「1000円弱」は、1000円よりも高い?安い?

公開:2024年5月1日

Q
「プレゼントは1000円弱を目安に準備してください」と言われたら、1000円よりも高いものを準備したほうがよいのでしょうか、あるいは安いものでよいのでしょうか。
A
1000円よりも少し安い値段のもので準備することをおすすめします。

「~弱・~強」という言い方についての解釈のしかたの問題は、これまでも、「1時間弱・1時間強」および「7割弱・7割強」を題材として取り上げてきました。あらためて考えてみましょう。

「~弱・~強」の意味・用法については、たとえば次のように説明されています。

じゃく【弱】 切り上げてその数になったことを示す語。実際はその数値よりもすこし少ないこと。

きょう【強】 ある数のほかに切り捨てた端数のあること。実際はその数値よりもやや多いことを表す。

(『広辞苑』(第七版))

ここから考えると、「1000円弱」は「1000円よりもすこし少ない」〔=1000円―α〕ということになります。

ところが、この「1000円弱」のことを「1000円よりもすこし多い」〔=1000円+α〕というように解釈している人が、特に若い人たちを中心に見られるようになっています。「1000円と、少々」というとらえ方なのだと思います。

この若い人たちの傾向(「~弱」を「~よりもすこし少ない」ではなく「~よりもすこし多い」ととらえる)は、「1時間」や「7割」の解釈に観察される傾向とも共通しています。

「1000円弱・1000円強」について、調査をおこなってみました。まず、2つの考え方を回答者に提示しました。

両方とも1000円以上だが、「1000円弱」は1000円を少し超える金額で、「1000円強」は1000円よりもかなり高い金額を表す。

「1000円弱」は1000円よりも安い金額のことで、「1000円強」は1000円を超える金額のことを表す。

Bのほうが、伝統的な解釈です。Aは、新しい解釈だと言えるでしょう。
これについてまず全体の結果を見てみると、用意した回答選択肢の中でいちばん多かったのは、「Bは正しいが、Aはおかしい」(全体65%)というものでした。伝統的な解釈が主流だということですね。

それに対して、この反対の「Aは正しいが、Bはおかしい」(全体12%)が2番目になっていました(このほか、「どちらも正しい」8%、「どちらもおかしい」9%、「わからない」6%)

一方、年代別には、20代・30代で、この新しい解釈である「Aは正しいが、Bはおかしい」がやや多くなっているのが、調査結果から見て取れます。この年代では、「「1000円弱」は1000円を少し超える金額」〔=1000円+α〕だと考える人が、2割程度いるということになります。

新しい用法のほうを使う若いみなさん、年上の人を食事に誘うときに「1000円弱で済みますから」と言うと、「そうか、1000円でおつりが来るんだな」と思っていた人を会計時にがっかりさせてしまうことが十分考えられるので、伝統的な意味・用法もいちおう知っておいた上で、ぼくたちの世代とも仲良くしてくださいね。

メディア研究部・用語 塩田雄大

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