放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英Ofcom,第2回PSBレビューの中間報告書を発表

イギリスの放送と通信分野を規制監督するOfcom(Office of Communications)は9月25日,第2回公共サービス放送(PSB)レビューの中間報告書を発表し,2012年の完全デジタル移行後を想定した「公共サービス放送の未来」について3つのモデルを示し,国民の意見を募集した。第1のモデルは,BBCと商業放送との二元体制による現行PSBモデルの強化,第2のモデルは,商業テレビのうちITVとFiveをPSBのカテゴリーから除き,BBCとチャンネル4によるPSBモデルの再定義,第3は,公共サービス基金を設置し,公共サービス・コンテンツ提供者が入札制で資金を獲得し,サービスを提供するモデル,の3つである。どのモデルを選択しようと,イギリス全体でのPSBを維持するためには追加の公的財源が必要とされている。報告書のなかで明確にされてはいないが,追加財源の第1候補は受信許可料と考えられている。

仏,受信料をインフレ率に連動へ

フランスのアルバネル文化・コミュニケーション相は9月26日,2009年度予算と公共放送の広告放送廃止問題に関連して記者会見を行い,受信料額を 2009年からインフレ率に連動させると発表した。文化相はまた,インフレ率への連動は受信料の実質的な目減りを防ぐためで,値上げを意図したものではないと述べた。この措置を盛り込んだ公共放送に関する法案は11月に議会で審議される。従来,受信料は政令によってほぼ毎年小幅な値上げが行われてきたが,2002年以降は一度も値上げされ いない。1~8月のインフレ率は3.2%で,このまま推移すれば2009年の受信料は120ユーロ(約1万7,000円)となり,総額8,000万ユーロの増収となる。

独,放送州間協定第10次改正が発効

ドイツ各州の放送法の共通原則を定める放送州間協定の第10次改正が9月1日に発効した。主な改正点は,第一に,全国向け商業テレビの免許交付と番組監督について,これまで事業者が拠点を置く州のメディア監督機関が権限をもつ連邦主義が採られてきたが,今後は,全14の州メディア監督機関の代表者からなる単一の委員会(ZAK)が決定権をもつ。第二に,メディア企業の集中規制に関して,商業テレビの意見の多様性を審査する独立委員会KEKを,従来の専門家 6人に,各州メディア監督機関の代表6人を加えた構成にし,より強い決定権限をもたせる。第三に,従来デジタルケーブルテレビに対して設けられていた,送信容量の3分の1を公共放送,RTL,Sat.1の2大商業テレビなどに割り当てなければならないというマストキャリー規制を,IPTVや携帯向け放送のプラットフォーム事業者にも適用する。

独,「2008年デジタル化報告書」発表

各州メディア監督機関の連合体ALMは9月2日,放送のデジタル化状況についての第4次報告書を発表した。これによれば,ドイツのデジタル放送視聴世帯は,今年6月末時点で,全テレビ視聴世帯約3,700万の46.5%で,前年比で6.6%の伸びを示した。伝送路別のデジタル化率は,地上波95.1% (前年比+9.1%),衛星波65.7%(+8.4%),ケーブルテレビ21%(+4.8%)となった。また今回インターネットによる動画視聴についても調査が行われ,YouTubeやMySpaceなどでユーザー作成コンテンツ(UGC)を週に1回以上視聴していると答えたのは全世帯の11.9%,放送局による無料のVODは2.7%,Zattooなどによるテレビ番組の同時再送信サービスは1.2%,有料VODは0.3%となった。

伊政府,地上デジタル放送への移行新スケジュールを決定

イタリア政府は9月10日,2012年末に予定されている地上デジタル放送への完全移行に向けた新スケジュールを決定し,関連省令を出した。新計画では,従来の一斉型の移行方法ではなく,全国を16のエリアに分け,2009年半ば~2012年末まで半期ごとに期限を設けて,エリアごとの事情を考慮し,段階的に移行させる方法を採用している。政府の計画では,2010年末までに,ローマ,ミラノ,トリノ,ナポリなどの大都市圏が移行を終了し,約70%の世帯がデジタル放送へ移行すると予測される。また政府は,年収1万5,000ユーロ(約240万円)以下の低所得世帯を対象に,STB購入のための助成を行う方針も発表した。