放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英BBC新本部へ移転完了

イギリスの公共放送BBC は3月18日,新本部「ブロードキャスティング・ハウス」のスタジオからテレビニュースの放送を開始した。BBCでは,異なる放送会館に入っていた国際放送部門や国内テレビニュース部門などを1か所に統合するため,ロンドン中心部に完成した新本部への転入を順次進めてきた。そして,最後に国内ニュース部門が引っ越しを終え,移転が完了した。新本部では,国際ニュースと国内ニュースの連携を強化するとともに,テレビ,ラジオ,インターネットの各チームの垣根をなくす。BBCでは,経費を削減する一方で,報道の強化につながるとしている。

英BBCトニー・ホール新会長就任

イギリスの公共放送BBCの新しい会長に4月2日,トニー・ホール氏(62)が就任した。ホール氏は,元BBC報道局長で,ロイヤルオペラハウスのCEOを務めていたが,前会長のエントウィッスル氏がBBCの元司会者ジミー・サビル氏の児童虐待事件や報道番組での誤報で引責辞任したのを受け, 新会長に任命された。ホール新会長には,サビル事件で傷ついたBBCの信頼回復や,受信許可料の凍結による大規模な人員削減など,厳しい状況下で,BBCが抱える課題に対処する手腕が問われる。

仏,見逃し番組視聴急増

フランスでは,スマートテレビやパソコン,携帯端末などを使った見逃し番組の視聴が,2012年の1年間に4割近く増加した。これはCNC(国立映画・動画センター)の調査によるもので,2012年のキャッチアップ視聴は25億件で,2011年の18億件に比べ38.9%の増加となった。視聴された番組のジャンル別では娯楽が31.0%,ドラマなどフィクションが29.5%,情報が9%などとなっている。フランスでは午後5時以降深夜0時までの間に放送される全チャンネルの全番組の59%が,見逃し視聴可能となっている。

独,新受信料制度による自治体の負担規模を調査

ドイツの公共放送ARDは3月8日,ドイツ都市会議,ドイツ郡会議,ドイツ市町村連盟の3つの地方自治体連合組織と,放送負担金制度による自治体の負担規模を共同で調査することで合意した。2013年1月から実施されている新制度では,自治体も企業と同じく,事業所ごとに職員と自動車の数に応じた放送負担金の支払い義務が課されているが,実施後,多くの自治体から従来に比べて負担が大きすぎるという声が上がった。一方,公共放送側は,自治体が申告している支払い額の計算方法に誤りがあるケースが多いことなどを指摘していた。調査は,外部の調査機関に委託され,2015年に行われる新制度の見直しの際に考慮される。

独カルテル庁,公共放送の有料VOD計画に懸念表明

ドイツの連邦カルテル庁は3月11日,公共放送ARDとZDFが共同で計画しているインターネットによる動画配信サービス「Germany's Gold」について,公正競争の観点から懸念を表明した。「Germany's Gold」は,ARDとZDFの子会社が,複数の番組制作会社や権利販売会社とともに運営し,過去の番組を有料または広告つきで配信する計画だった。カルテル庁は,この計画について,ARDとZDFが動画の価格と選択について調整を行う不正なカルテルとなり,VOD市場の公正な競争を妨げるおそれがある,とした。しかし同庁は,ARDとZDFが動画の販売は別々に行い,技術面のプラットフォームだけを共同で運営する形に変更すれば計画は認められるとしている。

伊Telecom Italia Media,La7を売却

イタリアの民放La7などを運営するTelecom Italia Media(TI Media)は3月4日,一部のテレビ部門を,同社の広告会社Cairo Communicationに売却することで合意したと発表した。売却されるのはLa7(総合)とLa7d(女性向け)の2つのチャンネルで,音楽専門のMTVやプラットフォーム運営会社TI Media Broadcastingは傘下に残る。TI Mediaは過去10年間,毎年約1億ユーロ規模の赤字を出しており,親会社で通信最大手のTelecom Italiaは2012年5月,採算のとれないテレビ事業から撤退し,コアビジネスの通信事業に集中する意向を示していた。