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能登半島地震で広がるクラウドファンディング支援 輪島塗やのとじま水族館などが募る

能登半島地震から2か月
  • 2024年3月1日

被災した地域の復興をどう支援していくか。
その手段の1つとして広がっているのが、クラウドファンディングです。

目標金額を設定し、インターネットを通じて幅広く支援を募ります。

復興支援を呼びかけるクラウドファンディングの主なサイトをNHKが調べたところこれまでに集まった支援金は8億円を超えたことがわかりました。

クラウドファンディング“能登半島地震 被災者支援に活用”

クラウドファンディングの大手運営会社のうち、能登半島地震に関する特設ページを立ち上げた3社に取材したところ、2月27日までに集まった支援金は8億2000万円を超えたことがわかりました。

熊本地震の発生からおよそ2か月の時点で、同じ3社のサイトを通じて集まった支援金と比べると23倍ほどとなっています。

3社のうち、「READYFOR」では、96の呼びかけに対し、およそ5億5700万円、「CAMPFIRE」では60の呼びかけに対し、およそ1億9300万円、「Makuake」では9の呼びかけに対し、およそ7300万円が集まったということです。

今回は、被災地支援のため、運営会社への手数料の支払いは不要となっています。

クラウドファンディングを活用した支援が広がっていることについて、READYFORの林田翔太部長は次のように話しています。

READYFOR 林田翔太部長
「新型コロナの影響で離れていてもできる支援の方法として根付いたのではないかと思います。今回の場合は、支援で現地に入るのが難しく、その代替手段として利用されたと感じています。従来の義援金も大事だが、義援金の補完の手段としてどんどん普及していけばいいと思います」

“さまざまな支援の呼びかけが行われている”

能登半島地震に関連したクラウドファンディングの特設ページでは、2月29日正午の時点で、さまざまな支援の呼びかけが行われています。

運営会社の1つ、READYFORのページでは、石川県七尾市にある「恵寿総合病院」が患者の受け入れのための物資の調達費用などを求めています。
2400人から1億円余りが集まっています。

輪島塗の産業を再建したいと地元の漆器店が行っている呼びかけには、3200人から支援が集まっています。
支援すると輪島塗の食器が届くコースなどもあり、目標額の5000万円に対し、6400万円余りが集まっています。

七尾市の「のとじま水族館」や、生き物の避難先となった水族館を支援しようという呼びかけには、1400人から1500万円を超える支援が集まっています。
支援には、5000円から50万円までのコースがあり、50万円の支援を申し出た人も2人いるということです。

別の運営会社、CAMPFIREのページでは、江戸時代から続く老舗の酒蔵が「創業238年の歴史を守りたい」と運転資金や設備のための資金として600万円の支援を呼びかけています。

志賀町の古民家の宿を復興支援の拠点として活用できるようにしたいという呼びかけには、270人余りから支援が寄せられています。

Makuakeのページでは、能登町にある明治41年創業の鍛冶工房の再建費用などに430万円余りの支援が集まっていて、支援した人が包丁を送ると研いでもらえるサービスもあります。

石川県輪島市 門前町観光協会は…

地震のあと、石川県輪島市の門前町観光協会は、クラウドファンディングを活用して支援を募っています。

観光協会の下口十吾会長によりますと、クラウドファンディングを活用したのは、2007年に起きた地震の経験があったからだということです。

このとき、下口会長の衣料品店は全壊し、店の再建のために公的な支援金などを使いましたが、足りなかったといいます。

観光協会 下口十吾会長
「支援金や補助金を、全部使っても全然足りない。その状況を知っているからこそ、今回は早く動くことができたのだと思います」

また、今回、クラウドファンディングを活用するにあたっては個人としてではなく、観光協会として支援を呼びかけています。目標額は1000万円で、集まった支援金は宿泊施設や飲食店、酒造会社など協会に所属する会員に均等に分配する予定で、再建や復興の助けになればという思いがあるといいます。

下口会長
「観光協会の会員には年配の人も多く、『私はもうだめだ、廃業だ』と話す人や、落ち込んでいて、なかなか頑張る気持ちになれない人もいます。支援金を集めて、皆さんに渡すときにどう思われるかなとは思いますが、何か少しでも役に立てばいいなと思っています。長い目で見た支援がないと能登は復興できないのではないかと思うくらいひどい状況です。ほかの地域でも起こりうることだと思いますので、この状況を伝えていかなくてはいけないと感じています」

専門家 “今回の地震に対する支援や反響の大きさに驚き”

クラウドファンディングの仕組みに詳しい、上智大学経済学部の小阪玄次郎教授は、「クラウドファンディングの市場規模自体は、ここ数年で急速に拡大しているが、それと比較しても、今回の能登半島地震に対する支援や反響の大きさには驚いている。クラウドファンディングが被災地支援の重要なツールになっている」と話しています。

支援拡大の背景について小阪教授は、自分が共感するものに対してお金を出したいという近年のトレンドがあるとしたうえで、「通常の義援金と比べても、自分が『プロジェクトに参加している』、あるいは『応援している』という感覚を得やすいのではないか」と指摘しています。

一方、さまざまな支援の呼びかけがあるなかで、支援金の集まり方に差が出る現状については、「内容や志だけでなく、支援を呼びかけるページの見た目などによって左右されることが過去の研究でわかっている。運営会社がノウハウの提供を進めていけば『いい志だけど届かない』ということはもう少し減っていくと思う」と話しています。

また、インターネットの活用に慣れていない人などが取り残されてしまう懸念があるなか、今回の能登半島地震では個人ではなく団体で支援を呼びかけ、集まった支援金を分配しようとしているケースもあります。

こうした取り組みについて小阪教授は、「これまではオンラインに抵抗のない比較的狭い層が利用していたが、先進的な取り組みだと言える」と話しています。

そのうえで、「クラウドファンディングが成長していくにつれて、今後、質の低い、あるいは悪質なものが入ってくる可能性もあり、信頼が失われてしまう懸念がある。支援を呼びかけるページのサポートや、質のよくないものに対する注意など、運営会社の役割は今後、さらに重要になっていく」と話していました。

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