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大麻の使用 脳へどんな影響 記憶 視覚 聴覚は?専門家に聞いた

  • 2023年8月29日

大麻が若い世代で広がっています。専門家は大麻に含まれる「カンナビノイド」という物質は脳全体に作用するため、必要な神経回路まで削り取ってしまったり、神経細胞から次の神経細胞に情報を伝達するのを抑えたりしてしまうとしています。大麻をめぐる状況や、脳への影響についての専門家の見方をまとめました。

大麻による検挙 70%が20代以下

警察庁によりますと、去年1年間に大麻の所持や栽培などで全国の警察に検挙されたのは5342人で、過去最多だったおととしの5482人に次いで過去2番目に多くなりました。

年代別にみると、10代が912人、20代が2853人と、20代以下の若年層が全体の70パーセント余りを(70.5%)占めています。

20代会社員

大麻を売っているSNSは、野菜の絵文字が使われていて結構見かけます。日常的にまん延していると感じます。

20代会社員

ほかの友人と一緒に、『これ以上続けるなら縁を切る』と言って説得しました。若い世代は大麻への危機感はなくたばこのように軽く吸えるようになっていると感じます。

警察庁の分析では、10代で初めて大麻を使用するケースが増加傾向にあり、使用した動機も「興味本位」や「その場の雰囲気」など、安易に手を出している実態があるということです。こうした傾向について警察庁は、大麻は影響が少ないという間違った認識が広がっていることや、SNSで手軽に入手できることなどが背景にあると分析しています。

大麻の影響 記憶障害 視覚や聴覚にゆがみも

大麻を使用することで脳にどのような影響があるのか、神経科学が専門の滋慶医療科学大学の木村文隆教授に聞きました。

木村教授によると、脳は正しい神経回路があって初めて働くもので、例えば大脳皮質では、感覚野(視覚や聴覚、触覚など)、運動野(運動のコントロール)、連合野(思考や判断力、人格形成など)があり、神経回路が働かないとそれらを正しく処理できなくなるおそれがあるといいます。

大麻に含まれる「カンナビノイド」という物質は脳全体に作用するため、必要な神経回路まで削り取ってしまったり、神経細胞から次の神経細胞に情報を伝達するのを抑えたりしてしまうとしています。
その結果、記憶障害や視覚や聴覚がゆがむといった影響が出るということです。

“大脳皮質の神経回路が削り取られる”

 こちらは、木村教授が参加した研究グループが2016年に発表した画像です。マウスに「カンナビノイド」を投与したところ、投与していないマウスと比べて大脳皮質の神経回路が削り取られて、白い影が薄くなっている様子がわかります。

滋慶医療科学大学 木村文隆教授(若い世代への影響について)
「人格を形成する前頭葉の神経回路は20歳ぐらいまでにできあがると言われているので、若年層が大麻を使用すると成長するための回路ができずに人格がきちんと形成されないということが考えられるので、特に危険だ。海外では大麻を1、2回しか使用していない14歳の子どもについても、大脳皮質が正常な形をしていなかったという研究結果が出ている。
カンナビノイドの作用にはまだ分からないことも多く1、2回ならいいと思うかもしれないが十分に影響はある。依存性がないと思っている人も多いが、覚醒剤と同じような働きをするので軽く考えないほうがいい」

乱用者の一般人が密売人になるケースが増加

全国で大麻の押収量や検挙者が増えていることから、警視庁は大麻の「供給量」も増加しているとみています。

警視庁によりますと、違法薬物の密売人は暴力団関係者や、不良外国人が多い一方で、大麻については末端の乱用者の一般人が密売人になるケースが増えているということです。

警視庁が実際に検挙した事件でも普通の大学生が興味本位で大麻に手を出して、数か月後には密売を始めたケースがあったとしています。

警視庁薬物銃器対策課 高橋雅代課長
「SNSの普及、ネット上の誤った情報、身近な友人から誘われて断り切れずに手を出す、いったん手を出してしまった結果、心理的なハードルが低くなり、乱用を続けてしまうのではないかと考えている。自分にとって都合のいい情報だけを見るのではなく、正しい知識を持ってほしい。警視庁は取締りを強化するとともに、対策にも力を入れている。安易な気持ちで大麻に手を出せば、進学や就職、学校生活などに大きな影響がある。家族や回りの知人にも迷惑をかけるということを忘れないでほしい」

合法化の国 危険性が否定されているわけではない

大麻は、「ゲートウェイドラッグ」とも呼ばれていて、大麻をきっかけに覚醒剤などさらに効果の強い違法薬物に手を出す危険性が懸念されています。

カナダやウルグアイ、アメリカの一部の州など大麻の使用が合法化されている国もありますが、警視庁によりますと、背景には違法薬物を使用したことがある国民の割合が高く、あえて国の管理下に置くことで乱用や密売などを防ぎ、「闇市場」を壊滅させる狙いがあるとみられ、大麻の危険性が否定されているわけではないとしています。

また、医療目的で大麻を解禁しても、娯楽目的での使用が増えて、取締りが追いついていない国もあるということです。

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