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国慶節(2023)中国の大型連休で「はとバス」は?中国旅行客は回復するか?

  • 2023年10月2日

中国では、9月29日から建国記念日にあたる「国慶節」などの大型連休が始まりました。

中国からの旅行客がどの程度回復するのか。
日本と中国を結ぶ国際線の状況や中国語のバスツアーを期間限定で再開した「はとバス」の予約状況はどうなっているのか?各現場の状況をまとめました。

また、今後の見通しについて観光分野に詳しい日本総合研究所の高坂晶子主任研究員に聞きました。

国慶節 8日間の大型連休

中国では、9月29日から日本の十五夜にあたる「中秋節」と、建国記念日にあたる「国慶節」にあわせた8日間の大型連休が始まりました。

中国政府は、連休中、のべ20億5000万人が公共交通機関や車などで移動すると予測していて、1日あたりではのべ2億5700万人と、去年の同じ時期より6割近く増える見通しだということです。

ことしは「ゼロコロナ」政策が終了してから初めての「国慶節」の連休とあって、旅行客が大幅に増える見込みで、中国のIT大手「百度」などがまとめた報告書によりますと、日本は外国で最も人気のある旅行先に挙げられています。

一方、中国の旅行会社などによりますと東京電力福島第一原発の処理水の放出を受け、日本への団体旅行のキャンセルも一部で出ているということで、今後、中国からの旅行客がどの程度回復するか注目されます。

日本と中国を結ぶ国際線 ほぼ満席状態

ことしの国慶節の期間中、日本の航空大手の日本と中国を結ぶ国際線はほぼ満席状態の便が多くなっています。

このうち全日空は、日本と北京や上海、広州などの間で週62往復の定期便を運航していて、国慶節の連休前後の9月26日から30日までの中国発の便はほぼ満席、10月6日から9日までの日本発の便は、9割程度が予約で埋まっているということです。

この会社では、中国から日本への団体旅行が8月、解禁されたことなど需要の回復を見込んで、10月1日から週70往復にさらに来月下旬からは週76往復に増便する計画です。

それでも、コロナ禍前と比べると両国を結ぶ定期便の数は4割程度にとどまっています。

団体旅行の解禁から1か月あまりたっても、利用者の回復は緩やかでさらなる増便については、需要がどう拡大していくか、分析する必要があるとしています。

中国路線を担当する 石山慶之マネジャー
「国際線のなかでは中国路線の回復が一番遅れている。一気に大幅な増便を行うような需要は見込めていないが、状況を見極めて増便をしていきたい。中国からの旅行者は、移動するときは、一気に移動するので、そうした動きに乗り遅れないように準備しておきたい」

また、日本航空も国慶節の連休前後の中国から日本に向かう便はほぼ満席となっていますが、定期便の数はコロナ禍前の半分程度で、増便については、今後の需要を見極めながら検討するとしています。

国土交通省によりますと、9月時点で日本と中国の間の国際便は、中国の航空会社の運航分も含めて週650往復程度と、コロナ禍前の半分以下にとどまっています。

はとバス 思うように予約埋まらない

中国の建国記念日にあたる「国慶節」の大型連休にあわせて東京の観光バス会社ではコロナ禍で休止していた中国語のバスツアーを期間限定で再開させましたが、思うようには予約が埋まらない状況だといいます。

都内の観光バス会社「はとバス」では、新型コロナの影響で3年前から休止していた中国語のツアーを、「国慶節」の大型連休にあわせて28日から10月30日までの期間限定で再開させました。

28日は山梨県の河口湖周辺をめぐる日帰りのツアーが行われ、国慶節の連休に合わせて来日したという中国人の男性は「前から富士山が見たかったのでこのツアーに参加しました。日本のいろいろなところを観光したいです」と話していました。

ただ、28日のツアーに参加したのは定員の4分の1の11人でした。

会社によりますと、1日に複数のツアーを用意していたコロナ禍前は、1日あたりの参加者があわせて30人程度で、満員になることもあったということで、コロナ禍前の水準には届いていないということです。

また、10月についてもツアーに最低限必要となる10人が現時点では集まらずに見通しが立っていないツアーが多いということです。

バス会社 広報室 伊藤百那主任
「バスツアーの利用はそこまで回復していないのかと思います。中国語のツアーの需要を見極めて、今後、継続して運行するか、大型連休に合わせて限定的に運行するか、対応を検討したい」

専門家 今後の見通しについて…

中国からの旅行者の数は回復するのか?

