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オーバードーズ(OD)市販薬の過剰摂取でどうなる?「命に危険が及ぶケースも」当事者との関わり方とは?

  • 2023年11月27日

若い世代の間で横行している「OD・オーバードーズ」=市販薬の過剰摂取。市販薬はドラッグストアなどで手軽に購入できる一方で、大量に摂取すると命に危険が及ぶケースがあると指摘されています。

オーバードーズの危険性とは?当事者との関わり方はどうすればいいのか?

“ODしてしまった やめたいのに…”

SNSでオーバードーズに関連したことばを検索すると、「ODでふわふわしたい。現実がしんどい」とか、「今後一緒にODしよ」といった投稿が次々に出てきます。

なかには、「ODしてしまった。やめたいのに。生きることから逃げたい」など、オーバードーズをやめたい思いはあるものの、それ以外に気持ちを楽にする方法を見つけることができず、何度も繰り返してしまう様子がうかがえる投稿もあります。

オーバードーズ 8割以上が女性

市販薬はドラッグストアなどで手軽に購入できる一方で、大量に摂取すると命に危険が及ぶケースがあると指摘されています。

救急搬送されるケースも増えていて、東京消防庁によりますと、自殺目的で鎮痛薬などを飲み、搬送された人は去年(2022年)は1561人と、5年前(2018年)のおよそ1.5倍に上ります。

特に、15歳から19歳、20歳から29歳の若い世代ではいずれも2倍近くに増えていて、8割以上が女性だということです。

さらに去年12月までの1年8か月の間に市販薬を過剰に摂取して救急搬送された122人について厚生労働省の研究班が行った調査では、平均年齢は25.8歳で最年少は12歳だったほか、男女別では女性が79.5%、男性が20.5%でした。

また、搬送された人のほとんどが入院したほか、集中治療が行われた人は半数を超え、後遺症で通院が必要になった人もいたということです。

オーバードーズ “その危険性とは”

厚生労働省の研究班のメンバーでオーバードーズで救急搬送される患者の対応にあたっている埼玉医科大学病院臨床中毒科の喜屋武玲子医師によりますと、多くのケースは軽症で済むものの、中には脱水で腎臓が悪くなり、集中治療室での治療が必要になったり、意識がなくなったりする人もいるということです。

喜屋武医師は、次のように指摘しています。

喜屋武玲子 医師
「飲む量によっては本人が思った以上に具合が悪くなり、『こんなはずじゃなかった』という状況になる人が多い印象だ。日本の市販薬の中には複数の成分が含まれているものがあり、知らず知らずのうちに中毒になる成分を過剰摂取してしまうケースがある」

また、喜屋武医師は年齢が低い少年少女がオーバードーズに依存するようになるとオーバードーズに至った問題を解決するために精神科を受診しても、年齢が若いことを理由にすぐには受け入れられないケースもあり、治療や相談につながるまでに時間が空いてしまうと指摘しています。

さらに、アルコールや違法薬物などと異なり、市販薬の依存症治療のプログラムは確立されていないため、病院に搬送されても体が元気になれば自宅に帰され、根本的な問題が解決しないまま同じことを繰り返してしまう構図があるということです。

一方、喜屋武医師たちがオーバードーズで救急搬送された人を対象に行った調査では、6割以上が実店舗で市販薬を購入していたということです。

「薬剤師などから『販売時に自分たちが事情を聞いていいのか』とよく質問されるが、むしろ『どういう理由でこの薬が欲しいのか』などとしっかり話を聞くことで、薬剤師などが“ゲートキーパー(門番)”になり、悩んでいる人たちに何らかのアプローチができるのではないかと思う」

対策をどう進めればいいのか?

独自に対策を進めているドラッグストアもあります。

都内を中心におよそ30店舗を展開するドラッグストアでは、営業時間中は薬剤師や登録販売者などの資格を持った従業員を常駐させ、市販薬を販売する際には使用する人や年齢、購入目的を聞き取るほか、薬の副作用など、使用上の注意を説明するなど購入者への声かけを徹底しているといいます。

また、乱用のおそれのある成分が含まれている薬などには店オリジナルのポップで注意を呼びかけています。

龍生堂本店 大久保エリアマネージャー 吉村賢一さん
「薬は安全であることが欠かせないので、決められた範囲内で売ることを徹底しています。店舗で直接客の顔色を見たり症状を聞いたりしていますが、ほかの店でも薬を買っていないかどうかは客から聞き取った内容でしか判断できない現状があり、その点は非常に不安を感じています。客に買ってほしいというジレンマはありますが、薬に関しては用法用量を守って飲んでほしい思いが強いです」

厚生労働省 検討部会で議論

厚生労働省は、ことし4月から乱用のおそれが指摘される6成分を含んでいて、販売が制限される、医薬品の対象品目を拡大し、購入できるのは原則1人1箱までとし、中高生など若者に対しては名前や年齢を確認するよう販売者に求めています。

さらに検討会では、20歳未満に乱用のおそれのある医薬品を販売する場合は、▼小容量の製品1個のみとすること▼2個以上や大容量の製品の販売は原則禁止すること▼店頭では客が手に取れない場所に陳列し購入者の名前や年齢を記録すること▼インターネットで購入する際は薬剤師や登録販売者などの有資格者とのビデオ通話を行うことなどの案が議論されているということです。

当事者とどう関わればいいのか?

「助けてほしい」と感じている当事者たちとどう関わっていけばいいのか。

歌舞伎町で子どもの支援活動を行う防犯ボランティア団体では、週に1回カフェを開いて当事者たちと交流したり、広場に出かけて直接コミュニケーションをとったりするなかで、若い世代の抱えている問題や悩みを聞き取っています。

一方で、自分たちが呼びかけるだけでやめさせることは難しいとも感じていて、オーバードーズをしてしまう背景や理由に耳を傾け、行政や医療機関など適切なサポートにつなげることが大切だと考えています。

防犯ボランティア団体「オウルxyz(オウリーズ)」酒井渉伍 副代表
「大人の役割として、オーバードーズの危険性を周知していくことをはじめ、学校での教育や薬局での市販薬の売り方など、できることはたくさんあると思う。自分たちの活動で救われる人は少ないかもしれませんが1人でも人生のベクトルを変えることができれば意味のあることだと考えています。支援機関はあっても当事者がそこに出会うまでが大変なので、もっと周りの大人や社会が『悩んでいる子がいる』ということに気づき、最適な支援ができる場所につなげることが必要だと思う」

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