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血圧入力で食事や運動の支援を受ける“治療支援アプリ”どんなアプリ?

  • 2023年10月2日

デジタル技術を活用した取り組みについてです。

医師がスマートフォンのアプリを「処方」して、患者の治療につなげる「治療支援アプリ」。

その利用が広がり始めています。

国の承認を受けた高血圧症の「治療支援アプリ」を開発した会社は、実際に利用した患者での効果を分析したデータを公開し、幅広い年代で血圧を下げる効果が示されたとしています。

どういったものなのか?今後の市場拡大はあるのか? 海外の状況などについてもまとめました。

血圧 どの程度改善したのか?

東京の医療機器メーカーは高血圧の症状がある患者に生活習慣の改善を促す「治療支援アプリ」を開発し、治験を経たあと、去年4月に国の承認を受けて現在、全国の1000を超える医療機関で導入されています。

会社は、ことし4月までにアプリを処方された人のうち22歳から87歳の患者およそ550人を対象に、血圧がどの程度改善したのか分析したデータを公開しました。

それによりますと、使い始めてから12週後の最高血圧は、アプリを使い始めたときと比べ、▼起床時で8.8、▼就寝前に8.5下がったことが確認され、幅広い年代で血圧を下げる効果が示されたとしています。

このうち、アプリを使い始めたときに薬を服用していた患者は、▼起床時で7.5、▼就寝前で7.2下がった一方で、薬を服用していなかった患者は、▼起床時で10.5、▼就寝前で10.8下がったことから、薬を使う前に生活習慣を改善することでさらに血圧を下げる効果が期待できるとしています。

アプリを開発した「CureApp」の佐竹晃太社長
「治験でも実際の患者さんのデータでも、同じように血圧を下げる効果が出ていることは、条件は異なるものの、価値のある結果と考えている」

治療支援アプリとは

この「治療支援アプリ」は、高血圧症の患者が毎日、朝と夜に測った血圧のデータを入力したうえで、キャラクターと対話をしながら、高血圧に関する知識を学んだり、減塩や運動といった行動を習慣づけたりするための支援を受けることができます。

開発にあたっては、およそ400人の患者を対象に半年間にわたる治験が行われ、このアプリを使ったグループは、医師の指導だけだったグループと比べて、血圧を下げる効果が大きかったことなどから、去年4月、医療機器として国の承認を得ました。

そして、去年9月には公的医療保険の対象になり、医師に処方された患者は半年間のプログラムで1か月あたり2500円程度の負担で利用できるようになっています。

会社では、アプリを開発する際に行った治験に加え、承認後に利用した患者でのデータを解析した結果、幅広い年代で血圧の低下が確認されたとしています。

一方で、治験の参加者と実際の患者では、年齢や投薬の有無などの条件が異なるため、引き続き慎重に結果を分析していくほか、得られたデータを活用して、より高い効果が得られるよう、アプリを改善していくことにしています。

「CureApp」佐竹晃太社長
「蓄積したデータはアプリのブラッシュアップに活用できるので、これまでとは異なった進化し続けられる治療だと考えている」

世界でも利用広がる

スマートフォンなどのデジタル技術を活用して、病気の治療や予防につなげようとする「治療支援アプリ」は世界でも利用が広がっています。

「治療支援アプリ」を世界で最初に開発したのは、アメリカの会社で、2010年に糖尿病の患者向けに生活習慣の改善などを促すアプリがFDA=アメリカ食品医薬品局の承認を得ました。

その後、「治療支援アプリ」の開発は広がり、心不全や肥満のほか、うつ病やアルコール依存症、それにがんや慢性の腰痛などさまざまな病気や症状に対応したアプリが各国の規制当局の承認を得て医療機器として提供されています。

このうち、アメリカは生活習慣病などにかかる人が増えていることや、医療費が高いことを背景に、予防的な医療に関心が高まっていて、アメリカの研究者らのまとめによりますと、2021年の時点で63の「治療支援アプリ」が承認されているということです。

また、ドイツも2019年から「治療支援アプリ」に公的保険が適用されるようになり、およそ50のアプリが承認されているということです。

こうしたデジタル技術を使った新たな治療の世界の市場規模について、アメリカの調査会社は、去年の時点で50億9000万ドル、日本円に換算しておよそ7600億円と推計していて、2030年まで毎年の平均で26.6%ずつ成長していくと予測しています。

日本でも、2020年に禁煙治療を支援するアプリが初めて医療機器として国の承認を得て以降、高血圧症と不眠症の患者に向けたアプリも合わせて、現在、3つの「治療支援アプリ」が承認されています。

このうち、禁煙と高血圧の治療を支援するアプリはすでに公的保険が適用されています。

不眠症の患者向けのアプリについても、保険の適用を目指した手続きが進められていて、開発する会社はことし中に医療現場で提供することを目指すとしています。

このほかにも、糖尿病やアルコール依存症で治験が進められているほか、医療系のスタートアップだけでなく、大手製薬会社なども本格的に開発に乗り出すなど今後の成長産業として期待が高まっていて、国も開発や医療現場での利用が進みやすくなるように、審査の簡略化などを検討することにしています。

調査会社の「富士経済」によりますと、国内の「治療支援アプリ」のことしの市場規模はおよそ2000万円とまだ小規模ですが、2030年時点の予測では120億円余りと、今後、市場が急激に拡大していく見通しを示しています。

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