「限界集落 住んでみた 秋田 能代市二ツ井町 田代集落編」ディレクターが語ってみた

「限界集落」とは…人口の半分超が65歳以上の集落のこと。
「若者がいなければ学校もない、病院もない…」なんとなく寂しいイメージがありますが、実際はどんな所か知る人は多くないと思います。どんな人がどんな暮らしをしているのでしょう。

秋田編では、2022年5月の1ヶ月間、能代市二ツ井町の田代集落に住んで、実際にどんな生活をしているのか、ありのままを取材しました。取材したのは、東京で生まれ育ち、昨年、秋田に転勤した3年目のディレクター。一人で、知らない土地で取材から生活までできるのか、不安視されていました。(初回放送2022年7月1日 )


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カメラは取材初日の一歩目から回る ~信頼を勝ち得るために~

はじめは、主に車中泊をして、集落に住んで?いました。
この番組は、最初のあいさつからカメラが回り始めます。「“限界集落住んでみた”という番組で、住みながら取材してもいいですか?」と聞くところからです。“限界集落”という言葉は、現地の住民にすれば時に気持ちいいものではありません。さらに住民たちの間には「何もない集落に何を突然、取材したいというのか」「果たして、この人を信頼していいのか」「衰退していくところばかりを取材されるのでは」と不安がつきまといます。

集落には宿泊施設がないので、集落が運営している集会所を拠点に取材できないかとお願いをしていましたが、信頼がなく怪しい者だと思われていたので、当然借りることはできません。

どうすれば信頼を得られるのか。ディレクターは、なかでも協力的な住民の方の土地に車をとめて、車で寝泊まりをしていました。そして日中は集落の人たちにあいさつ回り。はじめはただのあいさつで終わっていましたが、次第に世間話や集落の話、さらには生活の営みを手伝うようになり、住民の方は次第に信頼してくれるようになり、ディレクターも徐々に集落の生活が分かり始めました。

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住めば分かる“何もない”集落の暮らし

集落で話し合ってくれた結果、集会所を拠点に取材できることになりました。これまでは車の中で段ボールの上で寝ていましたが、集会所では柔らかい布団、暖かい部屋、自由に使える水道など、非常に恵まれた生活環境でした。

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集会所を借り始めると、集落での取材活動にもより拍車がかかります。多くのご家庭が裏山を所有して大切にしていたり、冬が終わった春なのに既に次の冬を乗り切るために、食材やストーブ用のまきを準備したり、子どもは集落みんなで育てたりと、集落の特色が次第に分かってきました。住民の方に“何もない”と言われていた集落で、次々と魅力を発見していくのが楽しくて、感動して、かけがえのない取材期間になっていきました。

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感動のラスト!と思いきや、まさかの“ダメだし”…

1か月間の取材生活が終わるころ、「もういっちゃうの?」「また来てよ!」「これからずっと住めばいいさ」とお別れを残念がってくれる声が聞かれました。最初、信頼を得られなかった時と比べると、激変した1か月です。しかしそれと同時に住民の皆さんから「田代さ、冬さ来なければ分からないなぁ(田代集落を知るには、冬に生活しないと意味がない)」と言われました。

そして、田代を離れて時間がたてばたつほど、住民の方から頂いたありがたいお別れのことばよりも、“冬の暮らし”のことがずっと気になるようになったのです。根底には、田代集落のことをもっと知りたいという想いがあり、1か月では十分に知ることができなかった悔しさがありました。

もっと知りたい田代集落。ということで…。

ということで、ディレクターは2022年12月、冬の暮らしを田代集落でありのまま、体感して取材をしています!上司に無理を言って「田代の冬、取材してきます」というと、「いってらっしゃい、しっかり働くんだよ」とひとこともらい、再び、住みながらの取材です。

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ただ冬の田代集落、一言でいうと、動きが活発ではありません…。
家から出る人の多くは町に仕事に行く人か、雪かきをする人です。
連日の大雪と1日中の氷点下のため、何かがない限り、住民が家から出てきません。
雑談をしたくてもできず、家にお邪魔しても、特に目立ったことをしているようには思えません。話しを聞いても「冬は特にやることないなぁ」と言われるばかりです…。

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春は畑や田んぼ作業、山作業、食べ物をこしらえたり、ストーブ用のまきを割ったりと多岐にわたっていたので、「動きがなくて、困ったなぁ、、、。雪や寒さは、人の生活をここまで変えるのか」と驚きながら生活しています。(地元・東京での生活は、田代集落ほど、四季を感じながら生活をしていなかったです)

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執筆時も集落に住んでいるので、これからどのような冬の暮らしを行っているのか、見つけていきたいと思います。なおこの取材の模様は、秋田県で放送されるニュースこまち内で12月に田代集落から中継で放送し、2023年1月に冬に取材したものをまとめて放送する予定です。

最後に冬の生活が終わったとしても、これから何かしらの形で、関わり続けたいなと思っております。それがどのような形でお見せできるのか、具体的なアイディアはありませんが、これまで発見していった魅力を元に、その魅力をさらに膨らませるのか、あるいはまだ発見できていない魅力を発見していくのか、継続的に集落に寄り添っていきたいです。

【冬の田代集落】
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【春の田代集落】
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