「これってうちの子だけなの?」と思ってしまう、なぜか繰り返し行うヘンテコリンな行動を「〇〇期」と題して、その意味や対策などを考えます。

専門家・ゲスト:
遠藤利彦(東京大学大学院 教授/発達心理学)
すみれ(女優・歌手/1児のママ)

I can't stop! ボタンぽちぽち期

1歳の娘は、電気のスイッチやエレベーターのボタンを押したがります。「だっこで連れてって!」とせがまれて、押しはじめるとしばらく居座るほどです。とにかく押したいようです。
(お子さん7歳・4歳・1歳のご家族)

すくすくファミリー

  • うちの子もエレベーターのボタンを押したがります。
  • おむつ替えで多目的トイレを利用したとき、私も用を足そうと便座に座っていたら、子どもが扉のボタンを押しそうになって焦りました。

―― 遠藤さん、このポチポチ期で困っている方も多いようですが、いかがでしょう?

遊びながら仮説を立てて実験している

回答:遠藤利彦さん

子どもは、遊びながら、科学者のように仮説を立てて実験しています。いろいろなものを、自分で確かめているわけです。また、子どもは、そんなときにとても頭を使っています。当然、頭を使えば使うほど、地頭も鍛えられます。「困ったことをしている」ではなく、「遊ぶことで、とても大切な経験をしている」と考えてみましょう。

古坂大魔王さん(MC)

このことは、育児をしていない人たちにも知ってもらいたいですね。例えば、子どもがエレベーターのボタンを押すと、まわりの人が怒るのではないかと思ってしまいます。「実験しているんだな」と思ってもらえると助かりますね。

すみれさん

うちの子も、まさに実験中です。とにかく、なんでもものを見ずに投げる「ノールック・ポイポイ期」です。

好奇心が続く状態が、子どもの発達にいい

遠藤利彦さん

その「ポイポイ期」は、何度も同じ動きを繰り返して、自分の体の動かし方を確かめていると思います。実験の内容は、年齢に応じてより高度なものになっていくでしょう。そのように好奇心が続く状態が、子どもの発達に好ましいと考えてください。


娘のポチポチ期ですが、パパが手作りしたおもちゃで落ち着いてきました。いろんなボタンをひとまとめにしたおもちゃで遊んでもらったんです。おそらく押すことにある程度満足したのではないかと思います。
(お子さん7歳・4歳・1歳のご家族)

鈴木あきえさん(MC)

いろんなボタンがあって本格的ですね。親がわが子のいちばんの専門家であれば、子どもにフィットするおもちゃを作れるのは自分たちかもしれませんね。


深夜の全裸期

長女が2~3歳のころ、深夜、寝ている間に全裸になっていました。冬でも関係なく、気づくと生まれたままの状態で、「ちょっと前まで服を着てたのに、どうして裸なの?」と思っていました。かぜも心配なので、気づいては服を着せるようなことを、毎晩繰り返していました。
(お子さん5歳・3歳・1歳のご家族)

すみれさん

私も子どものころ、寝ているとき全裸になってしまっていました。7歳ぐらいのときでした。ちょうど日本からハワイに引っ越したころで、母には「慣れてない環境で、少し不思議な行動をしたのかもしれないね」と言われました。ストレスもあったと思います。

―― 遠藤さん、これはどういう状況なのでしょう?

眠りが深くなると、わずらわしい衣類を取っ払いたい感覚になることも

回答:遠藤利彦さん

個人差が大きいと思います。そのようなクセがある子もいれば、ストレスから突然はじまる場合もあります。ただ多くは、生まれたときにまとっているわけではない衣類を、わずらわしいと感じているのでしょう。特に眠りが深くなると、嫌なものを取り払いたい感覚になって、脱いでしまっていると思います。例えば、気心地のいいパジャマを選ぶと変化があるかもしれません。


くちびるからマーライオン期

娘と息子に、飲んだものをマーライオンのように吹き出す時期がありました。「やめて!」と言えば言うほど、ニヤニヤしてやめてくれません。お茶だとシミになってしまうので、その時期は水しか飲ませませんでした。
(お子さん5歳・3歳・1歳のご家族)

鈴木あきえさん(MC)

わが家でもありましたよ。1年前の自分が激しくうなずいてます。吹き出すのが楽しいのかもしれませんね。その時期は外食どころではありませんでした。

―― 遠藤さん、これはどういう行動なのでしょうか?

周りの人たちの反応が楽しいと感じている

回答:遠藤利彦さん

きっと遊びの一環として楽しんでいるのでしょう。最初は飲んでいた水が口から出てしまっただけだったと思います。でも、まわりの人たちが騒いで楽しいと感じて、それから続けてしまうこともあります。例えば、大好きな飲み物なら、吹き出さないで飲んでくれるかもしれませんね。


言いつけちゃうぞ! ヘビーローテーション期

4歳の男の子を育てています。最近、「おばあちゃんに言うからね!」「先生に言うからね!」と言ってくるようになりました。例えば、くすぐっていると、少し嫌なのか、「言いつけちゃうぞ」と言ってきます。一緒に10分遊んでいたら、10回以上言うこともあります。誰にでも、どこでも言うので困っています。
(前田敦子さん 俳優/1児のママ)

すくすくファミリー

  • お母さんの口ぐせをまねているかもしれませんね。
  • 「ママの頑張っていることも、おばあちゃんに言って」とお願いするといいかもしれません。

―― 遠藤さん、この行動にどんな意味があるのでしょうか?

