“避難生活は寒い“能登半島地震の被災地、石川県輪島市に取材で行った私(粕尾)が身にしみて感じたことです。今まで「災害への備え」というと、水や非常食の備蓄を思い浮かべていましたが、この首都圏でも寒さ対策が必要です。
(さいたま局/記者 粕尾祐介・玉木香代子)
体育館で避難生活の高齢女性
「寒いことが困る。毛布を何枚も敷いて寝ているが床が冷たい」
壊れた家の片付け中の女性
「寒いので服などを取りに来たが、ぬれてしまっていて使えない」
現地で被災した方から伺った声です。
輪島市に入ったのは1月11日。当日の最高気温は10度でしたが、風が強く、想像より寒さを感じました。私は上に4枚、下に3枚重ね着をしていましたが、顔に当たる風が強く、体温が奪われる感じがしました。電気が通じないところもあって、室内であっても冷え込んでいました。
家の中で取材させてもらった人のご自宅も暖房器具が使えませんでした。フローリングの床は冷たく、底冷えしていました。
「これは能登半島でおきた地震だから、寒いのだ」と思われるかもしれません。しかし、寒さ対策は首都圏に住む私たちにも大いに関係する話です。
電気を使う暖房器具を使用する方が多いと思いますが、当然、電気が通じないと使えません。
国が示した首都直下型地震の被害想定では最大で1220万軒が停電すると想定され、被災した電気設備の復旧には1か月程度かかるとされています。さらに毛布は最大でおよそ37万枚不足するという想定もあります。
首都圏では寒さへの備えを進めている自治体もあります。埼玉県富士見市では避難所となる小学校などに段ボールベッドを備蓄しています。
段ボールベッドは、簡単な組み立てで完成し、床に直接寝る必要がない分、寒さを感じにくくなります。富士見市は市全体で段ボールベッドを200セット余り、毛布8000枚を備蓄しています。
さらに電気が通じない事態も想定して、避難所となる小中学校の体育館にプロパンガスで室内を暖めることができる空調設備の整備も進めています。
ただ備蓄の数には限りがあります。段ボールベッドなどは体温調節がしにくい高齢者などに優先的に使ってもらうことにしていて、市民にも寒さ対策などの備蓄を呼びかけています
富士見市 深迫国宏 危機管理課長
「寒さ対策は命にかかわってくると思います。市は市として防災対策を進めていますが、家庭での備えも大事だと思います」
日頃からの備えについて、石川県の被災地にも支援に入った危機管理アドバイザーの
国崎信江さんは「石油ストーブがあると心強い」と話していました。電気やガスが止まっても使えるからです。今は、持ち運びしやすいものもあるほか、電気が使えない場合の明かりとしても役立つそうです。また、寝袋を使う際、中にカイロを入れると、保温効果が高められるということです。
寒い避難所生活への対策、詳しい内容はこちらからもご覧いただけます。
現地に取材に行き、意外と有効だと感じたのは、「マスク」と「軍手」です。マスクは感染症対策のために持って行きましたが、顔にあたる寒風を少し和らげてくれました。また、手袋はあったほうがよいのですが、軍手でも代わりになると思いました。
輪島市の取材では寒さの厳しい中、生活を立て直そうとする方の姿を目にしました。わたしたちは被災した方々に思いを寄せながら、災害への備えをいま一度、家族と話し合って見直したいと思います。