放送現場の疑問・視聴者の疑問

台風は「横断する」?「通過する」?

台風の進路・動きを伝えるとき、「○○地方を横断し・・・」とか「××地方を縦断し・・・」といった表現を耳にしますが、進路がよくわからない場合もあります。放送では、どのような使い方をしているのでしょうか。

ご指摘のように、地域によっては違和感を生じる場合があり、必要に応じて上陸地点や通過地域、進路方向を具体的に示すようにしています。

解説

辞書では、「横断」が(1)横に断ち切ること(2)横または東西に通り抜けること、「縦断」が(1)縦に断ち切ること(2)縦または南北に通り抜けること、などとなっています。台風の進路については、日本列島の伸びている方向に沿って通る場合を「縦断」、これと交わる方向に通る場合を「横断」と言うのが一般的です。しかし、日本列島は弓なりに湾曲しているので、地域によっては、このような言い方では違和感を生じる場合があります。例えば、東北地方では東西方向に通るのが「横断」ですが、中国地方では南北方向に通るのが横断になります。

また、台風の進路は斜めになったり迷走したりする場合が多いので、「横断」「縦断」のいずれかの表現で割り切れないことも少なくありません。このように、進路について「横断」「縦断」を使うことが適切でない場合は、視聴者に誤解を与えないように、「横断」「縦断」ということばは使わないで、必要に応じて上陸地点、通過地域、東西南北の方向を具体的に示すようにしています。

<例>

台風○○号は、瀬戸内海を縦断(横断)し・・・・

→台風○○号は、瀬戸内海沿いに東へ進み、近畿地方に向かっています。

(ことばのハンドブックP25参照)

(メディア研究部・放送用語 豊島 秀雄)