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「身を守る力を 頼る勇気を」痴漢撲滅へ 高校生のメッセージとは東京 港区

  • 2024年2月2日

「受験シーズン」真っ盛りの2月、懸念されているのが受験生を狙った痴漢です。少しでも被害を減らすため、都内の高校生が痴漢撲滅の啓発活動をみずから企画、実施しました。そんな高校生の取り組みを取材しました。
首都圏ネットワークでの放送から記事にしました。
放送はNHKプラスでも配信しています。(2024年2月8日 午後7時まで)

(首都圏局/記者 眞野敏幸)

企画したのは痴漢被害を受けたという高校生

痴漢撲滅の啓発活動を企画したのは、都立芝商業高校1年の「ののさん」です。高校入学から半年余りで、通学に使う電車で2度の痴漢被害にあったといいます。

ののさん
「初めて痴漢被害を受けたときは、何?何?って感じで動けなくて。声を出すこともできず、ずっと固まっていました。何もせずにそのまま電車を降りて学校に行くとなったときに、すごく後悔したんです。捕まえられなかったことで、また別の子が同じ被害にあったらとか、被害が増えたらどうしようと思いました」

しかも、ののさんだけでなく、同級生の友人たちも痴漢被害にあっていたといいます。
周囲の状況や自身の被害から、痴漢をなくす活動ができないか悩んでいたさなか、去年(2023年)12月に開かれた、港区の武井雅昭区長と話す会に参加。思いを直接、区長に伝えました。

ののさん

私も、私の友達も痴漢にあったことがあるので、高校生のアイデアで痴漢を防ぐ取り組みをやってみたいです。

 区長は、その熱意に動かされたといいます。

武井区長

勇気を出して提案してくれたと思います。本当に大事な社会的な問題ですから、区としても取り組む必要があると感じました。

身を守る力を 頼る勇気を

こうして動き出したプロジェクト。去年12月から、取り組みに協力してくれる友人や区の職員たちと打ち合わせを重ね、受験シーズンの2月1日に、JRの駅で痴漢撲滅を呼びかける啓発グッズを配布することを決めました。電車内での痴漢被害が多いことや、受験生たちを痴漢から守ろうとの思いからでした。
啓発グッズは、受け取った人に長期間手元に置いてもらえるようにウェットティッシュにしました。そして、表に自分たちが考えたメッセージを貼り付けました。

「身を守る力を。頼る勇気を。」

貼り付けたメッセージは、ののさんが2回目の被害にあった際、隣にいた男性に助けられたという経験から考えたものでした。
満員電車で身動きがとれない中で、制服のポケットからスマートフォンを取り出し、助けを求める文字を打ったところ、気づいてくれた人がいたというのです。

ののさん
「助けを求めるときは、すごい足が震えましたね。捕まえるか尋ねてくれましたが、逃げられてしまいました。でも、助けてくれた方は、そのあともずっと付き添ってくれて、最寄り駅まで送ってくれました。気付いてくれて安心しましたし、本当にありがたかったです」

グッズのデザインは、友人と2人で考えました。色は、注意・注目の意味を持ち、目立つ黄色に統一。さらに、痴漢の被害を周囲に訴えることが出来る警視庁の防犯アプリ「Digi Police」(デジポリス)のQRコードも貼り付けました。

友人の男子生徒
「痴漢被害を受けている人に頼られたときに行動に移せたり、自身が被害を受けたとしても頼ることを堂々とためらわずにできることが大事だと思います」

実現した啓発活動

そして迎えた啓発活動初日。JR浜松町駅前で行われた活動には、生徒のほか、警察や鉄道会社の職員らおよそ40人が参加しました。その中には、武井区長の姿もありました。

武井区長

きょうの呼びかけに1人でも多くの方に賛同していただき、痴漢のない、そういった社会をつくって参りたいと思います。

この日は痴漢撲滅の思いを込めて、グッズ1500セットを手渡すことができました。

ののさん
「加害者側には本当にやらないでほしいし、見ている人は、気づいたら助ける勇気をもってちゃんと行動してほしい」

取材後記

ののさんの周辺では、女子生徒だけでなく男子生徒の中にも被害を受けたという声があったそうで、誰にとっても人ごとではない問題だと感じました。
また、ある都内の私立高校では、1、2年生の生徒を対象に痴漢被害に関するアンケート調査を行ったところ、女子生徒の4人に1人が被害にあったことがあると回答していました。都内の高校生にとって、痴漢被害は決して珍しいものではないのだと感じます。私自身、大人として何ができるかを考えさせられました。
高校生たち自身がこうした活動を通じて泣き寝入りしないという意思を示すのと同時に、私たち1人ひとりが、この問題を自分事として考えていくことも痴漢被害を防ぐためには重要ではないかと思いました。

  • 眞野敏幸

    首都圏局 記者

    眞野敏幸

    新聞記者を経験し、2019年入局。札幌局を経て、首都圏局。遊軍記者として行政・事件事故を担当。

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