放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

韓国,活字メディア3社のテレビ事業参入を承認

韓国の放送通信委員会(KCC)は3月30日,活字メディアがテレビ事業参入のため設立した会社のうち,朝鮮日報系の「CSTV」と中央日報系の「jTBC」,それに聯合通信系で報道専門チャンネルを運営する「聯合ニュースTV」の計3社に対して事業承認状を交付した。韓国では2009年の放送法などの改正で,新聞社や通信社の放送事業参入が解禁され,2010年末にKCC が総合編成チャンネル事業者4社と報道専門チャンネル事業者1社を選定していた。しかし総合編成チャンネル事業者のうち東亜日報系の「チャンネルA」と毎日経済新聞系の「毎日放送」は,それぞれ事業開始のため必要とされたおよそ300億円の資本金が所定の期限までに納入できなかったため,当面承認は見送られ,6月末まで手続き期限が延長された。

韓国,MBCが衛星放送へのHD放送再送信を中断

MBCは4月13日,韓国唯一の衛星放送KTスカイライフ(旧スカイライフ,今年3月に名称変更)に対し,首都圏でのHD放送の再送信を中断した。これにより,KTスカイライフのデジタル放送に加入する首都圏の62万世帯でMBCのHD放送が見られなくなった。KTスカイライフは2009年に,加入者1件あたり280ウォン(約20円)の再送信料をMBCに支払う契約を結んだが,これまで再送信料を払ってこなかった。その理由としてKTスカイライフは,MBCとの契約では,ケーブルテレビやIPTVよりも不利にならないようにするとの取り決めがあるにもかかわらず,ケーブルテレビ事業者は地上テレビ局への再送信料の支払いを拒み続けていることを挙げている。

中国,著名な体制批判派ブロガーを拘束

中国政府は4月3日,北京オリンピックのメインスタジアムを設計した芸術家で,ツイッター上での人気も高い体制批判派のブロガー,艾未未(がい・みみ)氏を拘束した。拘束の容疑について中国政府は「経済犯罪の疑い」と説明しているが,チュニジアで起きた「ジャスミン革命」の中国への波及を警戒している当局が,体制に批判的な言論への締め付けを強化したものと見られている。艾未未氏は中国におけるツイッターの人気ランキングで3位に入る著名なブロガーで,北京の再開発に伴う芸術村の強制立ち退きに反対するデモをツイッター上で中継するなど,体制に批判的な言論が目立っていた。艾氏の拘束後,ツイッター上では釈放を求める署名活動が行われているほか,欧米諸国や台湾も中国政府に対し釈放を呼びかけている。

香港,TVBの役員体制一新

香港の地上テレビ最大手のTVBは,オーナーの邵逸夫(Sir Run Run Shaw)氏一族が所有していたTVB株26%を3月末に全て香港や台湾などの実業家グループに売却したのを受けて,4月中旬までに理事会のメンバーを一新した。邵氏一族から株式を購入したのは,TVBの子会社の有料衛星放送「TVB Pay Vision」の大株主である実業家の陳国強氏や,台湾宏達電子(HTC)の王雪紅会長,それにアメリカ企業などで作るグループ「Young Lion」である。香港特別行政区政府の資料によると,TVBの新体制では,100歳を超える高齢の邵逸夫氏ら5人が理事を退く一方,陳氏や王氏が新理事として名前を連ねている。

NZ,公共放送チャンネルのTVNZ 7が放送終了へ

ニュージーランドのコールマン放送相は4月6日,公共放送TVNZのデジタルチャンネル「TVNZ 7」への補助金を打ち切る方針を明らかにした。TVNZ 7は,TVNZの4つのデジタル無料チャンネルの中で唯一広告が入らず,ニュースやドキュメンタリー,子ども番組などが評価されていたが,補助金の打ち切りで,2012年6月に放送を終了する。TVNZ 7をめぐっては,61人の有識者が連名で全国紙に存続を求める公開書簡を掲載した他,Facebookの「Save TVNZ 7(TVNZ 7を救え)」というページにも存続を訴えるコメントが集まっていた。こうした動きに対しコールマン放送相は,オンライン利用などでテレビの視聴形態が変わりつつある時代にあっては,高コストのチャンネルというインフラよりも,コンテンツに補助金を出すほうが有意義だとの考えを示している。