ベタベタしていて子どもは自立できるの? つい先回りして指示してしまうなど、子どもの成長に合わせた親子関係の悩みについて考えます。

専門家:
川田学(北海道大学大学院 准教授)

子どもにベタベタし過ぎ? 自立できるか心配…

2人姉妹を育てています。妹(3歳)はまだ甘えてくる時期ですが、その姿を見て長女(5歳)もママにベタベタしてきます。妹ばかりみていると、お姉ちゃんが「〇〇ちゃんばっかり」と言うので対応に困ります。トイレも「ママについてきてほしい」と言います。トイレは子どもの本音が聞けるような時間だと思いますが、本当は一人で行ってほしいと思っています。
私もついベタベタしてしまいますが、これから小学生になるのに、このままで自立できるのか心配です。いつから切り替えればいいのか、何を参考にすればいいのかわかりません。
(お子さん5歳・3歳のママ)

古坂大魔王さん(MC)

同じような悩みを持つ親は多いでしょうね。全く悪いことではないけど、いつまで続くのか考えると心配になりますよね。

―― すくすくファミリーのみなさんはいかがですか?

  • うちも女の子2人で、外出中に長女(5歳)からだっこをたくさんせがまれます。
  • 朝は「リビングまでだっこして~」と言われます。着替えや食事もしてほしいと言います。本人に食事を任せると、かなり時間がかかってしまうので、してあげてしまいます。

―― 川田さん、この心配についてどう思いますか?

スキンシップが必要な子とそうでもない子がいる。甘えるのを我慢しないように声かけを

回答:川田学さん

上の子が妹や弟の様子を見ていると、赤ちゃんのころが思い出されて、親と一緒にいたいと思うのはとても素直な気持ちです。親に向けて、その気持ちを素直に出せていることが大事だと思います。
ただ、どの程度甘えるかは個人差があり、スキンシップが必要な子、そうでもない子がいます。同じ年齢でも、子どもそれぞれに必要なときや程度が違うのです。自己表現を我慢する場合もあるので、「気持ちを出していいんだよ」と伝えて、気持ちを受け止めることが必要な子もいます。子どもにとって「甘え」は大事です。特にスキンシップは大切です。

次女(6歳)の要望がとても多くて、「納豆を混ぜてほしい」など、細かい指示がずっと続きます。自分でできるけどやってほしいと言うことも多いです。でも、子どもが4人いるので、すべてを満たしてあげるのは難しいのですが、要求を全部聞いてあげたほうがいいのでしょうか。
(お子さん8歳・6歳・2歳・1歳2か月のママ)

できる範囲で要求に応えて無理なときは説明する

回答:川田学さん

きょうだいが3人以上いると、いちばん上と下の子は目立ちやすいのですが、真ん中の子は少し抜けてしまうことがあります。真ん中の子は上の子や下の子と別のニーズがあるので、「6歳だから」と考えるより、その子が幸せを感じていることなら、できる範囲で要求に応えてあげてください。疲れていたり、無理なときは「また明日ね」といった説明をすれば伝わると思います。それでも、だだをこねるときがあるかもしれませんが、子ども自身が「だだをこねている自分」に気づいていると思います。

―― 「こうしたほうがいい、こうあるべき」ではないのですね。

「こうあるべき」ではなく、柔軟な対応を

回答:川田学さん

「こうあるべき」と考えるのは大人で、子どもはもっと柔軟です。大人がその柔軟さを学んだほうがよいことがたくさんあると思います。例えば、子どもが「今日は自分で全部やる!」と言ったのに、次の日はベタベタに甘えてくることもあります。それはとても素直な表現ではないでしょうか。

―― 要求に応え続けると、自立できなくなりませんか?

小学生の中学年くらいまでが親子関係の基本になる

回答:川田学さん

私は、今までに数千人の子どもをみてきましたが、親に甘えていたから自立できなかった子を知りません。小学生の中学年くらいまでは親子関係の基本になる大事な時期です。それまでベタベタしていてもいいと思います。

自立とは、全部自分でできるようになることではない

回答:川田学さん

「自立」を、何でも自分でできることだと考えがちですが、全部を自分でできるようになることではありません。大人でも、疲れたときは誰かに仕事を代わってもらうなど、いろんな人に頼りながら生活しています。子どもが、できないときや甘えたいときに、「〇〇をやって」と言ってきたら、親子でコミュニケーションをとりましょう。「全部自分で」とかたく考えるのではなく、柔軟に対応することが大事です。

