新型コロナウイルスのオミクロン株の1つで、アメリカで主流となっている「XBB.1.5」は免疫の働きを逃れやすいとされています。東京大学などの研究グループは、この「XBB.1.5」に対して飲み薬などの効果が確認できたとする実験結果を発表しました。これまでわかっている「XBB.1.5」の性質や感染の広がりの情報とあわせてまとめました。
アメリカのCDCは2月11日までの1週間に、国内で新型コロナに新たに感染した人のうち74.7%がオミクロン株の「XBB.1.5」に感染しているとする推計を10日、発表しました。前の週の65.9%と比べるとおよそ9ポイントの増加となり、2022年12月以降、アメリカでの感染拡大が続いています。
東京大学医科学研究所の河岡義裕特任教授らのグループは、「XBB.1.5」に対して、飲み薬などの効果が確認できたとする実験の結果を感染症分野の国際的な雑誌「ランセット・インフェクシャス・ディジーズ」に発表しました。
研究グループは飲み薬の「ラゲブリオ」と「パキロビッド」、「ゾコーバ」それに点滴で投与する「レムデシビル」を使って、患者から取った「XBB.1.5」の増殖を抑えられるか実験しました。
その結果、ウイルスの増殖を抑える効果は、従来型のウイルスや2022年春ごろに広がったオミクロン株の「BA.2」に対してと同程度みられたということです。
また、ワクチンの効果について、従来型のワクチンを4回接種した人の血液では「XBB.1.5」に対する中和抗体の働きはほとんど確認できませんでしたが、5回目にオミクロン株対応のワクチンを接種した人の血液では低い水準ながらも中和抗体の働きがみられたということです。
「XBB.1.5」に対してオミクロン株対応のワクチンで免疫が高められるほか、抗ウイルス薬は効果があると考えられるとしていて、河岡特任教授は「患者が薬にアクセスしやすい対応が取られればいいと思う」と話しています。
〇広がりやすさ
「XBB.1.5」のリスク評価についてWHOが1月25日に更新して公表した内容によりますと、ウイルスの広がりやすさについては、アメリカやイギリス、ヨーロッパのデータでは、ほかのオミクロン株の変異ウイルスより広がりやすいとしています。
〇免疫逃れる性質
過去の感染やワクチン接種で得た免疫から逃れる性質は、これまでの変異ウイルスで最も強いとしています。
ただ、オミクロン株の「BA.5」に対応したワクチンを接種した人やワクチンを接種し感染の経験もある「ハイブリッド免疫」がある人では「XBB.1.5」に似た「XBB.1」に対する抗体の値は高くなっているとしています。
〇重症度
感染した場合の重症度が上がっているという兆候は初期の段階では見られないとしています。
WHOは、「XBB.1.5」によって「世界的な感染者数の増加につながる可能性がある」としています。
その一方で、東京都のモニタリング会議の資料によりますと、東京都内では12月初め以降これまでに31例確認されていますが、検出される割合は1月9日までの1週間でも0.1%で、大きく増加している状況ではありません。