No.307
2022.03.18
情報番組
テレビ界のレジェンド!山川静夫アナ登場
紅白歌合戦をはじめ様々なNHKの番組で司会を務め3000本以上の番組に出演したNHKの看板アナウンサーのひとり、山川静夫さん。これまで山川さんご自身が録画した貴重な番組を100本以上提供いただきました!
今回は『ひるまえほっと』(関東甲信越の放送)の「発掘!お宝番組」のコーナーで、貴重な発掘映像に隠されたエピソードなどを山川さんにうかがいました!
大先輩の登場に古谷敏郎アナ「楽しみにしていました!」
「(ひるまえほっとは)いつも茶の間で拝見してるんですよ。」
まずご覧いただいた山川さんからの発掘番組は科学バラエティーの元祖『ウルトラアイ』。1978年から8年間、総合テレビで毎週月曜日の夜に放送。注目を集めたのは、山川さんが自らの体を張って行った実験でした。
ある時はスズメバチ対策の防護服の性能を実証するため巣の撃退に挑戦。山川さん自ら、巣を取り去ることに成功!
さらに“人間は凧(たこ)で飛べるのか”といった、あまりにも危険な実験には身代わりの『山川人形』を作って実証実験を行うなど、お茶の間の話題となりました。
「とにかく母親は(テレビを見て)『静夫ちゃん、やめなさいよ』って、心配して。でも悪ふざけじゃなくて、真実を知ろうという一心で実験台になったんです。」
そうした奇想天外な実験を生み出す『ウルトラアイ』には、制作スタッフの原則があったそうです。
「一つの企画番組を作る時に、最初はだいたい“四角く”なるんですけどね、放送の時“丸く”なっちゃうんです、角が取れて。だから『何を言っても笑わない』『やってみなきゃ分からない』『みんなでやれば怖くない』、カメラマンも音声さんも演出もプロデューサーも出演者も全部一緒になってやるということです。」
◆実証精神にあふれた『ウルトラアイ』!
タバコの煙がかかったおすしには、どんな変化があるのか?おすし屋さんで山川さんが注文したトロに、隣にいたお客さんのタバコの煙がかかっているのを見て思いついた疑問。 どこでもタバコが吸えた時代に、禁煙の必要性を呼びかけた番組です。
当時最新鋭の電子顕微鏡で見てもらうと案の定、タバコから出るタールがまるでウロコのようにべったりと付着していました。
さらにウルトラアイの科学的検証は海の奧深くまで…。山川さんは深海探査用の潜水艇で、鹿児島・喜界島沖の200メートルの海底に潜りました。
この潜水艇、撮影スタッフは1人しか乗れず、山川さん自身がカメラを回しました。深海に生息するという生きた赤サンゴを撮影することは、ほとんどできなかった時代。この調査によって撮影できた貴重な映像となりました。
この『ウルトラアイ』、8年間で295回が放送されましたが1本だけまだ映像が発掘されていません。それが1979年2月5日放送の「寒さ」。この回のビデオテープをお持ちの方がいらっしゃいましたらぜひともご連絡ください!
◆新番組請け負い人!『ひるのプレゼント』
「今日のお昼は何にしよう?今朝の残りのみそ汁か、いやいや今日も”ひるプレ“だと。」
テーマ曲がおなじみの『ひるのプレゼント』は1970年から20年余りにわたって放送されたお昼の看板番組。山川さんは新番組としてスタートした最初の1年間司会を担当。山川さんから提供いただいた、放送開始から3日目の貴重な映像をご覧いただきました。
「新しいことをやろう!っていう番組。ネクタイはしないでタートルネックで、当時はネクタイが当たり前だったんです。もう、あっちからこっちから攻撃です、鉄砲玉が飛んでくる。こんなことをやってはダメだって。その時にプロデューサーが、『山川さん、弾に当たって死ぬことは無い。塹壕(ざんごう)に入ってしばらくじっとしているんだ』と。その中で、俺がやったことは良かったかな?悪かったかな?と考えて、良かったと思ったら次の塹壕へ飛び込む。一歩一歩、ほふく前進で進め!絶対に退いてはいけないと。」
こちらは当時、山川さんが担当した新番組だけを集めた番組一覧。「ひるのプレゼント」はじめ、「歌謡グランドショー」などの歌番組、「お国自慢にしひがし」「邦楽百選」「トライ&トライ」など11本全部新番組です。(水色は番組が続いた期間、濃い青は山川さんが担当した期間)
「本当に幸せなことでした。私の領分じゃなくて、ディレクターやプロデューサーが考えて起用してくれたありがたさがありました。山川って何か新しいことやるのかなって思ってくれたのかも。」
◆山川さんのもう一つの顔、伝統芸能!
「今日からこの番組の司会を担当させていただくことになりました。私は邦楽の知識は非常に乏しいのでございますけれども、学生時代からとても芝居やら日本舞踊が大好きでございまして。」
山川さんが合わせて10年以上司会を務めた「邦楽まわり舞台」と「邦楽百選」は出演者へのインタビューも見どころでした。時には、ちょっとしたお芝居を交えながらの演出も。
山川さん「おっ、そういうおめえは三浦屋の布美子じゃあ?」
三浦布美子さん「そんなことセリフに書いてませんよ!」
さらにミニチュアの三味線をプレゼントされた山川さん…。
山川さん「これ私に?」
三浦さん「ええ」
山川さん「かわいいですね。普通三味線は猫の皮ですよね~、これは?」
三浦さん「これがまた良い皮なの、最高、ヤ・マ・カ・ワ!」
古谷アナ「山川さん、私も古典芸能の番組を担当させていただきましたけど、こんなリアクションしたことないですよ!」
山川さん「とにかく、かたい番組をやわらかく見せたいということでバカなことやってるんですが…。でもやっぱり私は歌舞伎が好きで一生懸命学生時代から見てたから本当に役立ったんです。深いんです芸の世界は。長い時間かけないといけないんです。デジタルの時代だけど、芸の世界はデジタルはダメ。早い、便利っていうのはダメです、芸の世界ではね。長い年月をかけるっていうことの貴重さ、これが良いと思うんです。」
古谷アナ「これだけたくさんの録画を良く残してくださいましたね。」
山川さん「家内が全部ウチでもって録画しておいてくれたんです。いま感謝ですね。これを見て、これはダメだな、こんなことやっちゃだめだ、よしこうしよう。古い映像を見て、それを反省して次に移ったんですね。それはホントに役に立ちました。」
「こういう言葉を書いてきました。“稽古照今(けいこしょうこん)”稽古というのは古いことをよく考えるということです。古いことをよく考えて今に照らす。私が大事にしてきた言葉です。放送も古いビデオを見て、これは悪い、これは良いな…と思う時にそれをかみしめて今の放送に生かす。この精神が一番アーカイブスに合うと思います。」
90歳を前にしてますますお元気な山川静夫さん、貴重なお話とともに最後にアーカイブスへのメッセージまでいただき本当にありがとうございました!
ちなみに山川さんがどうしても発掘してほしい番組は、1970(昭和45)年8月の『ひるのプレゼント』で「ひばりジョッキー」と題してお送りした一週間だそうです。もし録画ビデオをお持ちの方は情報をお寄せください!