5月14日の「母の日」、みなさんは母親に感謝を伝える予定はありますか?
毎年この時期、市川市の「市川真間駅」は「市川ママ駅」に変わります。
この取り組み、調べてみると、初めは「市川パパ駅」から始まったそうなのです。
(千葉放送局記者 坂本譲)
市川市にある京成電鉄の「市川真間(いちかわまま)駅」。この駅では毎年、母の日にあわせて、母親に感謝の気持ちを伝えるきっかけにしてもらおうと、駅名をカタカナの「ママ」に変更しています。
駅のホームや出入り口、バス停など50か所余りにある駅名の表記が特別に変更されていて、駅の構内にはカーネーションが飾りつけられ、地元の子どもたちが描いた母親の似顔絵も展示されています。
ここで子育てしてもう10年以上になりますが、良い取り組みで本当に心が温かくなっています。
「市川ママ」となっているのを子どもたちが見て、母の日なんだと思い出してくれたらいいですよね。それでお母さんたちに何かしてくれたら、ちょっとだけうれしいです。
また、この期間にあわせて、母親に日ごろの感謝の気持ちが書き込めるメッセージカードが付いた記念乗車券も販売されています。値段は「母(はは)」の語呂にちなんで880円。この切符を使えば、市川ママ駅から成田空港駅まで乗車することができます。
このほか、市川市在住の画家が描いた市川ママ駅の限定イラストも展示され、希望者にはそのイラストカードを配付しています。
母の日の当日は駅構内で市川ママ駅限定のキーホルダーなどのグッズや市川産野菜の販売会が開かれたり、限定のカプセル入りおもちゃ自販機が設置されたりと、1日中イベントが行われるということです。
この取り組みが始まったのは2019年からです。当時、市川真間駅の駅長を務め、この企画の立役者となった京成電鉄の香取利和営業課長に話を聞きました。
市川ママ駅に表記を変えたきっかけは何だったんですか?
駅員と世間話をするなかで、「市川真間(ママ)という名前だから、『市川パパ』という駅名にしたらおもしろいですね」という意見が出てきました。ただパパにすると音や文字が変わり、目や耳の不自由な方にとってはちょっとよくないというのと、不慣れなお客様は「市川真間に来たのにパパ!?」となってしまうので、ちょっとパパは難しいよね、となりました。
そこからどのようにしてママに?
カタカナのママであれば、いけるんじゃないのかと会社に提案したら、おもしろいのでやろうということで始まりました。
今は市川ママですけど、本当はパパから始まったんです。最初は父の日にあわせることを想定していました。
2019年に初めてママに変更した時の反応はいかがでしたか?
すごく反応がありました。当初は入場券で駅構内に入ってもらい、中の看板が変わっている様子を楽しんでいただいていたんですが、ツイッターなどのSNSでどんどん拡散されました。メインの駅名の看板はシールで貼り替えるのではなく全部いちから作り、バス停も含めてすべて名前を変えたので、そのインパクトは大きかったんでしょうね。
母の日1日だけですが、利用者数も通常より1000人くらい増えました。
地域住民のみなさんからはどうですか?
地元の商店街の方々にも出店などでご協力いただき、地域と一緒に駅を盛り上げていくという点でも良い企画だと思っています。
この駅は、急行が止まらなくなった20年ほど前から利用者も減ってしまったので、この取り組みで多くの人が訪れてくれたらいいなと思います。個人的には、商店街や地域の人たちが喜んでくれたらうれしいです。
最後に、現在の市川真間駅の駅長である飯島正宏さんに、駅を利用する皆さんに向けてメッセージをいただきました。
日ごろから家族に感謝を伝えることは難しいかもしれませんが、今回のような企画を通して、家族の間で感謝の気持ちを伝えるきっかけとなったらいいなと思っております。
この取り組みは、5月14日の「母の日」まで行われます。
記事の中で紹介した以外にも、記念乗車券を市川真間駅近くの商店街の店舗で掲示すると特別な優待を受けられたり、近隣のお寺で限定の御朱印がもらえたりと、駅の利用者や地域の人たちが楽しめるイベントがあるとのことです。
「パパ駅」のアイデアから始まった「ママ駅」の取り組み。その経緯がおもしろいと感じると同時に、利用者に対するさまざまな配慮や、地域を盛り上げたいという思いを知ることができ、非常に心温まる取材となりました。
母の日には私も、母親に感謝の気持ちを伝えたいと思います。みなさんも一度、「市川ママ駅」に足を運んでみてはいかがでしょうか。