子どもの自立は親子のコミュニケーションから。心の「ゴムまり」をやわらかくするように

回答:川田学さん

子どもの自立は親子のコミュニケーションからです。子どもの心にボールがあると考えてみてください。「〇〇でないといけない」「〇〇しなさい」といった対応をしていると、ボールが硬く・小さくなってしまいます。一方で「あっちをやってくれない?」「それだったらどう?」といったやりとりをすると、子どもの心のボールがもまれて、弾力性・伸縮性が出てきます。ゴムまりのように、押したり引いたり、もんであげたりしていると、やわらかい心になります。長い目で見れば、人生が楽しく過ごせるのではないかと思います。

すくすくファミリー

  • やれるとき・やれないときを、自分の状態に素直になっていいとのことで、肩の荷が下りた気がします。
  • 「これでいいのかな?」と心配してたので安心しました。
  • これからも、安心していっぱいスキンシップしていきたと思います。

川田学さん

スキンシップで、親の匂いをいっぱい嗅がせてあげてください。子どもが大きくなって家を出ても、家に帰ってきたときに匂いで安心すると思います。


子どもの自主性をどこまで尊重すればいいのでしょうか?

4月から小学生になる息子に、つい先回りしていろいろ言ってしまいます。「出かける前にトイレね」「ごはんの前に手を洗ってね」などです。以前は素直に聞いてくれたのですが、最近は「わかってるよ!」と言うなど、私に指図されることを嫌がります。子どもの自主性をどこまで尊重すればいいのでしょうか?
(お子さん6歳のママ)

お風呂や着替えなど、ふだんは自主性を大切にしています。でも、私が疲れていたりすると、親の都合でイライラすることがあります。例えば、子どもがなかなか着替えてくれず、家を出る時間を考えて焦ってしまいます。自主的にできるように、「どうすればできそう?」「どこまでならできる?」といった声をかけて、本人のやる気を引き出したいのですが、自分が忙しくてイライラしていると、なかなかできません。こんな関わり方でいいのでしょうか?
(お子さん5歳・1歳4か月のパパ)

親も人間だからイライラすることもある

回答:川田学さん

子どもが自主的にできるように声かけをする対応はよいと思います。親も人間なので、疲れていればイライラすることもあります。言い過ぎたと思ったら、子どもに「ごめん、言い過ぎだった」とあやまってみましょう。5歳ごろであれば「疲れているのかな」とわかると思います。

親子で楽しく過ごす時間を大事に

回答:川田学さん

親子でお互いにイライラがぶつかることがあります。でも、親子で遊んだり、お出かけしたり、それ以外の場面で一緒に楽しむ時間があるはずです。例えば、一緒にお風呂に入って、いろんなことで遊んで楽しい時間を過ごす。ときにはお風呂に来てくれないときもあるかもしれませんが、イライラするときと、そうでないときの子どもとの関係の充実を考えましょう。イライラしたり楽しい時間を過ごしたりしながら、だんだん手がかからなくなると思います。

いつも口うるさく言うのではなく必要なときに助言できるようにする

回答:川田学さん

親子のイライラは、子どもが大きくなっても、勉強や学校のことなど、いろんなことで起こると思います。いつも口うるさく言うのではなく、子どもが必要としているタイミングで助言できるようにしましょう。同じことを繰り返して言い続けると、子どもも聞き流すようになります。必ずしも、たくさん言えばいいわけではありません。大事な言葉が子どもの耳に届くように、言い過ぎないことも大事です。


約束を守らないとき罰を与えていいの? 自立心の成長を妨げる?

5歳の娘とテレビや動画の視聴するときのルールを決めています。ただ、約束を守らなかったとき、「次は見せないよ」といった罰を与えるのがいいのか悩んでいます。罰によって行動がコントロールされて、自分でルールを守ろうとする自立心の成長が妨げられないか気になります。
(お子さん5歳・1歳4か月のパパ)

罰を与えてコントロールするより親子でコミュニケーションを

回答:川田学さん

罰で外からコントロールするより、親子でコミュニケーションして、子どもなりに考えられるようにしましょう。子どもが「次は〇〇しよう」と決めて、親子で一緒に挑戦するようなやり方がよいと思います。おそらく、ご相談のパパも最初に親子で話し合ってルールを決めていると思いますが、それはとてもよいことです。

子どもの言い分を聞いた上でルールを変えることも必要

回答:川田学さん

「何分見る・休憩をどれぐらいとる」など、子どもの年齢に合わせてルールを決めていても、やってみるとその通りにできないことは起こります。成長にともない、子どもの楽しみ方も複雑になり、最初に決めたルールが合理的でなくなることもあります。
そんなときは、話し合ってルールを変えることも必要です。子どもには子どもなりの理由があるので、言い分を聞いてみてください。物事を自分で律するようになっていくと思います。また、親として「度が過ぎる」と感じたら話し合う機会を持ちましょう。そうやってコミュニケーションしながら、次に進んでいくことの繰り返しだと思います。


こどものホンネ
スマホを使うパパ・ママをどう思う?

