「1時間弱」は、1時間よりも長い?短い?

公開:2017年10月1日

Q
「1時間弱」というのは、1時間よりも長いのでしょうか。あるいは短いのでしょうか。
A
1時間よりも短いです。

<解説>

「~弱」を国語辞典で引いてみると、「数量を表すことばにつけて、それよりやや少ないことを表す。[用例]徒歩で一時間弱かかる。」という説明が出てきます(『例解新国語辞典(第九版)』2016年)。要するに「1時間弱」は「1時間よりもやや少ない」ということで、これで話は終わってしまいそうなのですが、特に若い人たちを中心に、誤解をしている人が少なからずいます。「1時間弱」や「7割弱」のことを、「1時間と、ちょっと」「7割と、ちょっと」という意味だと思ってしまっているようなのです。

ウェブ上で「1時間弱」が指す意味について尋ねてみたところ、全体としては「1時間未満」であるという回答がかなり多く、「1時間より少し長い時間」だと考えている人は少ないことがはっきりしました。ところがこれには年代差があり、若い人の間では「1時間より少し長い時間」という回答も決して無視できないくらいの割合であることがわかったのです。

つまり、こういうトラブルが考えられます。
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上司:さっきお願いしてた例の件、どのくらいでできそう?
部下:あと1時間弱でできあがります。
  (それから60分経過)
上司:まだできてないの?〔心の声:50分ぐらい待てばいいかと思ったのに〕
部下:ですから、さきほど「1時間弱」とお伝えしたはずです。〔心の声:1時間以上かかるって言ったじゃん〕
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この「部下」の受け答えの例は、「特に若い人には『~弱』の意味を誤解している人が少なくないので、気をつけましょう」という啓発の目的で紹介したものです。頼まれた仕事が予定通りに仕上がらなかったときの言い訳として悪用するのは、やめてください。

(NHK放送文化研究所ウェブアンケート、2016年2月~3月実施、744人回答)

メディア研究部・放送用語 塩田雄大

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