放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英BBC,テレビジョンセンター売却へ

イギリスの公共放送BBCは6月13日,ロンドンのホワイト・シティにあるテレビジョンセンターの売却について具体的な作業に入ったことを発表した。BBCはこの作業にあたり資産管理コンサルタント会社のLambert Smith Hamptonを指名し,売却は競争入札制で行う。テレビジョンセンターは1960年6月にオープンし,テレビ番組制作機能を担ってきた。2010年末現在約5,000人の職員が勤務していたが,マンチェスターに建設された第2放送センターやロンドン中心地の放送会館の改築に伴い,2013年夏までにすべての職員と機能の移転が完了する予定である。

英BBC,年間事業計画を初めて公表

イギリスの公共放送BBCは6月16日,『2011年度の業務優先事項と事業計画の概要』を発表した。これは,受信許可料の据え置きという状況の中で,2016年度までの経営戦略である「質の優先」に沿った単年度の予算事業計画を定めたもので,「番組やサービスの向上」「受信許可料の価値の向上」「アクセスの保障」などで構成されている。なお,BBC執行部は9月までに,より詳細な長期計画を監督機関であるBBCトラストに提出するとしている。

英上院,BBC企業統治の見直しを提言

イギリスの上院放送通信委員会は6月29日,『BBCの企業統治と規制』という報告書を発表し, コンテンツ規制の分野で内部監督機関のBBCトラストと独立規制機関のOfcom(Office of Communications)との間で権限が重複していることで混乱が生じていると指摘し,OfcomにBBCのコンテンツ規制を一任することなどを提言した。また,2014年にはチャンネル3(ITV)とチャンネル5の免許の更新,2015年には放送通信法の改正,2016年にはBBC特許状の更新が行われることから,委員会は政府の政策立案に対してこれらの提言が活かされることを要望した。

仏CSA,「ツイッター」名指しを禁止

フランスの独立規制機関CSA(視聴覚高等評議会)は6月初旬,国内の放送機関に対して,放送の中で「ツイッター」や「フェイスブック」などインターネットの交流サイトを具体名で名指ししないよう通達した。CSAは,「交流サイトの具体名を放送することは広告にあたり,不正広告を禁じた1992年3月の政令に違反する」としている。そのうえでCSAは,必要な場合は一般的な用語である「ソーシャルメディア」などといった言い方で表現するよう求めている。フランスでは,サルコジ政権がネット規制を強める方針を打ち出していて,今回の通達はその一環とも見られている。

オーストリア,地上アナログ放送終了

オーストリアでは6月7日,中部シュタイアーマルク州のマリアツェルとミュルツタールで地上アナログ放送が終了し,2006年10月に始まったデジタル移行が全土で完了した。全国で公共放送ORFのORF1,ORF2,商業放送ATVの3チャンネルが視聴できるほか,都市部ではこれに加え商業放送PULS4,ORFのスポーツ専門チャンネルORF SPORT PLUS,ドイツとスイスの公共放送と共同で制作している文化チャンネル3satが視聴できる。オーストリアでは衛星放送とケーブルテレビが広く普及しており,地上放送でテレビを視聴しているのは全世帯の約5%である。

伊RAI,人気政治討論番組を終了

イタリア公共放送RAIは6月6日,総合編成の若者向けチャンネルRai Dueの人気政治討論番組“Annozero(ゼロ年)”の終了を発表した。同番組は,ジャーナリストのMichele Santoro(ミケーレ・サントーロ)氏が司会を務め,過激な政治的批判を繰り広げる人気番組で,中道左派のプローディ政権下の2006年から木曜夜に放送されていた。サントーロ氏はベルルスコーニ首相の政敵としても知られ,過去2002年には,同氏のトークショー番組が,ベルルスコーニ首相から「公共放送の犯罪的使用」と名指しで批判され,当時のRAI幹部の決定により打ち切られたこともある。なお,同氏はLa7と移籍で合意したとみられていたが,最終的に物別れとなった。この裏には,La7を運営するTelecom Italia Mediaに何らかの政治的圧力がかかった可能性が報道されている。