新型コロナウイルスのワクチン接種について厚生労働省は、5歳以上のすべての人を対象に行われる9月から、現在、流行の主流となっているオミクロン株の派生型の「XBB.1」系統に対応するワクチンを使う方針を決めました。国内のXBB系統の広がりや、日本小児科学会の子どもへのワクチン接種の考え方などをまとめました。
新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合によりますと、新規患者数は4月上旬以降緩やかな増加傾向で、検出される新型コロナウイルスの種類はオミクロン株のうちの「XBB系統」が大部分を占めているということです。
また民間の検査会社で検出された結果をもとにした分析では、6月下旬時点にはインドなどで拡大し免疫を逃れやすい可能性が指摘されている「XBB.1.16」が49%になると推定されています。
新型コロナのワクチン接種は、現在、従来株に対応する成分と、オミクロン株の「BA.5」などに対応する成分を含んだ「2価ワクチン」で行われています。
接種について厚生労働省の専門家分科会は、9月から5歳以上のすべての人を対象に始まる接種では、現在流行の主流となっているオミクロン株の派生型の「XBB.1」系統だけに対応する「1価ワクチン」を使う方針を決めました。
一方、「5歳以上のすべての人」としている接種の対象者について、厚生労働省は最新の知見や外国の状況などを踏まえ、9月の接種開始を前にあらためて分科会で議論したうえで決めることにしています。
一方、アメリカ国内でことしの秋以降、使用する新型コロナのワクチンについて、FDA=アメリカ食品医薬品局は6月16日、現在、流行の主流となっている変異株の「XBB.1.5」に対応する「1価ワクチン」の開発を製薬各社に推奨したことを発表しました。
複数の製薬会社はすでに変異株の「XBB系統」に対応する成分のワクチンの開発を進めていて、今回のFDAの推奨は、開発中のワクチンの有効性に関するデータや、製薬各社が供給できる時期の情報などをもとに行ったとしています。
新型コロナワクチンの子どもへの接種について、日本小児科学会は、新型コロナが5類に移行したことや、WHO=世界保健機関がことし3月「生後6か月から17歳の健康な小児へのワクチン接種は優先順位が低く、国ごとの状況を踏まえて検討すべきだ」としたことを受け、接種の意義について改めて検討しました。
学会がまとめた考え方によりますと、WHOは子どもに対する接種は有効かつ安全としているほか、複数の研究報告で、発症予防や重症化予防の効果が確認されているなどとしています。
その一方、国内では未感染の子どもが多いとみられ、感染すると、まれに急性脳症や心筋炎を発症し、後遺症が残ったり死亡したりするケースもあるとしています。
そのうえで、学会は対策の緩和で多くの子どもが感染することが予想され、接種は重症化を防ぐ手段として重要だとして、引き続き「すべての小児に接種を推奨する」としました。
新潟大学 齋藤昭彦教授
「感染すると持病がなくても重症化する可能性はある。健康な子どもたちもワクチンを接種し重症化を防ぐ対策をすることが重要だ」