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マイナ保険証どんなトラブルが? 別人情報が登録されるリスクとは

  • 2023年6月12日

マイナンバーカードと健康保険証が一体化した「マイナ保険証」は2021年10月から全国で本格的な運用が始まりましたが、現場では混乱も起きています。情報が確認できないとされたケースの医療費の支払いなどトラブルの事例のほか、別人の情報が登録されるリスクについて医師や専門家の見方などをまとめました。

今の保険証 2024年秋に廃止方針 その一方で

「マイナ保険証」は、マイナンバーカードと健康保険証が一体化したもので、専用のポータルサイトで自分の医療費や薬の情報を確認できます。
また患者側が個人情報の共有に同意すると、医療機関側も情報を確認でき、国はデータを元により良い医療の提供につながるとしていて、2024年の秋には今の健康保険証を廃止する方針です。

しかし、厚生労働省は5月、2022年11月までのおよそ1年間に、他人の情報が登録されていたケースが、7312件確認され、このうち実際に医療費や薬などの情報が閲覧されたケースが5件あったと明らかにしました。いずれも修正の対応が取られたということです。

その後、確認を進めた結果、2022年12月から5月までの間に、他人の情報が登録されていたケースが新たに60件確認されたということです。これまでに他人の情報が登録されたのはあわせて7372件となりました。
また、名前や生年月日のほか医療費や処方された薬などの診療情報が閲覧されたケースは、今回の調査以前の分も含めて新たに5件確認され、あわせて10件となりました。

“該当資格なし” いったん全額負担のケースも

現場ではトラブルも相次いでいます。東京・北区の内科や外科の診察をするクリニックでは、患者の1割弱が「マイナ保険証」を利用しているといいます。

クリニックによりますと、数日に1度はトラブルが起きているといい、他人の情報が登録されていたケースはないものの、「該当資格なし」と表示されるなど情報を確認できないケースが相次いだといいます。

従来の保険証を持参していなかったため、いったん費用を全額負担してもらった患者が4月以降だけでも10人を超え、全額負担と聞いて発熱などの症状がありながら診察を受けずに帰った患者が2人いたということです。

正しく表記されず 記号表示されず 読み取れず

6月2日からは、厚生労働省が「マイナ保険証」で情報が確認できない場合でも、3割などの自己負担分を払ってもらうよう、運用マニュアルを更新しましたが、クリニックでは実際に無保険だった場合、あとで差額を支払ってもらえるか不安もあるとしています。

ほかにも、患者の名前が丸印となり漢字が正しく表示されないケースや、勤務先の企業や団体を示す記号が表示されないケース、それに読み取り機能がうまく作動しないケースもあったということです。

「いとう王子神谷内科外科クリニック」伊藤博道院長
「他人の情報がひも付くことはあってはならないことで、気がつかずに過去の薬を踏襲して間違った薬を出す危険性があり、アレルギーの情報にも関わる。登録時の入力ミスが修正されマイナ保険証のひも付けがきちんと終わって、みんなが安心して運用できるようになって初めて従来の保険証をなくす議論をして欲しい」

他人情報ひも付け114件 一時全額負担は776件

医師や歯科医師でつくる団体「全国保険医団体連合会」は「マイナ保険証」について全国の保険医協会などを通じて5月から行った調査の最終結果をとりまとめ、41の都道府県の1万あまりの医療機関から回答を得ました。

それによりますと、別の人の情報がひも付けられていたケースが最近の事例も含めて31の都府県で114件確認されたということです。
また、窓口で情報を確認できず、一時、患者に全額負担を求めたケースは38の都道府県で少なくとも776件に上ったということです。

マイナ保険証について、厚生労働省は、健康保険の組合などに7月末までに点検して報告するよう要請するとともに、医療機関に対し情報が確認できない場合は生年月日などで本人確認を行い、3割などの自己負担分に請求をとどめるよう求めています。(6月21日)

別人の情報が表示されたら

厚生労働省は、自分の情報が正しく登録されているかは、専用のポータルサイトで確認ができるとしています。
もし医療機関や薬局で別の人の情報が表示された場合などは、「国民向けマイナンバー総合フリーダイヤル」0120-95-0178 に問い合わせて欲しいとしています。

“命や健康に関わる重大問題に発展する可能性”

マイナンバー制度に詳しい中央大学の宮下紘教授に、マイナ保険証トラブルのリスクや、トラブルが相次ぐ中、政府が今の健康保険証を来年秋に廃止する方針などについて聞きました。

〇マイナ保険証トラブルについて
マイナンバーカードをめぐるさまざまなトラブルの中で一番大きなリスクに発展する可能性があるのが『マイナ保険証』だ。ヒューマンエラーで別人の情報が登録されてしまいその情報をもとに患者の取り違えが起きると、飲んではいけない薬を飲んでしまうなど人の命や健康に直接関わる重大な問題に発展する可能性があり、ほかのトラブルとは質が違う。

〇来年秋に廃止する方針について
誤入力が見られる状況であり、やや性急な印象だ。ミスを総点検し、リスクがなくなくなったと確認できてから、『マイナ保険証』を広く使っても決して遅くない。従前から使ってきた保険証の方が利便性があると感じる方もいると思うので、現在『1年』としている併用期間を長く認め、新たに出てきたトラブルに対処していく。そうした進め方の方がマイナンバー制度全体への信頼が高まると考えている。

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