発掘ニュース

No.063

2015.07.03

情報番組

つかこうへい、伊丹十三、熱い言葉がよみがえる!

先週に引き続き、若き日の“あの人”が本音で語るインタビュー。教育テレビで放送した「若い広場」の人気コーナー『マイブック』(1978年~)の発掘です!

今回はこの2人にスポットを当てます!

『マイブック』は作家をはじめとした“超ビッグ”なゲストが、自分が影響を受けた本や大好きな一冊について4回にわたって語るコーナー。編集無しの7分間一本勝負、今でいうところの“ガチ”なインタビューでした!

聞き手は、当時まだ女子高生だった女優・斉藤とも子さん。率直かつ新鮮な感性でのインタビューは、数々の“巨匠”から本音を引き出していました!

「ひるまえほっと」(関東地域のみの放送)の『発掘!お宝番組』では、その斉藤とも子さんから提供いただいた映像とともに、ご本人に思い出を語っていただきました。今回はその中から、つかこうへいさんと伊丹十三さんの“お宝”映像、そして番組では紹介しきれなかったお話も公開いたします!

まずこちら、伊丹十三さん!

当時46歳の伊丹さんが選んだのは…
●「愛の幻想」福島 章・著
●「ものぐさ精神分析」岸田 秀・著
●「あなたにとって科学とは何か」柴谷 篤弘・著
●「ほんとうの女らしさとは」ジーン・マリン・著

なかでも一押しは「愛の幻想」を語る伊丹さんです!

「私、これを読んで、今まで恋愛とかに対してすごくロマンチックなのがあったんですけど、…夢が消えちゃうみたいで(笑)」

「あなたはもちろん恋をしたことあるでしょ??」
「はい」
「僕も初恋っていうのは30年くらい前ですけど…恋をしている時は、恋の気持ちっていうのは非常にはっきりしたものですよね。僕があなたを好きだとすれば、自分の心の中を探せば、これが恋だなっていう気持ちがはっきりあるでしょ。」

「じゃあ“愛”っていうのは一体何だ?っていうと、これが良く分からない…。恋してるのは確かに恋しているけど、じゃあ愛してるかっていわれると、自分の心の中を見てもこれが愛だなって感じが良く分からない…

好きだっていうことの延長上に愛がありそうなんだけど、どうも良く分からない。そういうことを考える上で、とっかかりとしては良い本だと思いますよ。」

さらに手書きのフリップを使っての解説!いまから35年以上前、映画監督の伊丹十三さんらしい“見せる”ことにこだわった演出です。

斉藤さんも「伊丹さんの回は面白かったんです!学校の先生みたいで。フリップで説明してると、本は全然分からないんですけど伊丹さんが話すとすごく分かりやすくて面白く、ずっとこういう授業なら聞いていたいなと。」

続いて、つかこうへいさん!

つかさんは当時32歳。斉藤とも子さんは、「私も演劇人なので、つかこうへいさんというと、あの時は雲の上の存在のような方で緊張していたんですが、すごく一生懸命いいお話をしてくださいました。」と振り返っています。

つかこうへいさんが選んだ4冊はこちら!

●「婦系図(おんなけいず)」泉 鏡花・著
●「ライ麦畑でつかまえて」サリンジャー・著
●「象」別役 実・著
●「国語入試問題集」

この4冊を見て、まず“えっ”と思うのは「国語入試問題集」!もちろん小説のタイトルなどではありません、その年の全国の大学入試問題を集めた一冊です。 なぜ…??つかさんはこう語っています。

「今、いっぱい本があるでしょう?どれ選んだら良いか、なかなか分かんないしね…。レコードなら、ちょっと聞いてダメだったらすぐ分かるけど、本の場合は最後まで読まなきゃいけないでしょ…。

そういう時、いちばんイイ文章ってなんだろう?って思うと、毎年発売されるその年度の“国語問題集”というふうに規定しちゃったんです。」

「僕が試験問題を作る人だったら、自分の好きな文章とか、したたかな文章、良い文章、奥の深そうな文章を持ってくると思うんだよね。そうしないとヘンな文章を試験問題にしちゃうと他の先生たちから軽蔑されたりするじゃない。こんなの好きなのか…って(笑)その年の良い文章の寄せ集めが“国語入試問題集”だと思って。

人との待ち合わせ時間なんかに1枚破ってポケットに入れておいて喫茶店なんかで解くんだよね。みんなハズレるけどね(笑)問題を作った人の性格まで想像したりして…」

「国語入試問題集」…ちょっと不思議な選択に、演出家の“こだわり”を感じました。

そして、つかさんの少年時代に影響を与えた思い出の一冊がこちらです!

「僕ね、これを好きな本だっていうのが恥ずかしくって…今まで隠してたんですけどね」と重大告白(?)から始まったインタビュー。

「僕の田舎、小さな町で筑豊本線のいちばん最後、終点の駅だったの。喫茶店も1軒か2軒しかない…喫茶店に入る人とか、映画を見る人とかが悪い人“不良”っていう感じの時代だったし町だった。だから本なんかも『世界名作全集』しか読んじゃいけない…みたいなね。こっちも、そういう度胸が無かったんだろうね。

小さな本屋さんで、これを勇気を出して買ったのね。何かの直感みたいなので…。読み終えて嬉しかった。こういう本を見つけられる自分がいた!って自信を持ったね、生き方に。」

サリンジャーが1951年に発表した小説『ライ麦畑でつかまえて』とは…
成績不振で3つ目の高校を退学になった主人公の男の子が、世間からの疎外感に悩み荒れた生活をしながら、自分の妹だけには“優しい人間になりたい”という夢を語ります。思春期の少年の揺れ動く心を描いた名作です。

「子供の頃、読んでいて“俺よりひねくれた奴がまだいるんだな”って、ひねくれ方がものすごく素敵だしね。

…俺のこの優しい気持ちを分かってくれみたいなのが強烈にあって、それが優しく出来ないもんだから…意地悪くなっちゃう。いつでも優しくする用意はあるのに、どうして僕を優しくさせてくれないんだという苛立ちみたいなのが僕らにピッタンコだったんですね。」

「とってもなんだか主人公の男の人の感覚がね、私もピッタリくる気がする。」
「同じなんだろうね。僕が17年前に読んだのと…。

今でも調子悪くなったりすると、これを読んだりしてね。大丈夫、まだ俺は感動できる…そういう本なんです。」

斉藤とも子さんの初々しい新鮮な感覚のインタビューが、つかこうへいさんの心の内を引き出した…そんな印象を受けました。

いかがですか?若き日の“あの人たち”の言葉は時代を超えて響いてきます。

まだまだ皆さんに見て聞いていただきたい『マイブック』がたくさんあります!
「ひるまえほっと」『発掘!お宝番組』では第2弾を9月に放送する予定です。お楽しみに!

思い出・コメントはこちら

ページTOP