イチオシ!"岩間瞳キャスターが取材! 市民が支える 光のページェント"

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いよいよ始まった冬の風物詩「SENDAI光のページェント」。
ことしは物価高などによる資金不足で、例年より開催期間が短く、電飾の数も少なくなったことがニュースになりました。
ただ、このイルミネーション。これまでも資金難に見舞われたことはありましたが、中止になったことは一度もないのです。
そこには「明かりを絶やさない」と支え続ける市民の姿がありました。

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37回目を迎えたことし。およそ47万個のLEDが夜空を照らしています。
よく見てみると、飾り方に特徴が…
一般的なものは、幹や枝に電飾を這わせますが、光のページェントでは空中にも。
けやきの葉を表現しているといいます。
これ、一度も変わっていない伝統の飾り方です。
そして、もう1つの伝統。それはボランティアによる運営です。
今回は社会人や学生などおよそ100人が、イベントの企画から会場の案内、清掃まで行います。
運営資金も多くが寄付で賄われています。

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「明かりを支える人たちの思いを知りたい」と会いに行ったこちらの方。
上野隆士さん(74)。最初に光のページェントを開催した初代の実行委員です。
当時、こうしたイベントはほとんどなかったということで、「小さい電球をケヤキにたくさんつけたらきれいだろうな、そのきれいな姿を子どもたちに見せてあげたいと思った」ときっかけを語りました。

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その当時の冬の仙台市内です。
スパイクタイヤによって粉塵が舞い上がっています。
街はもうもうとして暗く、外出する人も少なかったそうです。

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「杜の都の象徴・けやきで街を明るくしたい」。
立ち上がったのは、定禅寺通り近くの商店主や主婦などの有志でした。
資金集めは、当時から街頭募金が中心でした。


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写真のように見えるこちら。イラストレーションなんです。
街の人たちに光輝く定禅寺通りをイメージしてもらおうと、このイラストを描いて掲げ、募金を呼び掛けたそうです。
実際の光のページェントとほとんど変わらないと思いませんか?

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こうして募金を始めてから4か月余り…。
5000万円が集まり、およそ30万個の電球が仙台の街を彩りました。
上野さんは「まずは1本でもいいから、つけてみようと思って始めたが、どんどん輪が広がっていった。きれいだな、やっぱりやってよかったな、という気持ちだった」と話します。

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その25年後、東日本大震災が発生。倉庫で保管していた電球は、すべて津波で流されてしまいました。
それでも、全国のイベント会場から電球を借りるなどして開催にこぎつけました。
(この年の光のページェント、よく見ると電球の色がところどころ違うことが分かります。)
さらに、3年前からは新型コロナの感染が拡大。その前よりLEDの数を18万個減らすなどしましたが、中止されることはありませんでした。

「厳しいときこそ街を明るくして、活気を作っていくというのが、光のページェントいいところ。未来の子どもたちに希望を持って、この明かりを見てもらいたい」と上野さんは話します。

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こうした思いは、今もしっかりと受け継がれています。
この日、上野さんが声をかけたのは、運営の中心になっている学生たちです。

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学生ボランティアのリーダー、三浦向陽さん(21)です。
進学で仙台に住み始めた三浦さんは、「通りすべてが光っていて、これがボランティアの力だけでやっているというのがすごい」と初めて見たページェントに感動。参加を決めたと言います。


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三浦さんは、ことしの春にSNSなどでメンバーを募集。すると県内外の10の大学から学生およそ60人!が集まりました。
会場で行うイベントの企画もみずから考え、半年以上かけて準備してきました。

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学生の1人が出したアイデアがこちら。募金の返礼品として渡す「ひかリング」です。
少しでも募金を増やしたい。
訪れた人、一人ひとりに“街を照らす光”になってもらいたいという願いも込められています。

三浦さんは「皆さんが喜んでくれている顔を見ると誇りに思う。ぜひ多くの人たちに来てもらいたい」と話していました。

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自治体からの補助金だけに頼らず、募金やボランティアでこれだけ大規模なイベントを開催するのは全国的にも珍しいそうです。それだけ仙台の人たちは街を愛しているのだと誇らしくなりました。
厳しいときこそ明るくしたいと欠かさずに灯されてきたあたたかな光。
幼いころから慣れ親しんだ明かりが、さらに輝かしく大切に思えた取材でした。

【取材:岩間 瞳キャスター】

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