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「Chat(チャット)GPT」「Bard」AIの対話ソフト 使い方と懸念は?

  • 2023年2月15日

今後のネット検索のあり方を大きく変える可能性が高い、AI=人工知能との対話ソフトの開発競争が加速しています。
マイクロソフトは、質問を入力するだけで人工知能が自然で説得力のある回答を返してくれる、対話ソフト「ChatGPT」の技術を活用した機能を、自社のインターネット検索に搭載すると発表。
一方、グーグルは、質問に対してAIが自然な文章で回答する対話ソフト「Bard」を新たに開発し、その使い方を初めて公開しました。

ChatGPTとは?

ChatGPTは、マイクロソフトが投資しているアメリカのベンチャー企業「オープンAI」が開発している対話ソフトで、質問を入力すると、人工知能が、人間が書くような自然で説得力がある文章で回答してくれるのが特徴です。

マイクロソフトは、このChatGPTの技術を活用した機能を、自社のインターネット検索「Bing」などに搭載します。

検索する際には、最大1000文字まで質問を入力できるようになっていて、旅行の計画を立ててほしいとか、新しい掃除機を購入したいがどんな種類を買えばよいかといった質問に、自然な文章で回答できます。

現在、ネット検索の分野ではグーグルが圧倒的な支配力を持っていますが、その構図を大きく変える可能性があるとして注目を集めています。

マイクロソフトC「ネット検索の新たな始まり」

マイクロソフト サティア・ナデラCEO(7日のイベント)
「ネット検索の新たな始まりです。急速な技術革新における競争がきょう始まります。今こそ、ネット検索における革新を再び楽しむべき時だ」

また、マイクロソフトが投資し、「ChatGPT」を開発した、アメリカのベンチャー企業、「オープンAI」のサム・アルトマンCEOも登壇し、協業の意義を強調しました。

サム・アルトマンCEO
「われわれは、できるだけ多くの人にAI=人工知能の技術の恩恵を届けたいため、マイクロソフトと協業している。これは新しい時代の始まりだ。研究室ではなく、現実の世界で活用し、さらなる改善を重ねたい」

何ができる?

AIとの対話ソフトを搭載したマイクロソフトの検索エンジンで何ができるのか、会社側が具体例の1つとしてあげたのが、旅行プランの作成です。

既存のインターネット検索では、利用者が検索結果のリンクをひとつひとつクリックして閲覧し、どの情報を使うか選んでいますが、マイクロソフトは、リンクをクリックしてもすぐに閉じてしまうケースが全体の40%に上るとして、多くの場合、欲しい情報にたどり着けていないと指摘しています。

一方、今回の新しい技術を活用した検索の場合は、検索結果の列挙だけでなく、質問に合った回答をピンポイントで作成できるのが利点だとしています。

例えばこのように…

質問

メキシコシティに家族で5日間旅行する計画を立てて。

回答

1日目には、メキシコシティ中心部の歴史地区を散策して、ランチを食べたあと、ベジャス・アルテス宮殿でさまざまな展示やパフォーマンスを楽しむ。
夜は、伝統音楽マリアッチの音楽を聞きながら伝統的なメキシコ料理を食べる。

このように、5日間の具体的なプランを立ててくれます。

さらに、「3日間の日程に変更したい」とか「買い物はどこでできますか」「夜に遊べる場所はありますか」といった追加の質問ができるほか、完成した日程をもとに「旅行に行く人たちにメールを書いて」と入力すると、メールの文面を作成するところまで行ってくれるとしています。

GoogleもAIとの対話ソフトBard

アメリカのIT大手、グーグルは、質問に対し自然な文章で回答を作成できるAIとの対話ソフトの提供を今後、一般向けに始めると発表しました。

グーグルが6日、自社の公式ブログで発表したのは、質問を入力するだけで自然な文章で回答を作成できるAIとの対話ソフト「Bard」です。

「Bard」は日本語で「詩人」を意味し、グーグルによりますと、インターネット上の最新の情報を回答に反映できる点が特徴だということです。

例えば、科学の分野などの新しい知見について、子どもにもわかりやすく説明する際にも役立つとしています。

一般向けの提供は今後、数週間以内に始める予定です。

使い方を初めて公開

グーグルは8日、フランスのパリで開催したイベントの中で、利用者の質問に対してAIが自然な文章で回答を作成する対話ソフト「Bard」の使い方を初めて公開しました。

例えば「天体観測をするのに最適な星座は何ですか?」と質問を入力すると、星座の名前や特徴などを詳しく回答します。

また「1年で最も観測に適している時期はいつ?」といった追加の質問にも回答し、知りたい情報をすぐに得ることができると性能をアピールしていました。

AIとの対話ソフトは、今後のネット検索のあり方を大きく変える可能性が指摘され、これまで検索の分野で圧倒的な優位に立ってきたグーグルがその地位を維持するのか、それともマイクロソフトが次世代のネット検索の中心を担うのか、両社の開発競争が加速しています。

対話式のAI リスクは?

急速に利用が広がっている対話式のAIがサイバー犯罪に悪用されるリスクについて、セキュリティー会社が実験を行って調べたところ、フィッシング詐欺に利用できる文章やコンピューターウイルスを作るためのコードが生成できることがわかり、専門家の間で懸念の声が上がっています。

対話式のAIは、人と話すような自然な会話のほか、小説のような文章やプログラムのコードも生成することができる新しいタイプのものが、去年からことしにかけて相次いで発表され、急速に利用が広がっています。

一方でサイバーセキュリティーの分野では、専門家らがサイバー犯罪に利用されるおそれがあると指摘しています。

そのリスクについて、国内のセキュリティー会社が、去年11月にアメリカのベンチャー企業が発表した対話式のAIソフト「ChatGPT」を使って実験を行いました。

「フィッシング詐欺」について、個人情報を盗み取るフィッシングサイトに誘導するためのメールの文章について尋ねたところ、自然な日本語の文章が作成されたほか、ファイルなどを暗号化して、元に戻すことと引き換えに身代金を要求するサイバー犯罪に使われる「ランサムウェア」と呼ばれるコンピューターウイルスについても、プログラムのコードが作成され、実際に使用してみたところ、ファイルが暗号化され内容を閲覧できなくなりました。

ソフトは、違法行為に関わるおそれのある質問には原則、回答しない仕組みになっていて、直接的な質問では回答が拒否されましたが、セキュリティー会社の担当者が、工夫して質問すると回答が得られ、結果的にウイルスの作成などが可能になりました。

専門家からは懸念の声

こうしたAIをめぐっては、ハッカーなどが情報交換するアンダーグラウンドのフォーラムで、サイバー攻撃への活用法などさまざまな議論や提案が活発に行われているということで、専門家の間から懸念の声が上がっています。

マクニカセキュリティ研究センター 凌翔太主幹
「スキルがない人でも簡単にサイバー犯罪に手を染められるようになる可能性があり心配だ。また、例えばこれまで英語圏だけをターゲットにしていたフィッシング詐欺などの犯罪者が日本語の文章で日本を攻撃の対象するといったことも考えられ、犯罪のハードルが下がっていくことが懸念される」

また、人間とAIの関係などを研究する情報学が専門の国立情報学研究所の佐藤一郎教授は次のように指摘しています。

国立情報学研究所 佐藤一郎教授
「生成系AIを使う人間側に、これは使うべき、使わないべきという判断が求められる。人間がAIをコントロールするという姿勢を忘れてはいけない」

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