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「踏切の遮断機下りない」22年度までの5年間で48件 埼玉 東京 神奈川 千葉でも 原因や専門家の見解は

  • 2024年2月28日

列車が踏切に近づいても遮断機が下りないトラブル。

鉄道会社が、運輸局に届け出た件数は昨年度までの5年間で少なくとも48件に上ることがNHKが行った情報公開請求でわかりました。

都道府県ごとの件数で最も多かったのが香川県で10件、次いで、北海道が4件、埼玉県が3件でした。また、関東地方では千葉県、東京都、神奈川県がそれぞれ1件でした。

専門家は「大きな事故につながる可能性があり対策を講じなければ、今後増える恐れもある」と指摘しています。

“下りない遮断機”全国でどの程度あるの?

去年4月から8月にかけて高松市にあることでん=高松琴平電気鉄道の踏切では遮断機が下りないトラブルが3件相次ぎました。けが人はいなかったものの、大きな事故につながる可能性もありました。

NHKは、遮断機が下りないトラブルが全国でどの程度起きているのかを確認するため、国土交通省に情報公開請求を行いました。

鉄道会社は、事故やトラブルが起きた場合には国の省令に基づき運輸局に届け出ることが義務づけられているため、公開された情報を独自に集計・分析しました。

それによりますと、昨年度までの5年間に届け出がされたのは少なくとも24の都道府県で48件に上ることがわかりました。

このうち、およそ8割にあたる39件では、接近してきた列車が遮断機が下りていない踏切をそのまま通過したり踏切内に進入したりしていました。

中には、列車が踏切内にいた自動車と衝突して1人がけがをしたケースや、自動車が横断していることに列車の運転士が気づき、手前で急ブレーキをかけたというケースもありました。

また、原因については、「機器の不具合」が16件、「レールのさびや部品の破損などで列車の接近を検知できず」が9件、「人為的なミス」が9件などでした。

遮断機下りないトラブル 24都道府県で!

踏切の遮断機が下りないトラブルについて都道府県ごとの件数でまとめました。

最も多かったのが香川県で10件でした。
次いで、北海道が4件、埼玉県が3件でした。
このほか、石川県、静岡県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、岡山県、福岡県、佐賀県、宮崎県がそれぞれ2件、岩手県、千葉県、東京都、神奈川県、長野県、岐阜県、愛知県、鳥取県、島根県、広島県、長崎県がそれぞれ1件でした。

危険なケースも

列車が踏切内にいた自動車と実際に衝突したケースが1件あったほか、列車が近づく直前に踏切を渡ろうとする自動車がいたなど、事故につながりかねない危険な状態だったとみられるケースは6件ありました。

48件の原因についてNHK独自に集計・分析

48件の原因についてNHKが独自に集計・分析しました。

【踏切関連の機器の不具合 16件】
遮断機を動かすための機器が故障したり、動作不良があったことなどが分かるケースは16件ありました。

この中には、
〇機器の劣化が原因としてあげられているものもあったほか、
〇落雷によって機器に不具合が生じたとみられるものもありました。

【人為的なミス 9件 
〇点検作業を終えた後電源スイッチを入れ忘れたり、
〇部品交換を行ったあと設定を誤るなど、人為的なミスによるものは9件でした。

【検知できず9件】
一般的に遮断機は、踏切に列車が近づいてきたことをレールで検知してから下りる仕組みとなっていますが、列車の位置を検知することができなかったケースは9件ありました。

検知できなかった理由として、
〇レールに錆ができたり、
〇付着した葉が車輪で踏み固められりしたケースがあったほか、
〇暑さでレールが膨張したことで部品が破損したケースもありました。

【その他 8件】
遮断機がケーブルに引っかかって下りないなどの「その他」が8件でした。

【不明】
また、「不明」は6件でした。

下りたままの遮断機も

踏切のトラブルの中には、遮断機が下りないケースだけでなく、列車が接近していないのに遮断機が下りてしまったり、下りたまま上がらなかったりしたとみられるケースもありました。

こうしたトラブルは昨年度までの5年間に全国で少なくとも21件ありました。

原因としては、ケーブルを草刈り機で誤って切断したとみられるケースや、設備の老朽化、異常気象でレールが伸び、部品が故障したケースなどがありました。

国土交通省“安全維持に努めてほしい”

国土交通省は「遮断機が下りない事象は、事故に至る可能性があるため、とても無視することはできない件数だという認識だ」とした上で、「トラブルの背景にはさまざまな原因があり防止のための対策は簡単なものではない。施設の更新のための支援を行っているので鉄道事業者には安全維持に努めてほしい」とコメントしています。

専門家“危険なトラブルにつながりかねない”

今回の調査結果について、鉄道工学が専門の日本大学の綱島均教授は、5年間で少なくとも48件に上ることについて次のように指摘します。

鉄道工学が専門 日本大学 綱島均 教授
「かなりの頻度で発生しているといえると思う。遮断機が上がっていれば、踏切に車や人が進入してもおかしくなく、大きな事故につながる可能性が十分にあったことがうかがえる。ほとんどの地方鉄道は経営が厳しく、十分な設備投資をすることが難しくなっている可能性が非常に高い。このため使っている設備をできるだけ長く使おうとするのは自然な流れだが、限度を超えると遮断機が下りないなど危険なトラブルにつながりかねない。トラブル防止のための対策を各社で個別に考えるのでなく、複数の会社で共有するような観点も必要になるのではないか」

トラブル発生の原因について、「人為的なミス」が9件あったことについて綱島教授は「熟練の技術者が少なくなっていたり、人手不足で保守・点検に関する十分な教育ができていない可能性もある」と指摘しています。

そのうえで綱島教授は、次のように警鐘を鳴らしています。

鉄道工学が専門 日本大学 綱島均 教授
「設備の老朽化や人手不足の影響に加え、温暖化による気候の変化もあるので、抜本的な対策をとらなければこうしたトラブルの件数が増える恐れもある。不具合を減らしていくための対策を急ぐべきだ」

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