子育てでわからないことは、子どもに直接聞いてみよう!

「こどものホンネ」のコーナーでは、SNSの子育て動画で人気の木下ゆーきさんがホンネハンターになって、「こどものホンネ」に迫ります。今回は「スマホを使うパパ・ママ」について、保育園、年長さんの子どもたちに聞いてきました!

―― パパとママは、スマホを持ってる?

  • (子どもたち)はい!

―― パパは、スマホで何してるの?

  • パパはゲームやってる。
  • ママはゲームしてない。

―― ママは何してるの?

  • ただピッピしてるだけ。
  • 電話とかポイント集め。
  • 友達に何か送ってる。

親のスマホについて聞いたところ、半数近くの8人がゲーム(パパ)、動画視聴が6人、ショッピングが2人でした。親が何をしているのか見ているんですね。

―― パパ・ママと話したいとき、スマホを使っていたらどうする?

  • 携帯がやり終わったら話す。
  • 集中しているから、今は声をかけないでおこうと思う。
  • 本当に集中しているときは、だまって見てる。お仕事とかじゃないかな。ママは仕事がたくさんたまってるの。
  • 話しかけるとスマホ見ながら聞いてくれる。しゃべってるから聞こえてると思う。

思った以上に子どもたちは親を思いやってくれているようですね。

―― もしスマホがあったら何をしてみたい?

  • おもちゃを買ったり、ゲームを買ったりしたい。大人だけいいなって思う。
  • 僕もそう思う。

ちなみに、子どもたちが「パパ・ママのスマホでいちばん好き」と答えたのは「写真」でした。

―― パパ・ママのスマホに写真は入ってる?

  • (子どもたち)はいってる!
  • 赤ちゃんのころの写真も入っている。ちっちゃいなと思った。
  • 赤ちゃんのときの写真を見て、すごくうれしかった。
  • ママのスマホだけ見たことある。まだ100回くらい撮ってほしい。自分の写真で満杯になってほしい。

令和の子どもたちは、親のスマホの写真で成長を実感するのかもしれません。子どもが大きくなるのはアッという間です。小さいころの写真をスマホに残しておきたいですね。


モヤモヤ子育て
子どもの行動にどう対応する?

「モヤモヤ子育て」のコーナーでは、みなさんから寄せられた「育児のモヤモヤ」について、みんなで考えていきます。今回のモヤモヤはこちら!

わが子がお気に入りのおもちゃは、「声に反応して話をするロボット」です。しばらくは楽しく遊んでいたのですが、「中がどうなっているのか知りたいから壊してみる!」と言い出してしまいました。どうしたらいいのでしょう。

すくすくファミリー

  • 子どもの好奇心を否定したくないので、「どうなってるんだろうね。元に戻らないかもしれないけど、どうする?もう1回買うのはなしよ」と言って受け止めると思います。でも、最初は「やめときな」と言うでしょうね。
  • ロボットに耳をあてて、「壊しちゃったら、ちゃんとお話しできなくなっちゃうから悲しいって言ってるよ」と伝えると思います。1回分解すると、なんでも壊してしまいそうなので、壊さない方向で考えます。
  • 天才かよ!と思って、「見てみようか」と言いたいところですが、高価なおもちゃだと話をそらすでしょうね。例えば、音に興味があるなら、「音について調べてみよう!」と言って、一緒に糸電話を作って実験してみるのもいいかもしれません。

古坂大魔王さん(MC)

「OK!壊そう」となってしまいそうです。もちろん高価すぎるものは考えますが、おもちゃであれば壊さなくても、ドライバーを使えば開いて中を見ることはできると思います。

鈴木あきえさん(MC)

値段と思い入れによりますが、どうにか壊さない方向に持って行くと思います。

要求の芯の部分をつかむ

回答:川田学さん

「糸電話」はすてきな展開だと思います。「気をそらす」という言い方もありますが、要求の芯の部分をつかめば、別の形で実現することができるわけです。分解することに興味があるのであれば、リサイクルショップなどで中古のラジオを入手して解体してみるのもいいでしょう。ドライバーなどを使って開けていくことは、とてもおもしろい経験になると思います。

子どもが発信してくるときは自主性を育むチャンス

回答:川田学さん

子どもの「壊したい」に、何の悪気もありません。素直な気持ちなのです。このように子どもが発信してくるときは、自主性を育むチャンスです。
ただ、そういった子どもの自主性の芽は、親にとって突拍子もなく、困った形で出てきます。例えば「今日から自分で着替えます」のように、親にとって都合のよい形では出てきません。そこで、親が「困るからダメ」と言うより、どうやったら可能になるのか一緒に考えたりすることで、子どもの自主性が育っていくと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです