番組のアンケート調査には、イヤイヤ期について数多くの意見が寄せられました。多くの方が、子どもの急なイヤイヤにどう接したらいいのか悩んでいます。「子どものイヤイヤ」の対応について、専門家と一緒にたっぷり解説していきます。
渡辺弥生(法政大学 文学部心理学科 教授)
鈴木八朗(くらき永田保育園 園長)
まだ言葉は話せないけど、これってイヤイヤ期?
もうすぐ1歳になる息子が、お世話をしようとするたびにイヤイヤをするようになり困っています。例えば、離乳食のときに、まだ言葉はしゃべれないのですが、「これはイヤ」と言いたいのか、手を広げて拒否のようなポーズをします。これはイヤイヤ期なのでしょうか。何がイヤなのか、そのときどきで違うので、「これがイヤだったんだ!」とびっくりするときもあります。
(お子さん11か月のママ・パパ)
イヤイヤ期は、自我が芽生えて自分の気持ちや欲求をぶつける時期
回答:渡辺弥生さん
「イヤ」という言葉はまだですが、映像を見ると「これはやめてください」のような身ぶり手ぶりがしっかりしていました。イヤイヤ期に入りかけているのかもしれませんね。イヤイヤ期は、1~2歳ぐらいで自我が芽生えはじめて、自分を認識できるようになり、自分の気持ちや欲求をぶつけようとする時期です。人生において重要な時期なのです。
自分の気持ちを理解できると解決法がわかってくる
回答:渡辺弥生さん
1~2歳になるとイメージの世界がでてきて、「こういうことをするつもり」「こういうことをしよう」といったプランのようなものがでてきます。そのプランがうまくできないと、葛藤をはじめて、騒いで、イヤイヤになるわけです。でも、徐々に自分の気持ちを理解して、解決法がわかってくるといわれています。
もどかしい思いが「イヤ」となって言動に表れている
回答:鈴木八朗さん
イヤイヤ期は、永遠のテーマですね。子どもたちは「今・ここ・これ」が大事ですが、大人は先を見通すため、子どもと大人でずれができてしまいます。子どもが大人にできる唯一の対抗手段が、「イヤ」と言うことぐらいだと感じています。
赤ちゃんのときには「おなかがすいた」「眠い」などを泣いて訴えますが、2歳ぐらいになると感情が複雑になってきます。泣くだけでは表現できないもどかしい思いがあるけど、まだ言葉が十分ではないので、「イヤ」という言葉で出てしまうように思います。
―― イヤイヤが落ち着くのは何歳ごろですか?
イヤイヤ期は2~3歳がピーク。4歳以降で落ち着いていく
回答:渡辺弥生さん
発達心理学では「何歳から何歳までがイヤイヤ期」のように定まっていませんが、おおよそ2~3歳がピークで、4歳ぐらいで落ち着いていきます。3~4歳になると、自己主張する力と、自分を抑える自己抑制力が別々に発達します。
3歳ごろから、我慢する自己抑制力が発達します。「こうしたいけど、我慢しなきゃいけない」と考えるようになるわけです。また、言葉で表現できるようになると、自分の気持ちを「イヤ」ではなく「こうしたかった」と言えるようになります。そうすると、いわゆるイヤイヤ期から卒業していくように思います。
なんでもイヤイヤ… 親はどう対応すればいい?
3人の子どもたちを育てています。上の2人のときはイヤイヤに困りませんでしたが、3人目の娘(2歳)は違うようです。朝の着替えのとき、靴を履くときなど、1日中なんでも「イヤイヤ」と言っています。
ある日、娘がスーパーで子ども用の小さなショッピングカートを引いていたとき、「こっちのカートに乗る?」と言って大人用のカートの子ども席に乗せようとすると、「イヤだ~!!」と店中に響き渡る声で叫びました。外出先では周りの目も気になります。
本人の気持ちを尊重したいので、3~5分ほど落ち着くまで待つなどしていますが、スムーズな日も、難しい日もあります。娘が納得するようにしたいけど、どう対応すればいいのでしょうか。
(お子さん14歳・9歳・2歳のママ・パパ)
子どもの心は、共感・応答すると落ち着く
回答:渡辺弥生さん
共感したり、応答したりして対応すると、子どもの心は落ち着きます。例えば「こういうことが嫌なんだね」「これが悔しかったんだね」「このカートを引きたかったんだね」などです。その上で余裕があれば「じゃあ、お母さんとこのカートで向こうへ行ってみようか」など、ワンクッション置いてみてください。子どもに、解決につながるような方法を教えていると、次第に自分でできるようになります。そんな種をまいておくのが大事かもしれません。
子どもが落ち着いているときに褒めたり・達成感を与えたりする
回答:渡辺弥生さん
親は、子どもが騒いだときを気にしがちですが、落ち着いているときにも目を向けてみましょう。子どもは親の注意を引きたいところがあります。落ち着いてできているときに「○○ちゃん、こういうことをやろうとして、できてすごいね」と褒めてみてください。子どもに達成感を持たせていると、あまり騒がなくなることがあります。
―― すくすくファミリーのみなさん、イヤイヤに効果的だった対応はありますか?
