発掘ニュース

No.308

2022.04.08

ドキュメンタリー/教養

幻の科学番組『四つの目』を一挙31本発掘!

お待たせいたしました!去年ご紹介した“メガ発掘”の続報です。発掘ニュースNo.297でお伝えし、あわせて3000本余りのビデオテープ提供となった眼科医の安達京さんからの発掘。科学番組のパイオニアともいえる『四つの目』が31本発掘されました!

今から50年以上前の、青少年向け科学番組。1966年から6年間放送しましたが、これまでアーカイブスに保存されていたのは1本だけだったという幻の番組です!

今回、発掘が確認されている中で一番古い『四つの目』をご紹介しましょう!
1971年5月20日放送、テーマは「ごみ」。番組の始まりは…

東京ドームの前身、懐かしい後楽園球場!観客席を“時間の目”で見ると…

ゴミだらけ!…というところから番組は始まります。“四つの目”とは、「肉眼」に加え、「時間の目」(微速度撮影によるコマ落としや、高速度撮影によるスローモーション)、「拡大の目」(顕微鏡による撮影)、「透視の目」(レントゲン撮影)という、当時最先端の撮影技術を駆使した“目”のこと。この『四つの目』でさまざまな事柄を見てみようというのが番組の狙いでした。

司会の科学者・尾崎博さん、聞き手の中村美知子さんお2人の会話に出てくる情報にも時代を感じます。
「一人ずつのゴミでもたまるとなかなか大変です。東京みたいに1100万も人口があると、そのゴミは大変。2週間であの大きい霞が関ビルがいっぱいになってしまうくらいゴミを出す。」

「東京でも困っちゃって“夢の島”というのを作って…あれはゴミを捨てて埋め立てしたんです。それがいっぱいになっちゃって、もう少し先に15号埋立地というのを作ったんです。東京23区のゴミは6割くらいがここに行くんですよ。」

15号埋立地は現在の江東区若洲、夢の島も当時のゴミの埋め立て地というイメージは全く無くなりましたね。東京都の人口は令和4年3月1日現在で1397万人(東京都のホームページより)。ゴミの多さの例えも“霞が関ビル”…!半世紀の歴史を感じます。

番組ではこのあと下水処理場を例に、『活性汚泥』と呼ばれる微生物を含んだ泥が汚れた水をキレイにする秘密を探ります。

バクテリアが泥の中の“ゴミ”を食べ、そのバクテリアをツリガネムシやワムシといった微生物が食べ、自然の循環でキレイにしてくれるという浄化作用を“拡大の目”で検証します。

自然の中で出来る“ゴミ”である堆肥のすばらしい力を当時の『専売公社』の試験場でタバコの苗木を使って実験したり…

東京タワーの地上120メートルの地点で空気の中に含まれる“ゴミ”を採取して調べたり…

番組後半のテーマは自然循環とは全く関係のない“ゴミ”、合成樹脂に注目します。
埋めても土にならず、焼くと有毒なガスが出てしまうやっかいなゴミ。現在もあらためて注目されている、いわゆる“プラスチックごみ”です。

塩化ビニールなどを焼いても有毒なガスが出ない焼却炉を開発しようという取り組みを紹介していました。

「ゴミがあって、バクテリアや微生物がゴミに付いて食べる、それを大きい動物が食べていって自然に調和がとれる。汚いゴミのようだけど、そのゴミがもとで自然がきれいに保たれている。ところがその流れに乗らないゴミが出てきた。それを何とかしなければならない。出来れば自然循環に乗せてもらうような工夫をしてほしいですね。」

放送から半世紀、“プラスチックごみ”を減らそうとする昨今の取り組みをみると、当時から問題意識があったことにようやく手が付けられたという感慨を持ちました。

さて眼科医の安達京さんから、お父さまがかつて録画した大量のビデオテープを提供いただき貴重な発掘につながった『四つの目』。発掘された他の回のテーマはこちら!

「潮だまり」「鉄」「沼のほとり」「ふぐ」「こけ」
「花粉」「太陽」「へちま」「洞窟の生物」「自転車」
「かに」「バイオリン」「蛾(が)」「こおろぎ」「ジェット機」
「紙」「砂」「こわす」「うず」「ねずみ」
「こま」「たまご」「煙」「いと」「うま」
「ひらめとかれい」「水鳥」「豆」「春をまつ」「バドミントン<最終回>」

今回ご紹介した「ごみ」の1回だけを見ても多くの発見がありました。1970年代はじめの科学の世界はどうだったのか?タイムマシンでのぞき見るような楽しみがありますよね!

番組公開ライブラリーなどで皆さんにお楽しみいただけるよう検討を進めたいと思います。
また『四つの目』以外の“メガ発掘”からの発掘番組の分析も進めています。新しい情報がありましたら随時ご報告いたします!

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