発掘ニュース

No.064

2015.07.10

趣味/教育

19歳の河島英五さんを発掘!

48歳の若さでこの世を去った歌手の河島英五さん。

今回の発掘は今から44年前の1971(昭和46)年、河島さんがデビュー前にNHKに出演して歌を披露、思いを語った超貴重な映像です!

その番組は教育テレビの「若い広場」。前回の『マイブック』もそうでしたが、10代の若者に向けてメッセージを送り続け、支持を得ていた“骨太”な番組でした。
番組関係者から映像が提供された、この日の放送。タイトルの後、女性の声でまず語りかけてきます。

“あなたにとって歩くことはどういう意味を持ちますか?”
“何故あなたはこのテレビを見ているのですか?”
“あなたにとって一番みじめな状態とはなんですか?”
“あなたは辞書を読んだことがありますか?”
“あなたは鏡を見るのが好きですか?”
“あなたはお母さんの誕生日がいつか知っていますか?”
“もしあなたがあなたでないとしたら、誰であればいいと思いますか?”
“あなたは木になれたらいいと思ったことはありますか?”

そしてサブタイトル「模索する青春は…」。
様々な世界で“模索”を続ける若者たちが次々に登場し語ります。

そのトップバッターが河島英五さん、当時19歳!

ギターのアップ!演奏が始まります、曲は「足並みをそろえて」。

河島さんが高校生時代に結成した『ホモ・サピエンス』というフォークグループです。
歌うのも、作詞作曲を手がけたのもリーダーの河島英五さん。

曲に続いて、大学生たちに囲まれての座談会。中心になって質問をするのは、のちに精神科医となり作詞家、ミュージシャンとしても知られる北山修さん。

「どういう時に作るの?歌」

「パッと何かを見て、感じて、気にとめてできる、それはわりと“情緒的”な曲。“思想的”というか、自分の価値感みたいなものがあって、ため込むでしょ。人間なんちゅうのはコロコロコロコロ皮を脱いでいくでしょ。皮を脱ぐ瞬間に歌が出来るわけですよね。皮を脱ぐまでにね、僕は今、皮を脱がなあかん。今の僕の価値感みたいな考え方いうのは捨てなあかん。」

「そういうごっついムラムラいうのが出てくるわけです。その間、歌なんか全然出来へんのです。ある瞬間に…自分が思っていたものが吐き出される。…その時に、何か脱げるような気がして、どんどん歌をため込んで出来ていく…。」

「何曲ぐらいできた?」
「こちゃこちゃ、いっぱい入れたら中学2年くらいから、150~60曲くらい。」

「あなたにとって一番好きなものは?」
「歌と、…名前出してもいいですか?恋人ですね、いま交際している。それと、お父さん、お母さん、兄弟たちです。それからもっと広がっていったら、ここにおる人も、みんな好きですね。」

「人間が好きなの?」
「誰でも好き。」

「嫌いな人間もいるでしょ?」
「いないですね。…この人間は嫌いやと決められへんのです。この人間のここは嫌いやけどあそこは好きやから、相対的にみると好きなのか嫌いなのか、どっちや?いわれても分かりまへん。」

「大学進学をやめた訳は?」
「行きたなかったからですね。…大学行くのに受験勉強はしんどいようで、僕は一番楽だと思うんです。やれっていわれたら、僕、勉強嫌いちゃうからね。…社会的っていうか周りの環境も勉強せえって言うてるでしょ。僕もしたい、なら一つも苦労せえへんでしょ。僕はなんていうか、もの凄い“苦労”をやってみたいという感じがありますね。」

「大人たちに文句はない?」
「昔の僕やったら、大人は子どもの敵である、乗り越えなあかんと…そういう風に僕は今見られへんのです。簡単に“大人に何かありますか?”と聞かれても言われへん。

…お母ちゃんから愛情を感じることがあるでしょ。その時、僕はお母ちゃんを愛するわけです。それ以外に、例えば大学に行け行けっていうわけでしょ。そういうことに、僕は現に反発してるし。そやからいうて、そのことだけをとらえて、お母ちゃんは俺の敵なんや、邪魔もんやとは言われへん。」

「今一番やりたいことは?」
「今、こんな風に、ここにおっても面白ないんです。ギターを持って歌いたいなと。そして花園に帰って牧子さんに話をしたいなと…。」

『花園』というのは住んでいる場所、そして『牧子さん』は、その後、奥さまとなった恋人の名前…。とにかく“真っ直ぐ”に、自分が感じていることや考えていることを言葉にする河島英五さんです!

ちなみに…この日の「若い広場」、河島さんの後に登場する若者たちも、それぞれに“青春を模索”しながら生きている人たちでした。

“右翼”と呼ばれることに抵抗感を持ちながら活動を続ける青年や、高校も大学も結果的に中退し塾の講師をしている男性、在日朝鮮人2世で詩人の女性などなど…。

1970年代に入ったばかりの日本、若者たちは社会への反抗心や大人への苛立ちをそれぞれ持ちながら生きていた時代。魂の叫び声のような思いを番組の中で吐き出しています。

そうした若者の一人として語り、歌う河島英五さんは、いま見てもカッコイイです!
なんだか今夜は「酒と泪と男と女」が聞きたい気分です。

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