未来のことを伝えると、子どもは見通しが立ち安心できる
イヤイヤ期で親子の関係を作っている
―― あまりよくない声かけはありますか?
比較しない・質問しない・否定しない
泣き叫ぶほど激しいイヤイヤ、どう対応したらいいの?
長男(3歳)は、パパと遊ぶのが大好きです。ただ、休みの日にパパと遊べないとわかると、「イヤだ~!!」と泣き叫びます。納得がいかないとかんしゃくが多くなり、何を言ってもエスカレートするばかりです。たぶん、自分の意見を通したいという意志を表しているのだと思います。
長男のイヤイヤは、弟が生まれてから手に追えなくなりました。自分もみてほしいのか「全部やってほしい」となって、やりたくないイヤイヤが強くなったと思います。でも、自分でできることをやってあげるのは、成長の過程としていいのか悩んでいます。やさしくなだめようとしても、本人はあまり聞き入れません。「そういうのはダメだよ」と頭ごなしに叱ってしまうこともあり、難しく感じています。泣き叫ぶほど激しいイヤイヤは、どう対応すればいいですか?
(お子さん3歳・0歳のママ・パパ)
親子で一緒の方向を見られる関係性作りも重要
回答:鈴木八朗さん
下の子が生まれて、今まで親から注がれていた愛情が自分に向いていないと感じてしまうことがあります。下の子のようにかまってもらいたくて、赤ちゃんのようになることもあります。一方で、親の立場もわかる部分もあり、感情の出し方が複雑です。
そんなときは、親と子が一緒の方向を見ることが大事です。例えば、下の子が泣いて大変なとき「一緒に見てくれないかな」「手伝ってくれないかな」と伝えるのです。子どもは、そういう形で自分のことを見てくれている、信用してくれていると感じると思います。そういった関係性を作るのも1つの方法です。
―― 子どものかんしゃくが強くて、なかなか話を聞いてくれない場合は、どう対応すればいいですか?
親はヒートアップせずに気持ちを落ち着かせる
回答:渡辺弥生さん
子どものかんしゃくに親が巻き込まれて、「静かにしなさい!」「ダメでしょ!」とヒートアップしてしまうことがありますよね。まずはクールダウンして、気持ちを落ち着かせることが大事です。
「悔しい」などの"気持ち言葉"をかけて、自分から言えるよう促す
回答:渡辺弥生さん
子どもに、「悔しい・うれしい」などの"気持ち言葉"をシャワーのようにかけてみましょう。のちに、例えば4~5歳になったときに、自分から「自分は悔しいんだ」と言えように促すことも大事だと思います。
気持ち言葉は、ポジティブなことも、ネガティブなことも、何でも含みます。生きていく上ではネガティブな気持ちも大事なのです。また、ポジティブな気持ち言葉の「たのしい・うれしい」だけでなく、「心地いい・ハッピー」などのいろんな言葉をかけてボキャブラリーが増えると、それだけ心の世界が多色になります。
「気持ちの温度計」を取り入れてみる
回答:渡辺弥生さん
感情を表現するツールとして、「気持ちの温度計」があります。気持ちには、「うれしい」「ワクワク」「悲しい」などいろいろありますよね。「イライラ」でも、「モヤモヤ」「ドッカン」のように、気持ちに強弱があります。それを可視化しています。子どもの感情がどのあたりなのか一緒に見てみるなど、取り入れやすいと思います。
監修:法政大学 教授 渡辺弥生
できれば、気持ちの温度計が「ドッカン」に上がる前に、「このときだったら、6つ数えて落ち着こう」「ちょっと好きな絵を描いてみよう」といった対応を話すことができます。
また、大人自身も、ヒートアップして抑えられないような自分を客観的に見るなどができると思います。
専門家からのメッセージ
子どもの個性を理解し、大切にして接する
鈴木八朗さん
イヤイヤ期は、子どものキャラクターがしっかりしてくる時期です。大変ですが、子どもが大切にしたいことや、好きなことをわかろうとするマインドになれるといいですね。「そこが好きなんだね」といったことを、一生懸命に見つけてもらいたいなと思っています。
「イヤイヤ」を「イェイイェイ」と聞こえるように
渡辺弥生さん
親が子どもの安全基地になると、子どもの安心感になって、周りの世界にチャレンジしようという気持ちになります。とても大事な時期なのです。個人的には、イヤイヤ期という名前だけで、ネガティブな感情になりやすいように思います。だから、子どもの「イヤイヤ」を「イエイイエイ」と聞こえるようにして、「イエイイエイ期」としてみるのはどうでしょうか。
ここで、MCの2人が「イヤイヤ期」をポジティブにする言葉を考えてみました。
「ゆらゆら期」
「いやいや(^-^)期」
※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです