ページの本文へ

  1. 首都圏ナビ
  2. ちばWEB特集
  3. 小湊鐵道 大雨で一部路線が不通 全線復旧は 赤字で市原市に支援要請も 千葉

小湊鐵道 大雨で一部路線が不通 全線復旧は 赤字で市原市に支援要請も 千葉

  • 2023年09月25日

9月8日の記録的な大雨で、千葉県内では、鉄道路線への被害が相次ぎました。

市原市に本社がある「小湊鐵道」は、線路が崩れた土砂に埋まるなどして、一部の区間で運転できない状況が続いています。

これまで繰り返し自然災害で被災し、赤字を抱えて今春には行政に支援を要請しています。今後の路線はどうなるのか。被災現場にカメラが入り、石川晋平社長にインタビューで聞きました。

(千葉放送局記者・渡辺佑捺)

小湊鐵道は、11月23日から全線での運転再開を決めました。
運転の予定やダイヤなど詳細はこちらの記事で👇

小湊鐵道 被災の現場は

市原市の五井駅から大多喜町の上総中野駅までの約39キロを結ぶ、小湊鐵道。9月8日の記録的な大雨で、大きな被害を受けました。

一時は路線全体の3割以上にあたる約13キロの区間で運転を見合わせていましたが、9月16日からは里見~月崎駅間で運転を再開しました。

ただ、残りの区間の運転再開はまだ先になる見込みで、年内を目指しているということです。

9月23日、小湊鐵道の協力を受け、復旧前の被災現場にNHKのカメラが入りました。

小湊鐵道 鉄道部
友國晃宏 課長

ここはまだ復旧作業が手つかずです。斜面が崩れて流れてきた土砂が、線路を覆ってしまっています。

小湊鐵道 鉄道部
友國晃宏 課長

こういう箇所が、ここだけではなく、ほかにも何か所か、奥にも手前にもあります。土砂の撤去が必要になります。

そして、奥に進んでいくと…。

国の登録有形文化財になっているトンネル「大久保ずい道」の手前。特に大きな被害が発生していました。線路脇の斜面が崩落し、大量の土砂が行く手を阻んでいます。

奥に見えるトンネルが「大久保ずい道」

脇の斜面は、いまもまだ崩落の危険性があります。

小湊鐵道 鉄道部
友國晃宏 課長

こちらの方は、2週間から1か月くらいで撤去できると思います。しかし、まだほかの箇所もたくさん被害を受けているので、土木業者さんを呼んで土砂などを撤去していく形になると思います。

復旧なるか 小湊鐵道

小湊鐵道は、これまでも繰り返し自然災害の被害に遭ってきました。

特に被害が大きかったのは、4年前・2019年10月の大雨です。線路脇の土砂が流出し、復旧工事には3週間がかかりました。

2019年10月の大雨で土砂が流出した現場
復旧工事後の線路

度重なる災害から復活を遂げてきた小湊鐵道。復旧の陣頭指揮を執ってきた、石川晋平社長に話を聞きました。

小湊鐵道 石川晋平 社長

雨が降ると、どうしてもレールが低いところを走っていますので、水や土砂が流れ込んで線路が川のような状態になってしまいます。ここ15年間は、災害で壊れて直して、壊れて直してのいたちごっこが続いている状況です。

自然災害の頻度と大きさが、ともに非常に大きくなっています。以前は10年に1回だったのが、2~3年に1回、非常に大きな災害があり、そのたびに大きな金額をかけながら復旧してきたところです。

2019年度はこうした被災などによって、鉄道事業は6000万円近くの赤字を計上。

さらに、新型コロナの感染拡大による利用者の減少が追い打ちをかけ、翌2020年度の赤字は1億6000万円まで膨らみました。

小湊鐵道の車庫

こうした状況を受け、小湊鐵道はことし4月、地元の市原市に支援を要請。

安全性を確保しながらすべての路線を維持するには、この先、60億円を投資しなくてはならないとした上で、利用者が少ない一部の区間については「廃線も含めた検討が必要」と訴えました。

石川晋平 社長

会社ではタクシー・バス事業も行っていますが、道路や信号機は被害を受けたら行政で直してくれて、安全の下支えも行政でやってもらえます。しかし鉄道では、民間事業者の役割がより大きくなります。

災害があると、いろんな対策が必要になります。鉄道事業者として非常に重要な安全投資の確保ですが、民間事業者としてできる範囲というのは、資金的でもマンパワー的にも、当然限られてきます。

そこで、市に相談させていただいたというのが現状です。今回の災害の被害についても、市に相談しています。

沿線の魅力高める“菜の花”

地域の住民の足、そして観光振興の基盤としての役割を担ってきた、小湊鐵道。

路線の維持に向けて厳しい状況が続く中でも、地域の住民と会社が力を合わせ、沿線の魅力を高めていこうとしています。

9月23日、飯給(いたぶ)駅には、住民と社員あわせて60人の姿がありました。

何やら、ペットボトルを振りながら線路沿いを歩いています。ペットボトルの中には…。

地域のシンボルでもある「菜の花」の種が入っていました。毎年春には、「菜の花」を目当てに、多くの観光客や鉄道ファンが小湊鐵道に乗って地域を訪れます。
 

地域と会社が「菜の花」で沿線の魅力を高める取り組みは、20年近く続いています。

地域住民

小湊鐵道が走ってるか、走ってないかによって、地域住民の捉え方が違ってきます。やっぱり小湊鐵道は大事だなと思っています。

種まきには、石川社長の姿もありました。

石川晋平 社長

春にはまた、いつも通り列車が走って、菜の花と桜の中を走って行く姿をお見せしたいです。

その中で、観光で来られた方、地元の方が楽しい時間を過ごしてもらえたらと思っています。

いすみ鉄道も不通続く

記録的な大雨の影響で、小湊鐵道と「房総横断鉄道」として接続する「いすみ鉄道」も、一部の区間で運転できない状況が続いています。

一時は、上総中野駅から大原駅の全線で運転ができなくなりましたが、13日から大多喜駅と大原駅の区間で運転を再開しました。

9月13日の大多喜駅の様子

しかし、残る大多喜~上総中野駅間は被害が大きく、年内の再開を目指したいとしています。

線路脇の土砂が流出している区間も
(9月10日、NHKのヘリコプターより)

記録的な大雨では、JR東日本の外房線・内房線なども一部区間で運転を見合わせました。

JRの路線はいち早く復旧したものの、地方鉄道のローカル線は全線復旧に向けて難しい状況が続いています。

  • 渡辺佑捺

    千葉放送局記者

    渡辺佑捺

    春には菜の花や桜、秋には紅葉で囲まれる沿線に魅力を感じました。 ローカル鉄道の今後について、引き続き取材していきます。

ページトップに戻る