トルコ南部のシリア国境近くで大地震が発生してから2月13日で1週間になりました。
これまでに両国では、あわせて3万3000人以上が死亡し、今も多くの人たちが厳しい寒さのなかで避難生活を強いられ、各地で救助活動や支援が続いています。
こうしたなか、群馬県に住む在日のトルコ人は、「東日本大震災を経験した日本の人々は、トルコの状況が最もわかると思っています。トルコを助けてください」と強く訴えました。
また、都内では寄付金を募るチャリティーの寄席も行われ、支援の動きが広がっています。
トルコ南部で6日に発生したマグニチュード7.8の地震やその後も続く大きな揺れにより、トルコとシリアではこれまでにトルコ国内で2万9605人、シリア側では少なくとも3581人が死亡し、亡くなった人の数は両国あわせて3万3000人を超えています。
地震の発生から13日で1週間となりましたが、現地では今も多くの人たちが倒壊した建物の下に取り残されているとみられ懸命の救助活動が続いています。
こうした中、在日のトルコ人からは「東日本大震災を経験した日本の人々は、トルコの状況が最もわかると思っています。トルコを助けてください」と支援を強く訴えていました。
群馬県大泉町に住むユスフ・タイランさん(37)は、甚大な被害を受けた南部ハタイ県の中心都市アンタキヤ出身です。
現地に住む母親やきょうだいは無事でしたが、親族2人が倒壊した建物の下敷きになり、亡くなったということです。
タイランさんは、11年前に家族で来日し、今は、太陽光パネルの設置などを行う会社の社長を務めています。
地震のあと、現地の人たちの生活を支援するためにネットバンキングで現地に住む弟に日本円で70万円ほどを送金したということです。
群馬県大泉町に住むユスフ・タイランさん
「地震発生から2日ほどは何も考えられず悲しくて泣くだけでしたが、できる限りのことをやろうと考えて送金しました。携帯電話の充電のための発電器や、水やガソリン、布団などを被害がなかった地域で購入してもらいました」
タイランさんが地震の発生後、親族に依頼して撮影してもらった動画には、住民が素手でがれきを取り除きながら倒壊した建物の下敷きになっている人を救出する様子が映されていて、「手袋がないので素手で助けているということです。救助隊がまだまだ足りていない状況だと聞いています」と話していました。
また、「家や仕事を失った被災者を各国で受け入れてほしい」とも訴えていて、みずからは親族を日本に呼び寄せたいと考え弁護士に相談したものの、ビザの関係で現状では難しいということです。
ユスフ・タイランさん
「家を失った人たちなどの人数があまりに多く、トルコだけでは解決できません。法律に関わる人にはいい方法を考えてもらいたい」
インタビューの最後にユスフさんは、カメラに向かって頭を下げて甚大な被害が出た母国に対する日本からの支援を強く訴えていました。
ユスフ・タイランさん
「日本に住むトルコ人の多くは、地震の被害があった南部の街から入ってきた人たちです。その家族が被災地には多くいます。トルコに住むみんなに代わって日本に住む人にお願いします。東日本大震災を経験した日本の人々は、トルコの状況が最もわかると思っています。トルコを助けてください」
一方、東京・渋谷では、トルコ南部で起きた地震の被災地を支援しようとチャリティーの寄席が行われました。
これは、渋谷区の美術館が開いたもので、落語家の桂春蝶さんが、オリジナルの落語を披露しました。
落語は明治23年に和歌山沖で遭難したトルコの軍艦エルトゥールル号に対し、山田寅次郎という青年を中心に地元住民が懸命に支援したという実話をもとに作られました。
この美術館の理事が山田寅次郎の孫にあたることから開催が決まったということで、13日の昼の部には、およそ50人が訪れて軽妙な話術に聞き入り、日本とトルコの絆が語られる最後の場面では涙を流す人もいました。
訪れた人は2000円以上の寄付を行うことになっていて、全額、トルコ大使館を通じて被災地に送られるということです。
ワタリウム美術館 和多利月子さん
「130年前からの長い友好関係のトルコが地震で大変な思いをされていて何かできないかと考えました。トルコの皆さんが一刻も早く笑顔あふれる生活に戻れるように祈っています」
桂春蝶さん
「当時の人の感情や思いを当時と同じ熱量で落語として伝え、心動かされた会場のお客さんが家族や大切な人に伝えることでトルコを支援するきっかけになってほしい」
訪れた人たちは「日本とトルコは関係が深いので少しでも応援したいです」とか「日本とトルコとの間の感謝の気持ちが今もつながっていると思い感動しました」などと話していました。
現地で活動する医療チームにテントやベッドなどの資機材を輸送するため、日本の政府専用機が13日午後、トルコに向けて出発しました。
トルコ南部のシリア国境近くで起きた大地震では、国際緊急援助隊として医療活動にあたる医師や看護師など30人あまりが12日夜、羽田空港を出発しました。
防衛省は、医療チームに必要な資機材を届けるため自衛隊による輸送を決め、北海道の航空自衛隊千歳基地を出発した政府専用機が13日正午ごろ、成田空港に到着しました。
その後、医療用のテントやベッド、それに手術台などおよそ15トンを積み込んで13日午後3時すぎにトルコに向けて出発しました。
政府専用機は日本時間の14日にもトルコ南部にある空港に到着し、その後、資機材は被災地に設けられる医療チームの拠点に陸路で運ばれる予定だということです。
今回の地震による被災者はトルコ国内だけで1300万人に上り、WHO=世界保健機関は、トルコとシリア両国の被災者の数は、最大で2300万人に上る可能性があるという見方を示していて、救助活動とともに被災者の支援が課題となっています。