自分にとって嫌なことを立場が上の人に叱ってもらおうとしている

回答:遠藤利彦さん

3~5歳の幼児期は、善悪への関心が強くなる時期です。自分より立場が上の人に褒められたり、叱られたりすることで、いい・悪いの判断をしていることもあります。一方で、自分にとって嫌なことがあると、立場が上の人に相手を叱ってもらって、嫌なことをなくそうとします。
親としてあまり言ってほしくないことは、いい・悪いの理屈や理由を少しずつ説明してあげるとよいでしょう。


目と目があったら、くっつき虫期

1歳になる娘は、目と目が合った瞬間に両手をあげて「だっこして」のポーズをとります。私がトイレに行こうとしても、ずっとついてきます。だっこをおねだりしたり、足にしがみついてきたり、ひざの上に座ったり、1日のうちの8割ぐらいはくっついているかもしれません。
(お子さん5歳・1歳のご家族)

すくすくファミリー

  • うちの子もくっつき虫期です。特に夜の寝かしつけのときはくっつきまくりです。
  • パパが好きすぎて、パパのあとをトイレの中やおふろでもどこでもついていきます。

―― 遠藤さん、どうしてくっつきたくなるのでしょうか?

信頼のできる人にくっついて安心感に浸りたい

回答:遠藤利彦さん

子どもは、怖くて不安なときに信頼のできる人にくっついて、「もう大丈夫だ」という安心感に浸りたいものです。ハイハイができて、歩けるようになると、それまでは待つことしかできなかったのに自分からくっついていけます。親がどこかに行こうとすると、すぐに追いかけることができる。ただ、どれぐらい強く表れるのかは個人差があります。くっついて回ることが激しい場合もあります。

歩きはじめると楽しい・見たいという欲求が広がっていくが、周りに誰もいないと不安になる

回答:遠藤利彦さん

歩きはじめた子どもは、世界と恋をして、あれも楽しい・あれも見たいという欲求が広がっています。でも、歩いていたときに、振り返るとお母さん・お父さんがいないと突然不安になります。そんな気持ちが強く経験された場合、くっつく行動がみられるといわれています。お母さん・お父さんが信頼できる人だから、基地や避難所にもなるのです。

―― 「くっつき虫期」を卒業するには、どのようにすればよいでしょう?

子どもが見通しを立てられるように

回答:遠藤利彦さん

まず、子どもと離れるときは、いつ帰ってくるのか声かけをしましょう。その約束が一貫して守られると、子どもは見通しを持てるようになります。そこで、行き当たりばったりの行動をしてしまうと、見通しを立てることができません。行動をパターン化・ルーティン化していくことが重要です。


ちがうちがう、食べ物ツンデレ期

上の子が納豆にはまった時期があって、毎日のように食べていました。でも、ある日突然ブームが終わって、「納豆はいらない」と言ってきました。冷蔵庫には納豆のストックがたくさん残されて、どうしたらいいのかと思いました。
(お子さん2歳・1歳のご家族)

―― 遠藤さん、どうしてこんな行動をしてしまうのでしょうか?

新しい食べ物に出会い、関心を奪われた状態

回答:遠藤利彦さん

母乳やミルクから離乳食に変わって自分で食べることができるようになると、食のバリエーションが増えていきます。当然、今まで知らなかったおいしいものに出会うこともあります。それまで好きだったものが嫌いになったわけではなく、おいしいものに出会って、関心が一気に移ってしまったのでしょう。
子ども固有の味の好みは、乳幼児期にだいたい決まるといわれています。一度好きになった食べ物は、どこかの段階で再びおいしいと感じることもよくあることです。今は食べなくても、全く気にする必要はないと思います。


こんなにエブリデー 同じパンツ離したくない期

娘は、同じような柄のリボンのパンツがとても好きな時期がありました。ある日、遊園地におでかけしようと準備していたら、洗濯で好きなパンツがなくて大騒ぎになったくらいです。
(お子さん5歳・1歳のご家族)

番組のアンケートでも、「同じスカートしか履かない時期がありました。ズボンの上からスカートを履いて幼稚園に行くことも。そのころの写真の服装が全部同じです」というエピソードが届いています。

―― 遠藤さん、この行動の裏にはどんな心理があるんですか?

いつも同じが、子どもの安心感になる

回答:遠藤利彦さん

0~2歳ぐらいの子は、お気に入りのものを持つことが多いですよね。毛布やタオルなどです。少し上の年齢だと、キャラクターがプリントされたパジャマなどもあります。毎日使い続けていると、洗濯しても微妙な肌触りや匂いが特別なものになります。いつも同じものを使っていることが、子どもの安心感になるのです。
いつもと同じパンツでお出かけすると、安心して1日遊んで楽しくいられると考えてください。特別に心配することはありません。


娘がどうしてもリボンのパンツを履きたがるので、パパが「リボンのパンツを履くためのお約束」を作りました。

履くときは「お菓子やおもちゃをねだらない」「幼稚園でおしっこできるようにする」などです。おかげで、いろいろなことができるようになりました。今は別のパンツも履けるようになっています。
(お子さん5歳・1歳のご家族)

遠藤利彦さん

とてもよい方法ですね。ある程度の年齢になると、きちんと説明して子どもが納得するような状況をつくってあげるのがいいと思います。


すみれさん

本当に、いろいろな「〇〇期」があるのだと思いました。まだ息子が小さいのでたどり着いていないことも多いのですが、これから「〇〇期」が来ると予想しながら話を聞けて、とても参考になりました。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです