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千葉ジェッツ 船橋アリーナの「ホーム」最終シーズン支える地元ブースター

  • 2023年10月19日

10月、今シーズンのBリーグが開幕しました。9月には日本代表が来年のパリオリンピック出場を決め、日本のバスケットボールは盛り上がっています。

その日本代表のキャプテンだった富樫勇樹選手の所属する強豪・千葉ジェッツ。来春、新たなホームアリーナの完成を控えていて、長年使ってきた船橋アリーナはホームアリーナとしては今シーズンが最後になります。

船橋アリーナでの千葉ジェッツの試合といえば、赤いのぼりが名物。こののぼりは、親子2代の熱い地元ブースターがまったくのボランティアで立てているって、知っていました?

(千葉放送局記者・金子ひとみ)

Bリーグ開幕、千葉ジェッツは2勝2敗

来年のオリンピック出場を決めた男子バスケットボール。その代表選手たちも参戦するBリーグが10月に開幕しました。千葉ジェッツは、3シーズンぶりの日本一奪還を狙っています。

千葉ジェッツは、アウェーの開幕戦で、今シーズンB1に昇格したばかりの長崎ヴェルカに2連敗する苦しい立ち上がりでしたが、続くホーム・船橋アリーナでの信州ブレイブウォリアーズ戦には2連勝。東地区3位となっています(10月19日時点)。

ホーム「船アリ」は今シーズンがラスト

船橋アリーナ

千葉ジェッツのホームアリーナは、船橋市の東部、習志野台にある「船橋アリーナ」、通称「船アリ」です。

ホーム初戦の様子(10/14)
金近廉 選手

船橋アリーナは、ファンのみなさんとの距離が本当に近くて、コートの中でプレーしていてもいろんな声が聞こえてきて、頑張ろうと思えるすばらしいアリーナです。

建設中の新アリーナ

「船アリ」がホームとなるのは今シーズンが最後です。来年春に、8キロほど離れたJR南船橋駅前の船橋市浜町に新たなアリーナ「LaLa arena TOKYO-BAY」(仮称)が完成するためです。

船橋アリーナの最寄り駅は東葉高速鉄道・船橋日大前駅ですが…。

駅から東門への道のり(グーグルマップより)

駅から船橋アリーナまでは歩いておよそ10分。住宅街を3回曲がった末にひっそり現れる東門に向かうのは、初めての人にはわかりにくいルートです。

船橋アリーナの東門
観戦に来た人

道順、ちょっと分かりづらいかもしれないですね。

観戦に来た人

船橋アリーナの入り口は気づきにくいですね。

「船アリ」までのルートをわかりやすく

こういった声を受けて、道のりをわかりやすくしたいと立ち上がった地元の人がいます。

2010年に千葉ジェッツが発足した当初から応援し、今もファンクラブのプラチナ会員という肝いりブースター(※)で会社員の勝倉徹さん(52)です。船橋アリーナで試合があるたびに、勝倉さんはルート上に40本ののぼりを取り付けます。

(※)ブースター・・・バスケットボール、特にB1では、ファンのことをブースターと呼びます。

勝倉徹 さん

いつもハラハラドキドキさせてくれて、第1クオーターから第4クオーターまで大差で勝ったためしがなくて、必ず、どこかのクオーターで焦らせてくれるっていうところが千葉ジェッツの魅力でしょうか。

千葉ジェッツから提供されているこののぼり。ホーム初戦前日の10月13日も、妻とともに1時間半かけて、ひもで固定していく作業を行いました。試合後には毎回、取り外し作業も勝倉さん夫妻が行っています。

勝倉徹さん

迷わずアリーナに来てほしいと思っています。「ジェッツ愛」でやっています。仕事の合間に天気予報を見ながらの作業です。

始めたのは、ジャンボくんが大好きだった亡き父

故・勝倉宏さん

のぼりの取り付けは最初、ことし2月に脳こうそくで亡くなった勝倉さんの父・宏さん(享年80)が思いついて、8年前に始めました。

宏さんも千葉ジェッツのブースターでした。チームから誕生日に贈られたマスコットの「ジャンボくん」のぬいぐるみが大のお気に入りで、食事のときも寝るときも、常にいっしょだったということです。

勝倉徹さん

のぼりの取り付けは、最初は父がひとりで黙々とやっていましたが、大変そうだったので、私も仕事が休みの日にちょくちょく手伝うようになりました。作業をしていると、近所の人やブースターのみなさんから話しかけられることが増えました。

船橋アリーナに来る人たちを喜ばせたいと宏さんが遊び心を見せたのが、アリーナ入り口の部分に斜めに取り付けるところでした。

勝倉徹さん

父がたまたま斜めに差してみたら、ちょうどドームみたいに見えたらしくて、それでアーチにして「ウェルカム」ということで、この形になっています。
取り付けが一番難しい部分ですが、父のこだわりだったので、やはり一番気をつけて、見栄えを重視してやっています。

「道案内」だけじゃない 気持ちを「ブースト」する存在に

今では、こののぼりは道案内となっているだけでなく、試合に向かうファンの気持ちを高めるのにも欠かせない存在です。

観戦に来た人

のぼりがあると、あ、船橋アリーナに来たなーっていうのが分かるんで、うれしくなります。このあたりからワクワクしてきます。

観戦に来た人

赤いのぼりを見ると、「応援をしっかりしよう」と気持ちが入ります。「きょうも勝ちますように!」と願いたくなります。

チームからも感謝の声

選手やチームスタッフからも感謝の声があがります。

金近廉 選手

練習場が船橋アリーナに近いのですが、周辺を通った際にはのぼりやポスターをたくさん見て、本当に地域が後押ししてくれて成り立っているんだなと思います。僕たちも地域に還元できればいいなと思っているので、引き続き応援してもらえたらなと思います。

ジョン・ムーニー 選手

のぼりなどを見ると、アットホームな気持ちになりますし、ファンやコミュニティが私たちチームを大切に思ってプレーを見てくれていると思うとうれしいです。アメリカから家族が訪れた際も「かっこいいね」と言っていました。パフォーマンスでしっかりとこたえていきたいと思っています。

田村征也 社長

千葉ジェッツの試合といえば大量ののぼりが立っているというのが1つの名物といいますか、「きょうは試合がある」という目印になっていて、本当にありがたく思っています。

ホーム・船橋アリーナでの最終シーズンに千葉ジェッツが頂点に立つことを願って、勝倉さんはのぼりを掲げ続けます。

勝倉徹 さん

チームからのメッセージはうれしいですが、ブースターのひとりとしてできることをやっているだけなので。ホームアリーナが移転するのは、ちょっとさみしい部分もあるんですけど、初めて船橋アリーナに来る方も何度も来ている方も、盛り上がった100%の力で、体育館の中に入って行っていただければありがたいです。ゴー・ジェッツ!

取材後記

ことし5月19日、Bリーグ「チャンピオンシップ」の準決勝を前に、地元の動きを探して船橋アリーナ周辺を歩いていたら、のぼりの取り付け作業をしていた勝倉夫妻にたまたま会いました。勝倉さんから「やってみますか?」と言われ、私も作業を行ってみましたが、ひもを締めてのぼりを固定するのにかなりの力が必要で、難しかったです。

当初は、「チャンピオンシップ」優勝後のパレードのときに放送で勝倉さんを紹介したいと考えていましたが、惜しくも準優勝だったのでパレードは行われず。今シーズン開幕まで待って改めて取材しました。

なぜボランティアでここまでできるのですか?と聞くと「ゼロから作り上げられたチームが、今は船橋の地域スポーツの核となっている。そんなジェッツが誇らしいし、好きどころではなくて愛があるからですね、ジェッツ愛があるからやってます」とのことでした。

来シーズン、ホームが新たなアリーナに移った後も、船橋アリーナでも試合は行われる予定で、勝倉さんは、その際にはもちろんのぼりを立てたいと話していました。今シーズンこそ、船橋での優勝パレードを見たいですね!

  • 金子ひとみ

    千葉放送局 記者

    金子ひとみ

    球技全般が苦手ですが、見るのは好きです。

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