家族の世話などを日常的に行う子どもたち、「ヤングケアラー」。
勉強や睡眠の時間がとれないなど、進路や生活に影響が出るケースもあります。
一方で、本人たちに自覚がなかったり周りに相談しにくかったりして、ヤングケアラーの存在に気づくことが難しい、という課題もあります。
こうした中、子どもたちが気軽に立ち寄れる居場所を作り、支援が必要と思われる子がいれば行政につなげていこう。こんな取り組みが、茨城県で始まっています。
(水戸放送局/記者 國友真理子)
茨城県阿見町で開かれている無料の塾。週に1、2回、大学生のボランティアが子どもたちに勉強を教えています。
阿見町でフードバンクなどの取り組みをしている団体の代表、清水直美さんが、3年前、地域に子どもたちの居場所を作りたいと始めました。
地域全体で、子どもたちを真ん中にするという取り組みをしていきたい。
今では高校生までおよそ40人の子どもたちが、それぞれの都合に合わせてやってきます。
活動を続けるうちに、清水さんは、集まる子どもたちの中に、日常的に家族の世話をしている子どもがいることに気づきました。
きょうだいが多いという、こちらの高校生は。
高校生
「親やおばあちゃんも家のことや仕事で忙しいので、この塾で教えてもらうほうが、効率がいいというか、やりやすい。私は小さい子3人をお風呂に入れたり、あとは泣いている時にたまにだっこしてあげたりします」
自分をヤングケアラーだと思うか、尋ねてみました。
高校生
「ヤングケアラーではないです。そこまで全部押しつけられているわけではない。親やおばあちゃんは、自分たちのためにいろいろやってくれているので」
多くの子どもたちを見てきた、そしてみずからも複雑な事情がある家庭で育ったという清水さん。
子どもたちにも家庭にもそれぞれの事情があり、本人が気にしていないケースもあれば、ヤングケアラーとして支援が必要だと思われるケースもあるため発見や支援は簡単ではありませんが、だからこそ、子どもたちが集まる場を大切にしたいと考えています。
清水直美さん
「やっぱり自分も、言いだせなかった。家のことは言っちゃいけないことだっていう雰囲気だったから。だから言わないで、いつも明るくしてきた。そういう自分がいたからこそ、こういった支援が必要だと思っています。ちょっと苦しいときに手を差し伸べてくれたり声をかけてくれたりっていうのを、子どもたちは望んでいるのかなって」
行政も、清水さんたちのような子どもの居場所を作る取り組みに期待を寄せています。
去年、茨城県が県内のヤングケアラーの実態を把握するために行った調査では、ヤングケアラーにあたる子どもたちのうち「誰かに相談したことがある」と答えたのは半数以下で、把握の難しさが課題となりました。
このため、茨城県がことし3月に初めて策定したヤングケアラーなどの支援計画の中でもヤングケアラーを発見する場として、子ども食堂や学習支援の場などが挙げられています。
今後はヤングケアラーへの対応について情報を提供したり、運営の相談に乗ったりと、連携を深めていきたいとしています。
茨城県福祉政策課 小澤正明 副参事
「ヤングケアラーは社会の中で孤立しやすいため、子ども食堂などのふだんの活動の中で、安心できる居場所を作ることをお願い・期待したい。ふだんそういった活動に携わる方々にヤングケアラーのことを知ってもらい、ヤングケアラーと思われる子を把握した場合には、福祉の相談窓口を頼りにするように、橋渡しなどをお願いできればと考えている」
取材を通じて改めて感じたのが、「発見」の難しさでした。
日常的に家族の世話をしていても、子ども本人の生活などに影響が出るほどではないというケースもあれば、何らかの支援が必要な状況なのに、本人が気づいていないケースもあります。
もしも目の前にヤングケアラーと思われる子どもがいたらどう接すればいいのか、1人の大人として、迷ってしまう自分がいました。
茨城県では、それぞれの市町村の福祉や教育の部門に相談窓口が設けられています。子ども本人の問題だけでなく、その根本にある家族の問題の解決につながる支援のメニューが用意されています。
具体的には、ヘルパーの派遣などによる家事・介護の負担の軽減や給付金・奨学金の制度の紹介、悩み相談などです。
「発見」に続けて、家族の誰にどんな支援が必要なのか見極め、こうした支援がスムーズに届けられるようになってほしいと感じました。
NHKではこれからも、ヤングケアラーについて皆さまから寄せられた疑問について、一緒に考え、できる限り答えていきたいと思っています。
ヤングケアラーについて少しでも疑問に感じていることや、ご意見がありましたら、自由記述欄に投稿をお願いします。