、この対応・用法は守ったほうがよいでしょう。この「~たり~たり」の語法が守られない背景には、文章そのものが長くなりすぎる傾向もあるためと思われます。本来の語法を守ることとあわせて、「ニュースの原稿や番組のコメントは短く簡潔に」という基本的なことも常に心がけたいものです。

<例>

  • ×本を読んだり、手紙を書く暇もありません。
  •  →○本を読んだり、手紙を書いたりする暇もありません。
  • ×歌舞伎を観たり、落語を聴いて過ごしました。
  •  →○歌舞伎を観たり、落語を聴いたりして過ごしました。

(『NHKことばのハンドブック第2版』P127参照)

(メディア研究部・放送用語 豊島 秀雄)