災害復興に太陽光 課題山積の丸森町をどうするのか? リーダーの答えを聞く

宮城県南部の丸森町。
3年前の台風19号で、土砂崩れや堤防の決壊が相次いで甚大な被害を受け、いまも復興の途上です。一方、町内の山林では、再生可能エネルギーの活用に向けて、事業者が大規模な太陽光発電施設の建設を計画していますが、住民の反対が強まっています。

町のリーダーを選ぶ選挙は、12月、3回連続で無投票となり、現職の保科郷雄さんが4期目を務めることになりました。
ベテラン町長は、課題山積の町をどう率いようとしているのでしょうか。

(仙台放送局記者 北見晃太郎)


【台風からの復興と防災対策】

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保科さんは丸森町出身の72歳。
町議会議員を経て2010年の町長選挙で初当選しました。
12月の町長選挙は、3回連続の無投票となり、保科さんが4期目を務めることになりました。

最優先で取り組むと主張したのは台風19号の被害からの復興です。

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3年前、台風19号による記録的な大雨は、丸森町で土砂崩れや堤防の決壊を相次いで引き起こし、町は、11人が死亡するなど甚大な被害を受けました。

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住宅への被害もおよそ1000世帯にのぼり、3年たった11月末現在でも、180人以上が仮設住宅に住むことを余儀なくされています。
保科さんは、より安定した暮らしができるよう災害公営住宅の建設を急ぐと強調しました。

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「今も仮設住宅に住む方々は不自由な生活をされているということになりますから、なんとか元の生活に戻れるよう早く災害公営住宅を完成させ、令和5年の秋までには大体入居できるかなと思っています」

さらに、次の災害への備えも進めるとしています。
特に意欲を示しているのが、国などが整備を進めている「河川防災ステーション」の活用です。


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およそ4万平方メートルの土地を、9メートルほどかさ上げするこのプロジェクト。
決壊した堤防の復旧に使う、土のうなどをつくるスペースや、ヘリポートなども建設が計画されています。

また、「水防ステーション」と呼ばれる建物には、災害時の住民の緊急避難場所が設けられます。さらに、台風19号の際、町役場の周辺が浸水して庁舎が孤立したことを教訓に、役場の代替となる、防災活動の司令室も確保される予定です。
保科さんは、災害の教訓を忘れないよう、こうした施設をふだんから活用して、防災教育などを行いたいと話しました。

「災害が起きた際に緊急で活用するというような場所になるわけですが、平常時の方が多いわけですから今回の災害を忘れないようにいろんな資料を展示したりして防災教育にも役立てようと計画を進めています」


【対立で揺らぐ太陽光発電事業】

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防災とならんで保科さんの手腕が問われるのが、太陽光発電施設の建設計画への対応です。
丸森町の耕野地区では、東京の事業者が54ヘクタールあまりの山林に、およそ6万枚のパネルを設置する大規模な太陽光発電事業を計画しています。

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一方、予定地の周辺では250世帯あまりの住民が井戸水を利用していて、パネルを設置することで井戸水が枯渇するのではないかといった意見が出ています。
また、パネルの設置により、山林の保水力が衰え、土砂災害の発生する危険が高まるのではないかという指摘も上がっています。保科さんは、ソーラーパネルの建設によって災害が起きないことが前提だと主張しています。

「災害が起きない形の中での再生可能エネルギーであれば、私は問題ないと思っています。一方で、樹木がなくなるということで一気に水が流れることなりますし、水道の普及率が県内で一番低く、井戸水に頼っている方々もかなりいますから、井戸水の枯渇の心配もあります」

その上で、企業と住民の対立は解消されるべきだと強調しました。

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「企業と住民両方がOKという形にならないとこれは問題がある。
丸森の場合は、このコンセンサスが取れておらず、不信感があるということで、今は大変厳しい状況にあるんだろうと思います。町の役割は、課題があることについては、しっかりと話をしなさいということだ」


【解決力問われる4年間に】

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少子高齢化や人口減少といった地方共通の課題に加え、台風からの復興や、太陽光発電事業による企業と住民の合意形成も求められている丸森町。
新たな4年間を迎える保科さんは、これまでの3期12年の経験を生かし、1つひとつの課題をどう解決していくのかが問われることになります。



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仙台放送局記者 北見晃太郎
2019年入局。現在は警察担当。
3年前の台風19号では発災直後から丸森町の現場を取材。