今後の見通しについて、観光分野に詳しい日本総合研究所の高坂晶子主任研究員に聞きました。

Q. 8月、中国から日本への団体旅行が解禁されたが、中国からの旅行者の数は、新型コロナの感染拡大前の2019年の8月と比べて、まだ4割以下の水準にとどまっています。考えられる背景は何でしょうか?

さまざまな理由が考えられる。▽日本への団体旅行が解禁されて間もないので、まだ動きがデータに反映されていないという点もある。また、▽ビザの発給に時間がかかっていることや、▽日本と中国を結ぶ航空便の数が2019年と比べて大幅に減少している上、日本国内の空港のスタッフが不足して便数の回復が思うようにいかないということもある。さらに、▽中国人観光客を誘致しようとほかの国がビザを不要にするなどさまざまな対応を進める中、あえて、日本を選ぶ必要もないという点もあるとみられる。

Q. 日本と中国の間では福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出の影響はあるでしょうか?

日本政府と中国政府との間の緊張関係のようなものを映していて自己規制のようなものが働いているのかなという気がする。中国人は旅行で体験したことをSNSなどで共有することを非常に好むが、中国で日本のことを快く思っていない人が一定数いる中で、そうしたことをすれば、批判されるのではないかという危惧が行動を鈍らせているのではないか。「日本が危ない国だ、健康被害が起きかねない」という誤解を理由に旅行を見合わせるということももちろんあると思う。

Q. 中国からの旅行者の数はいつごろまでにコロナ前の水準に戻るでしょうか?

8月まで中国からの旅行者の数が他国よりかなり少ないことや、さまざまな懸念点を踏まえれば、すぐにコロナ禍前の水準に戻るとは考えにくい。国慶節の次に旅行者が大きく増えるとみられる来年2月ごろの旧正月「春節」の時点でも戻るかどうかは現時点では微妙だ。ただ、一時ほどのひどい対立はなくなりつつあるので、若干希望的観測ではあるが、私自身は、徐々に元に戻っていくという見方をしている。

Q. 中国からの旅行者の回復を予測する上でプラス要因は?

中国だけに限った話ではないが、円安は、日本への旅行を決める動機づけとして大きな追い風となるだろう。訪日外国人1人あたりの消費額はすでに2019年を上回っている。旅行者の人数がどこまで増えるかは不透明だが、中国人の消費額も増加していくだろう。

Q.中国からの旅行者をメインのターゲットにしていた観光事業者の中でも、他の国へシフトする動きもあるようですが?

観光の事業者にとって、中国からの旅行者は非常に大きな市場であることには変わりないので、全体でみれば通訳などの採用にまったく力を入れなくなるとは考えにくい。一方で、コロナ禍を経験したことで、特定の国に依存して事業を展開するとリスクとなることが明らかになった。中国語以外の言語を話せるスタッフをバランスよく採用することなども今後は必要になってくるだろう。

中国からの旅行者 今後の回復ペースが注目

日本政府観光局によりますと、コロナ禍前の2019年、中国からの旅行者は、年間959万人と訪日客の3割を占め、1か月間の旅行者は最も多かった2019年7月に105万人に上りました。

しかし、新型コロナの感染拡大で水際対策が厳しく敷かれ旅行者は大幅に減少しました。

去年10月に日本の水際対策が大幅に緩和されたあとは、訪日外国人の全体の数は大きく伸びましたが、中国からの旅行者はことし1月の時点でも3万1000人で感染が急拡大する前の2020年1月の3%程度と回復の鈍さが目立っていました。

ここ数か月で見ると、6月は20万8000人、7月は31万3000人、8月時点では36万4000人と徐々に回復しています。

それでも、8月の旅行者数はコロナ禍前の2019年の同じ月と比べて36%の水準となっていて、今後の回復のペースが注目されます。

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