放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

台湾,学生らの立法院占拠に関する報道に批判

台湾では,中国とのサービス貿易協定の批准を巡り,学生や市民団体が立法院(国会)を占拠し座り込む行動に出ているが,その報道が当局サイドに立った一方的なものだとして批判が高まっている。この問題では,立法院で多数を占める国民党が,逐条審議の与野党合意に反して批准を強行しようとしたことが立法院占拠の発端となったが,与党国民党に近いメディアは,学生らの行動を「非理性的」「逸脱」などと批判する報道に終始した。特にその後,行政院(内閣)の占拠を敢行した学生達を,3月24日に馬英九政権が強制排除した際,頭を殴られ血まみれになった学生達の写真や映像をこうしたメディアがほとんど報じなかったことから,世論の間では政府や政府寄りメディアへの批判が一気に高まった。特に与党色が強いTVBSに関しては,現場の中継車に「インチキ記事を報道してくれてありがとう」とか,中国中央テレビ(CCTV)の報道のようだとして「CCTVBS」などと皮肉る貼り紙が大量に貼られた。

香港,HKTVの「携帯向けサービス」に“待った

香港で,中国本土の携帯事業者の子会社を買収して携帯向け動画サービスに進出する計画を打ち出したHKTVについて,規制当局のOFCA(通信業務管理局弁公室)は3月13日,計画に違法のおそれがあるとの見解を示した。これはHKTVが,携帯向けサービスの技術規格について,携帯向け用のCMMB方式ではなく,画質の良い地上デジタル放送向けのDTMB方式を採用する方針を示したためである。HKTVは,2013年10月に無料テレビ免許の申請を却下されたため,携帯向け動画サービスを各家庭のテレビでも視聴できるようにすることで,無料テレビ市場への事実上の参入を目指した。しかしOFCAは,放送条例の規定に基づき,5,000軒以上の家庭が視聴できる場合は無料放送もしくは有料放送の免許が必要だと指摘,HKTVが目指していた2014年7月からのサービス開始は難しくなった。関係者の間では,免許申請の却下と合わせて,行政長官を「無能」などと批判するHKTVのオーナーへの意趣返しとの見方が出ている。

韓国,総合編成チャンネルの免許更新へ

KCC(韓国放送通信委員会)は3月19日,2011年にスタートしたケーブルテレビ・衛星放送向けの総合編成チャンネル3社と,報道専門チャンネル1社に対して,条件付きで免許の更新を認めた。更新が認められたのは,総合編成チャンネルのTV朝鮮(朝鮮日報系),JTBC(中央日報系),チャンネルA(東亜日報系)と,報道専門チャンネルのニュースY(聯合ニュース系)の4社である。KCCは2011年のスタート当初に示されていた主要な目標値が,報道番組比率や再放送比率を引き上げるなど大幅に修正されていたことを問題視し,当初の計画を順守するようにとの条件を付けた。

トルコ政府,ソーシャルメディアを遮断

トルコで3月20日,エルドアン首相の意向に基づいて,短文投稿サイトTwitterへの接続が遮断された。その背景には,Twitterなどに,大規模汚職事件に首相自ら関わっていることをうかがわせる音声記録がアップされたことがある。ソーシャルメ ディア規制は27日,インターネットの動画投稿サイト「YouTube」にも飛び火し,アクセスが禁止された。政府は,隣国シリアへの軍事行動の可能性に関する政府高官の会話とみられる録音が,YouTubeに投稿されたことを理由に挙げている。

イスラエル,公共放送IBAを改組へ

イスラエルのエルダン通信相は3月6日,公共放送の全面的改革のため,テレビ局Channel-1やラジオ局Kol Israelなどを運営するIBA(イスラエル放送協会)を改組する方針を明らかにした。新組織の財源には国家予算が充てられ,15年3月末日までに現行制度による受信料の徴収とラジオ広告は廃止される。1,600人近い職員は全員一旦解雇され,新組織では人員の大幅削減が行われる。改革案が出された背景には,IBA職員の高い給与水準や受信料(年間約9,000円)の使途への批判,IBAの放送を「左翼的」と見る政権側の不満があると指摘されているが,IBA解体には労組の激しい抵抗も予想される。