「家の中でも目が痛くなる」「外に洗濯物が干せない」。
山武市で、市有地の土砂が周辺の地域に飛散し、砂ぼこりによる住民への被害が相次いでいます。
市では、原因究明や再発防止策のため「第三者委員会」が設置され、22日に初会合が開かれました。問題の現状と、市の対応を詳しくお伝えします。
(千葉放送局成田支局・佐々木風人)
住宅街に吹き込む白い砂ぼこり。
千葉県北東部の山武市。九十九里浜に沿って走る県道30号沿いにある「小松」という地域で、去年7月、住民が撮影しました。
風が吹くとクリーム色の砂が飛んできて、目を開けていられなくなり、まさに『砂嵐』のようです。
別の住民も、砂ぼこりの被害を訴えます。
風向きによっては、砂ぼこりが網戸ごしに中に入ってきて、家の中でも目が痛くなります。いまも洗濯物は外に干せませんし、網戸は毎週、掃除が必要です。
早く、砂が飛んでこないように対応してもらいたいです。
白い砂ぼこりの発生源は、山武市が所有している約2万2000平方メートルの敷地です。
この敷地は、10年ほど前に大学から市に無償で譲渡された池や湿地でした。地域で悪臭の原因になっていたため、山武市は2022年3月からおよそ3か月間、埋め立て工事を行いました。
しかし、砂ぼこりの問題を受けて市が調べたところ、問題が発覚しました。現場に搬入された土砂は5万5000立方メートルで、想定の約1.6倍に上っていたのです。
埋め立て後に積み上がった土砂の高さも、予定の1.5メートル程度を大きく超えて、2.5~3メートルほどに達していました。
このあたりは海沿いで、しばしば強い風が吹く地域です。想定以上に積み上げられた土砂が風にあおられ、住宅街に砂ぼこりを巻き起こしていたことが分かりました。
また、搬入された土砂は、基準を上回る強いアルカリ性を示していたことも明らかになり、市は対応を迫られました。
なぜ、想定以上に土砂が搬入され、被害が拡大したのか。
山武市では、今年8月、原因究明や再発防止策を検討するため、「第三者委員会」の設置を定めた条例が制定。
条例に基づいて、弁護士や土木工学などに詳しい専門家をメンバーとした委員会が立ち上がり、9月22日に初会合が開かれました。
山武市の誕生以来、最も困難で複雑な問題だと考えています。
繰り返さないためにどうすればいいのか、一歩踏み込んだ調査や提言をお願いします。
委員会は途中から非公開となりましたが、市の担当者から、問題が起きた経緯などが報告されたということです。
委員長を務める拝師徳彦 弁護士は、会合のあと、次のように述べました。
住民の安全や生活そのものに対する、行政の態度が問われる問題だと認識しています。
幅広く関係者から話を聞いて、事実関係を確認したいと思います。
第三者委員会は、今年度中に報告書をまとめ、山武市に提出したいとしています。
山武市は今年9月から、土砂の飛散を防ぐため飛散防止剤を散布する工事を始めていて、年内には工事を終える予定です。
しかし、住民からは、土砂そのものの撤去を求める声も出ています。
土砂が搬入されてから1年以上も経過しています。市は、飛散防止の工事だけでなく、1日も早く土砂を撤去してほしいです。
「山武市の誕生以来、最も困難で複雑なもの」と市長が表現した今回の問題。今後の経過もお伝えしていきます。